“新”にして”進”、さらには”深”や”真”。地上最速の翼を持つ猛禽が究極形態と化し、いま舞い降りる…。日欧での生産終了から2年、世界中のライダーが注目する中、第3世代「隼(ハヤブサ)」が満を持して発売された。
すべてを試し、あえて変えない英断から次の伝説が生まれた
熱量。むせ返るほどの凄まじい意地と執念と自信が、13年ぶりに全面刷新したこの1台に渦巻いている。開発者が次々と登場する動画を見ればわかる。彼らは、自らの苦労と成し遂げた成果を誇らしげに語るのだ…。
隼の魅力は数多い。俊敏なコーナリング性能と300km/hに迫る超高速域でのスタビリティの両立、豪快極まりないパワーフィール、唯一無二の有機的フォルムetc…。語るべき点が多い、破格の1台だ。
どこを磨き、据え置くか。取捨選択の困難さは想像を絶するが、スズキは実に勇気ある決断を下した。コンセプトは”アルティメットスポーツ”を継続。スタイルに関しては、”隼らしさ”を保ちつつ洗練し、さらなる空力性能の向上も果たした。万人がその進化をわかりやすく享受できる。
問題は中身だ。10年にわたり、ターボ/6気筒/大排気量化とあらゆるエンジンを隼に試した。フレームや各部も変更し、呆れるほどテストを繰り返した。時には社長自ら…。その結果導き出したのは、”先代の1340cc直4&車体という基本は変えない”こと。
すべてを試し、あえて”変えない”。前代未聞の大胆さだが、スズキは隼の本質を賢明に見抜いた。その上で、心臓部は全部品の見直しと電子制御でリファインし、最新の排ガス規制にも対応している。名作/傑作の改良に付きまとうジレンマに対し、新たな指標を第3世代の隼は提示したのだ。
その慧眼は最高出力にも表れている。従来型から7psダウンの190ps(輸出仕様)――。しかし、これは低中速域のトルクを増強した結果であり、実質的な速さは初代/2代目を凌駕する。さらにエンジンで重視したのは”耐久性”。先代と同様に見える部品も加工法を変え、ボルトの締め方まで検討した。
虚飾を廃し、実直に真面目に、ユーザー第一主義のマシンをつくり上げる。マーケティング的には”完全新設計”や威勢よく”200ps超!”などの惹句が踊った方が成功するのでは? と邪推してしまうが、勇気をもってスズキらしさ、隼らしさを貫いた。
日欧では2年前に販売終了したまま、ライダーはひたすら登場を待たされた格好だが、隼に懸ける開発陣の圧倒的な熱量を見れば、それも許せてしまう。骨の髄までスズキのスピリッツが結晶化したシン・ハヤブサ。その詳細を次ページから紐解いてゆく。
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