我々サンデーメカニックの多くがリピーターとなってクチコミが広がり、数多くのユーザーがその走りに納得している「スーパーゾイル」。お気に入りのブランドオイルに添加できるのはもちろん、スーパーゾイル配合済みのエンジンオイルを使うのもひとつの選択である。ここでは、久しぶりに走らせる2サイクルスプリンターを題材に、2サイクルモデル全般に相通じる「お約束メンテナンス」を実践する。
モトメンテナンス(MM)誌から『モトメカニック』へと生まれ変わって2号目となる2020年春号発売! 旧MM時代にも大人気企画だった「個人ガレージ」の巻頭特集や、メンテナンスに不可欠な工具にフォーカスし[…]
世界的な旧車ブームが継続中
もはや一過性といった言葉では片付けることができない、世界的な旧車ブーム。この流れは日本国内のみならず、バイク先進国であるヨーロッパ市場(イギリス、ドイツ、イタリア、フランス、スペインなど)や、北米市場でも同様の傾向と言えるだろう。
国内の二輪車登録台数を見ても、新車の販売以上に中古車市場が堅調との声が大きい。あのバイクブームと呼ばれた’80年代当時以上に、現在のバイクシーンの方が、大型モデルの登録台数が多いといった現実もある。
旧車に人気が集中する最大の理由は、ニューモデル開発の眼が、現在盛況な市場に向けられているからに他ならない。例えば、北米でもヨーロッパでもなく、当然ながら日本国内市場でもない。
今、もっとも盛んなバイク市場=東南アジアなのだ。若者人口が多いことも手伝いケタ違いのセールスを記録するのだから、日本市場がおざなりになって当然と言えば当然。それは仕方のないことだ。
しかし、日本国内には’80年代のバイクブームを知るライダーが多い。また、ブームの時すでにベテランと呼ばれたライダーが、今なおバイクライフを楽しんでいる現実もある。ライダーは若い!! それだけに、懐かしい「旧車こそ我が人生!!」なんて考えるライダーが、実はかなり多いようだ。
2サイクル車の好調を維持するには
旧車の中でも、現在のバイクとはまったく違うモデルに「2サイクルカテゴリー」がある。2サイクル車が圧倒的主流で、4サイクル車は少数派という時代も昔はあった。しかし、スーパーカブの登場とその普及によって、その流れが大きく変った。
それでも90年代初頭まで、2サイクルモデルは開発され続けてきた歴史もある。あの頃までのバイクメーカーには、特徴や主張があった。そんなメーカー独自の”個性”を愛し、今なお当時のモデルに憧れているファンが多い。
月日が経過しただけで、一般的には”旧車”扱いでも、自分にとっては現役モデルだと考えるベテランライダーも数多い。
そんな旧車なら、なおさら重要なのがメンテナンスだろう。特に2サイクルモデルは、その性格やエンジン特性からメンテナンスが必要不可欠なケースが多い。絶好調だったエンジンが、突如不調になることも珍しくなく、そんな状況で無理に回してしまい、ダキツキや焼き付きを起こしてしまった…、なんて話も珍しくない。
また、エアークリーナーを掃除したときにキャブの取り付けを緩め、そのトルク管理を間違えたことで二次空気を吸い込み、ピストントップに穴を開けてしまった…、などといった例も決して珍しくはないのだ。
2サイクルエンジンに限らず、好調だったエンジンが突然不調になるときには、必ず何らかの物理的原因があるもの。そんなことにならないためにも、メンテナンスが必要不可欠であり、絶好調を再現できるスキルも重要になるのだ。
ここで作業するスズキRG250ガンマは、自賠責保険が切れてから乗らなくなり、しばらくガレージで冬眠していた車両だ。久しぶりに走らせたい、とマシンオーナーから聞いたので、それならお約束の”メンテナンスコース”を実践してみよう、ということになった。

20世紀当時はワインディングに数多く生息していた2サイクルスプリンターだが、もはや絶滅危惧種に近い。だからこそしっかりメンテナンスして、末永く付き合いたいと考えるマシンオーナーが増えている。トライモデルはバラツインエンジンのスズキRGガンマ250ウォルター・ウルフ。 [写真タップで拡大]
今回はタンク内のガソリンが腐っていなかったので、想像以上にエンジン始動は楽だった。それでも、始動前には金属摺動部分へしっかり注油を行っている。2サイクルエンジンの再始動時に最低限実施したいのが、スパークプラグを外して「プラグ穴から2サイクルオイルを適量差す」作業だろう。
しばらく乗らなかったことで、シリンダーやピストンリング周辺のオイルがクランクケース内に落下し、カラカラの乾燥状態になっていることが多いのだ。そんな状況のままキック始動したら、と考えてみてほしい。この潤滑促進を行うことによって、エンジンコンディションにダメージを与えなくて済むのだ。
今回は、エンジン始動前に2サイクル用シンセティックゾイルをプラグ穴からスポイトで適量差し入れ、さらにギヤオイルは始動前に4サイクル用シンセティックゾイルに交換した。走行可能な状態であれば、エンジン暖機後にギヤオイルを交換した方が、効率良く汚れたギヤオイルを抜き取ることができる。
ちなみに2サイクルエンジンの場合は、単純な空吹かし暖機では、ギヤオイルはほぼ温まらないことを知っておこう。金属同士が擦れ合うときに発生する摩擦熱に反応し、金属表面改質再生効果を発揮するのがスーパーゾイルの大きな特徴である。
焼けただれ気味の金属表面に金属化合物を蓄積し、金属表面を滑らかにする、いわば”トリートメント効果”を発揮するのも、スーパーゾイルの大きな特徴でもある。この効果に助けられたライダーも数多いはずだ。
今回は、ドライブチェーンにスーパーゾイル・チェーンルーブを吹き付けた。汚れが酷いときにはチェーンクリーナー&ブラシで汚れ落としを行うのが先決だが、今回は、完全なる乾燥状態になっていたので、チェーンルーブをしっかり吹き付けてから余分なグリスをウエスで拭き取った。この拭き取りの際には、指先をケガしないように、エンジンは停止状態かつ”一人で作業する”のが基本中の基本である。
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