絶版車だろうが現行車であろうが、走行中のバイクのフレームは上下左右や前後に捻れたり変形している。昭和時代の絶版車ならヨレを軽減するためにプレートやガセットを溶接するのが定番。しかし溶接によってリジッド補強を行うと、補強部とは異なる部分が別のヨレの原因になることもある。
フレームのヨレを不快に感じる原因は、金属の弾性変形が早い周期で繰り返し発生するため。打楽器のトライアングルを金属の棒で叩くと振動が空気中に伝達されて音が発生する。これがフレームがたわむ状態だ。ここでトライアングルを指で挟むと、振動が減衰して鳴り止む。
いたちごっこになりかねないヨレや振動問題を新たな観点で捉えているのが、ワイズギアの「パフォーマンスダンパー」だ。トライアングルに添える指のようにダンパーをフレームに設置し、走行中の振動を減衰させる。ポイントとなるのは変形自体を封じ込めるリジッド状態ではなく、発生した変形を吸収させるということ。
【ワイズギア パフォーマンスダンパー MT-07用】ダンパー本体は高圧窒素ガス封入タイプで、1mm以下の微少なストロークで減衰力を発生させる特性が作り込まれている。ダンパー前後のブラケットは機種ごとの専用設計品で、フレーム無加工で装着できる。●価格:3万円(税抜)
ヤマハ発動機の子会社であるワイズギアの製品であるパフォーマンスダンパーは、現行車を中心に機種ごとの専用品として販売されている。’20年モデルのMT-07に装着したところ、走行中に発生する振動の伝わり方が変わり、端的に言えば締まりのある高級感のある走行フィーリングになった。
ダンパーをフレームに固定するブラケットの形状は車種ごとに異なるため、現状ではワイズギアが設定した機種専用品となる。だが今後、汎用ブラケットが充実することで、新しいフレームチューニング手法となる可能性も期待できるパーツだ。
MT-07をはじめSR400、セロー250やテネレ700、YZF-R25/3、MT-09、トレーサー900、TMAXなど全10モデル用のラインナップが用意されている。
MT-07はエンジン本体を強度メンバーとして利用するダイヤモンドフレームを採用しており、ダンパー前側のブラケットはエンジンハンガーと共締めする。
後部ブラケットはスイングアームピボット部のフレームカバーボルトを共用して固定する。フレーム振動の抑制が目的なので、太いボルトでガッチリ固定するわけではない。
フレーム無加工(トリッカーとTMAXはカウル一部を加工)で装着できるのは純正ならでは。フレーム形状がまちまちなので汎用化は難しいが、効果を体感すると「汎用バージョン」も期待したい。
微少なフレーム変形でもダンパーを作動させるため、ブラケットとダンパーはしっかり固定する。ボルトの締め付けトルクは前後とも64Nm。装着後のパフォーマンスダンパーは、車体のアクセントにもなる。
●文/写真:栗田晃 ●取材協力:ワイズギア ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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