●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●取材協力:クオリティーワークス
今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのか。その1台を詳しく知り尽くした専門家に指南を請うた。今回取り上げたのは、2ストレプリカブーム中興の祖となった名車・ヤマハRZ250/350。本記事ではRZに詳しいクオリティーワークス・山下伸氏のインタビューをお届けする。
4ストと比較するといろいろな手間がかかる? 同時代に生まれた4ストと比較すると、耐久性が低く、いろいろな面で手間がかかる…ような気がする2ストの旧車。その印象をクオリティーワークス・山下氏に伝えてみた[…]
ピーキーな250と日常域で扱いやすい350
’99年の創業以来、4ストローク車の扱いも少なくないものの、RZ/RZ-Rシリーズを筆頭とする2ストロークロードスポーツ&レーサーレプリカを主軸に据えてきたクオリティーワークス。同店代表の山下氏は、昨今のRZの中古車事情をどう感じているのだろう。
「ここ最近で価格が急上昇したとは思いますが、僕の視点だとそれ以外の状況はあまり変わらないですね。少し前までは価格が安い車両ならではの扱いの悪さ、最近は経年変化、という事情の違いはありますが、初入庫した中古の程度が悪いのは、昔も今も同じです。いずれにしても、RZの魅力をきっちり堪能したいなら、一度は全面的な整備を行ったほうがいい。逆にいったん全面的な整備を行えば、以後の手間はそんなにかかりませんから」
山下氏はそう語るが、車両だけではなくメインフレームやエンジン単体の価格も急上昇していることを考えると、今後は状況が徐々に変わってくるのではないだろうか。
「確かにそうですね。ウチが手がけるRZの中古車は、ストックパーツやアフターパーツの使用を前提にしてゼロから組み上げることが多くて、これまではエンジンオーバーホールやフレーム修正などを含め、完全整備済みで150万円前後で販売していましたが、今後はその価格で極上車を作るのは難しくなるでしょう。いずれにしても価格について安易なことは言えないので、その都度相談ということになります」

【クオリティーワークス:山下伸氏】2ストレプリカ全盛期にバイクに目覚めた山下氏は’70年生まれの50歳。初の所有車はRZ50。自身のショップを始めて20年以上が経過した現在、’60~’90年代まで新旧2スト事情に精通している。数年前まではRG500Γ、近年はTR3でレースにも参戦中。
ちなみに、これまでの同店が製作した極上中古車は、250ベースのボアアップを含めて350が多いそうだ。
「ピーキーな特性の250を好む人もいますが、市街地での扱いやすさやグループツーリングなどでの順応性を考えると、排気量が大きくて低速トルクが太い350の方が使い勝手がいいのは事実です。排気バルブのYPVSを装備するRZ-Rなら、250でもマイナス要素は感じないですけどね」
冒頭で述べたように、RZの世界ではノーマル指向のユーザーは少数派。事実、同店に入庫するRZのほとんどにも何らかのカスタムが行われている。
「誤解がないように言っておきますが、ノーマルはノーマルで楽しいですよ。僕自身もたまにノーマルを試乗すると、よく出来ているなあ…と感心しますから。とはいえカスタムで自分好みの仕様を作れば、RZはもっと楽しくなる(笑) ウチで定番のカスタムパーツは、チャンバー/キャブレター/フロントブレーキ/リヤショック/点火系などで、足まわりを後年式のヤマハ車用に全面刷新するケースも少なくありません。なおチャンバーについては、純正もアフターマーケット製も、250と350用では構造が異なるので、混同しないように注意が必要です」
当企画を読んでRZの購入を考えたライダーがいるとすれば、山下氏はどんなアドバイスをするのだろう。
「なるべく早めに行動を起こしてください、ですかね。価格が急上昇したことを考えると、なかなか踏ん切りをつけにくいと思いますが、おそらくRZの中古車相場は今後も下がらないでしょう。また、現時点なら補修パーツもカスタムパーツも潤沢に揃いますが、そういう状況がいつまで続くかはわかりません。もちろんウチとしては、RZが長く楽しめる環境を整えていくつもりですが、購入時のハードルは今後は着実に高くなっていきそうです」
【細部にまでこだわったフルカスタムRZ】クオリティーワークスが製作中のフルカスタムRZ。エンジンはRZ-R用で、フレームには6ヶ所の補強を追加。外装とケースカバーにはカーボンコーティングが施される。チタンコート仕様のφ41mmフォーク、アルミスイングアーム、3.00×17/4.00×18のホイールはTZR250(3MA)からの流用だ。前後ブレーキキャリパーはブレンボレーシングを選択。
おすすめモデル:後継車も視野に入れるべき
初期型RZに的を絞っているのではなく、単純に往年の2ストローク車に乗ってみたい…というお客さんが来店した場合、クオリティーワークスでは後継のRZ-RやR1-Zをオススメすることがあるそうだ。以下は山下さんの見解。
「一番の理由は価格です。この2機種ならまだ2ケタ万円で好調な車両が探せますからね。それに加えて、YPVSのおかげでエンジンが扱いやすいこと、足まわりが初期型RZより現代的になっていることもRZ-R/R1-Zの魅力でしょう。カスタムに関してもこの2機種はかなり楽しめますよ。特にRZ-Rは、パワーユニットが4輪バギーに転用されて、その4輪バギーが10年ほど前まで生産されていたので、現在でも多種多様なチューニングパーツが購入できます」
【’83 RZ250R/350R】’83年に登場したRZ250R(写真)/350Rは、初代RZの思想を引き継ぐ形で生まれた全面新設計車。排気デバイスのYPVSを導入したエンジンは43ps(’84年以降は45ps)/55psを発揮。
【’90〜 R1-Z】’90~’99年に販売されたR1-Zは、伝統のヤマハ製2ストパラツインの最後を飾ったモデル。クランクケースリードバルブ吸気のエンジンはTZR250:1KTがベースで、ダイヤモンドタイプのスチールフレームはトラス構造。
メンテナンスコスト
クオリティーワークスによるRZの点検整備費用は、概算で以下の通り(価格は部品代込み、税別)。
- エンジン腰上点検整備:5~10万円
- エンジンフルオーバーホール:15~30万円
- キャブレターオーバーホール:2~3万円
- 車体全ベアリング&点検整備:3~5万円
エンジンについてはかなり安い気がするものの、「2ストパラツインは構造がシンプルですからね。しかも初代RZは排気バルブが存在しないので、腰上の分解なら30分もかかりません」と山下氏。そのあたりを考えると、長い目で見た際の維持費は4ストと大差ないのかもしれない。
クオリティーワークスの店内は、”2ストのリビングミュージアム”と言いたくなる雰囲気で、在庫車や預かり車を含めると、取材当日の2ストの台数は40台以上! RZ/RZ-Rシリーズの次に数が多いのは、スクエア4のRG-Γ。
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