カワサキは欧州と北米で新型の「ニンジャZX-10R」および「ニンジャZX-10RR」を正式発表。スーパーバイク世界選手権のヘレステストで先行デビューしていたレーサー版ニンジャZX-10RRで見せていた新しい顔と、大きく進化した電子制御を装備しての登場だ!
ついにリバーマーク獲得! カワサキの威信をかけたモデルチェンジだ
カワサキは、先行登場させていたレーサー版のNinja ZX-10RRに続いて市販車バージョンの「ニンジャZX-10R」および「ニンジャZX-10RR」を欧州と北米で正式発表した。エンジンはユーロ5に適合させるとともにパワー特性を向上し、さらに冷却系なども含めてトータルで性能を追求。車体はスイングアームピボット位置を変更したほかホイールベースを10mm延長するなどして、さらに軽快かつ“勝負できる”ハンドリングを実現している。
また、電子制御関連ではプリセット×3およびマニュアル×4のライディングモードを新設し、さらにクルーズコントロールまでも装備する。さらに、Bluetoothによるスマートフォン接続を可能とし、「ライディオロジー・アプリ」によってGPSによる走行ログや電話通知、各種セッティングなどを可能とした。
レースのホモロゲーションモデルとしての役割を担うニンジャZX-10RRは、世界500台限定とされたシングルシートモデルで、専用のカムシャフトやチタンコンロッドの採用により高回転のレブリミットを14300rpm→14700rpmとし、パワーバンド自体も500rpm高めている。
日本仕様の導入時期は2021年春頃と発表された。価格等も含め、続報を待ちたい。
KAWASAKI Ninja ZX-10R / ZX-10RR[2021 model]スタイリング&スペック
【KAWASAKI Ninja ZX-10R / ZX-10RR[2021 model]】主要諸元■全長2085 全幅750 全高1185 軸距1450 シート高835(各mm) 車重207kg■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 998cc 203ps/13200rpm・ラムエア加圧時213ps/13200rpm[204ps/14000rpm・ラムエア加圧時214ps/14000rpm] 11.7kg-m/11400rpm[11.4kg-m/11700rpm] 変速機6段 燃料タンク容量17L■キャスター25°/トレール105mm ブレーキF=φ330mmダブルディスク+4ポットキャリパー R=φ220mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ※諸元は欧州仕様 ※[ ]内は10RR ●価格:未発表 ●国内導入時期:2021年春頃
パワーバンドを400rpm高回転に振った10RRと、性能を底上げされた10R
パッと見は顔が変わっただけのモデルチェンジに思える新型ニンジャZX-10R/RRだが、その内容をつぶさに見ればエンジンからシャーシ、エアロダイナミクス、電子制御まわりまで全てがパワーアップしていることがわかる。
まずエンジンは、最高出力こそ従来の10R=203ps/10RR=204psで変わりはない(ラムエア加圧時は従来比1psアップ)ものの、新たな空冷式オイルクーラーを採用して冷却性能を向上。アクセルポジションセンサー内蔵のグリップによって電子制御スロットルを駆動し、新型エキゾーストと新たなギヤレシオで最適化を図った。
レースベース車としての性能を向上しているのは10RRだ。吸排気のバルブスプリングはデザインし直され、エアボックス内のエアファンネル長は従来の【10-30-30-10mm】から【5-5-5-5mm】へと大胆にカット。これにRRスペックの専用カムシャフト、各ピストンはピストンリングをSTDモデルからマイナス1本とし、ピストン高は33.7mmに短縮するとともに各20gの軽量化を達成。ピストンピンはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)でコーティングされている。これにより、レブリミットは従来の14300rpmから14700rpmへと高められ、高回転域の扱いやすさを増したという。
また、10R/10RRともマフラーは集合方式を【1-4、2-3】→【1-2、3-4】へと変更した新型とし、キャタライザー搭載位置を変更。エンジン下の膨張室を縮小するとともにチタン製サイレンサーは126mm長くなった。トランスミッションは1~3速ギヤをショート可し、リヤスプロケットを39T→41Tへ。発進やコーナーからの脱出加速を強化した。
DLCコーティング済みのフィンガーフォロワーロッカーアームや吸気側=φ31mm/排気側=φ25.5mmのバルブ径、マシニング加工されるインテークポート、レースキットのハイカムを組み込み可能な加工済みシリンダーヘッドなどは従来から引き継いでいる。
ジオメトリーの最適化など細かくチューニングされた車体
フレームとスイングアームは従来型をベースとしているが、スイングアームピボット位置を1mm下げてリヤサスペンションの作動性を向上。ピボット位置はリバーシブルのオフセットカラーによって±1mmの調整が可能だ。スイングアーム自体は8mm伸長され、これにフォークオフセットを+2mmとすることで、ホイールベースは1440mm→1450mmへと10mm長くなった。ステアリングステムのポジションについては、レースキットパーツのオフセットカラーによって±4mmの調整が可能になるという。
こうした新たなジオメトリーの採用により、前後荷重バランスは0.2%フロント寄りとなって、ターンインのパフォーマンスを向上した。
前後サスペンションは、カワサキのスーパーバイク世界選手権ファクトリーマシンからのフィードバックを反映したSHOWA製BFF(バランスフリーフロントフォーク)と、ホリゾンタルバックリンク式でマウントされるSHOWA製BFRC(バランスフリーリヤクッション)を引き続き採用。フロントはフォーククランプの幅を広げて剛性バランスを向上したほか、スプリングレートは21.5N/mm→21.0N/mmへとソフト寄りに。リヤのスプリングレートは91N/mm→95N/mmと逆に高められている。また、10RRはシングルシートかつパワーアップされたエンジンを採用していることなどから、サスペンションセッティングも専用とされる。
ブレーキシステムはラジアルマウントのブレンボ製M50モノブロックキャリパーにφ330mmのダブルディスクを組み合わせ、10RRはステンメッシュホースを採用。リヤブレーキのリザーバータンクは搭載位置を変更された。さらに、Ninja ZX-10RRはマルケジーニ製アルミ鍛造ホイールにピレリ製ディアブロスーパーコルサSPを履く。STDの10Rは軽量キャストホイールにブリヂストン製RS10の組み合わせだ。
空力性能を向上したボディワークに、誇らしげなリバーマーク
カウリングのデザインは完全に変更され、どこかニンジャH2の影響も思わせるようなイカツイ表情になった。とはいえ、これは見かけだけではなく、リバーススラントデザインにLEDヘッドライト脇のインテークにはウイングレットを内蔵し、空気抵抗を7%軽減するとともにダウンフォースは17%向上。40mm高められたスクリーンにより、マシンとライダーのトータルでの空力とウインドプロテクション性能を向上した。
ラムエアインテークは重点効率が増しているようで、静止時のスペックは従来と同じ最高出力だが、ラムエア加圧時には10R/10RRで各1psパワーアップしてしている。
ヘッドライトは三菱製のLEDユニットを採用し、ハロゲンバルブだった従来型の1650gから1200gへと軽量化を達成した。ライディングポジション関連では、ハンドルバー位置を10mm前方に移動するとともに開き角もよりストレートに。また、シート位置と高めるとともにステップ位置も5mm高められている。
スクリーン内とトップブリッジには、今までニンジャH2系にしか採用されていなかったカワサキの“リバーマーク”を新設。カワサキの威信をかけたモデルチェンジであることを主張する。
最新の電子制御はライディングモードと“スポーツ”トラクションコントロールなど
“予測型”トラコンとして知られるスポーツKTRC(スポーツ・カワサキトラクションコントロール)は、モード4と5をアップデートして、よりライダーフレンドリーに。KLCM(カワサキローンチコントロールモード)やKIBS(カワサキインテリジェントアンチロックブレーキシステム)、エンジンブレーキコントロール、パワーモードなどは従来型を継承した。KQS(カワサキクイックシフター)とオーリンズ製電子制御ステアリングダンパーも同様だ。
新たに採用されたのは各種電子制御を統合制御するライディングモードと、スロットル操作不要で一定速度を保つクルーズコントロールだ。ライディングモードは「スポーツ、ロード、レイン」のプリセット×3モードに加え、マニュアルセットの「ライダー」を4つ記憶させることができる。クルーズコントロールは左手元のボタンで設定することができ、クラッチやブレーキ操作、スロットルをゼロポジションから前に回す操作をすると解除できる。これらのセッティングは新たにダークモードが設定された4.3インチTFTメーター上で行う。
新設定されたスマートフォンとのコネクティビティ機能は、Bluetoothによる接続で車両情報、GPSによるライディングログ、電話通知、各種セッティング、ライディングマネジメントの設定などができる。
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