日本車の絶頂期だった’80年代の名車たちに“高騰”の波が押し寄せている。超プレミアマシンと化した’70年代車のような状況ではまだないものの、現実的な価格で入手できる時間的猶予はそう長くないだろう。本記事では、レーサーレプリカのカウルを剥がすことで後のネイキッドとの祖となった、2ストロークマシンの状況をレポートする。
※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。
一代限りの軽量ビンビンスポーツネイキッド
レーサーレプリカのカウルを剥がすことで、隠されていたエンジン+チャンバー、フレームが現れ、むき出しの機能美を見せつける。まさに「ネイキッド」の元祖となった2ストマシン群は、いまではあり得ない個性のカタマリだ。カウルレスによって車体は一段と軽量化を促進。加えてアップハンドルを与え、公道での振り回しやすさはレプリカより一枚も二枚も上回る。
そんなマニアックな連中において、とりわけトガッているのがヤマハの「SDR」。ケースリードバルブの195cc専用シングルを、デルタボックスの形状をパイプで再現したような美麗スチールトラスフレームに搭載する。最高出力は34psとやや控えめながら、当時の’87 TZR250(1KT)より21kgも軽い乾燥重量105kgをマーク。開発中の参考データによると、TZR250を上回る加速性能を見せたという。
SDRは一代限りの短命に終わったが、恐らく二度とこれほどストイックな刺激は味わえない。何かを感じた人にぜひ乗り継いでもらいたい。
ヤマハ SDR:105kgの超軽量マシン
シンプルな外観ながら、走りを追求したツウ好みのFUNスポーツ。心臓はTZR125の水冷単気筒をベースに、内径66×行程57mmに拡大して195cc化。これを耐腐食性と質感が高いTCメッキを施したトラス構造のフレーム&リヤアームに積む。軽さは圧倒的で、常用域の速さは抜群だ。メーターは速度計のみ、ソロ仕様と割り切った造りも見事。
実例物件サンプリング〈SDR〉価格が少しずつ上昇
- 相場:58万円前後(約30~96万円)
- タマ数:極少
当時はレプリカ全盛時代。先鋭的すぎるコンセプトもあってか、広く支持されず1年で終了。タマは非常に少なく、選べない。さらに、2スト車の人気が上昇していること加え、好事家が狙っているケースもあり、相場はジワ上げ傾向だ。確保が難しいパーツもあるので、信頼できる店と付き合いたい。
サンプル1:機関良好車の場合
距離がさほど進んでおらず、外観、エンジンともかなり状態が良さそう。相場より安い価格も魅力的だ。
サンプル2:極上掘り出しモノ
エンジン好調の上に走行距離もわずか。フロントフォークはオーバーホール済みで、この値段も納得できる極上車だ。
スズキ ウルフ:ガンマの皮を剥ぎ取った狼
’88でデビューした初代RGV250Γのネイキッドバージョン。45psの凶暴なエンジンはそのままに2次減速比を変更し、加速性能を磨いたという過激ぶり。アルミフレームやφ41mm正立フォークなどΓ譲りの車体も際立つ。一見Γのストリップ版だが、専用アップハンやアンダーカウル、フロントディスクのシングル化で3kg減など意外と変更点は多い。3年間販売されたが、これまた中古はレアだ。
実例物件サンプリング〈ウルフ〉新車当時価格に追いついてきた
- 相場:43万円前後(約37~50万円)
- タマ数:極少
’89でΓと同様に電子制御化が進み、ステップ位置も前進。最終型の’90でキャブレターセッティングなどを変更した。今見るとストリートファイター的でイカすものの、当時はヒットせず、どの年式も現存数は少ない。相場に大変動はないが、上がり気味で、安いタマでも40万円程度、低走行車だと50万円程度の値を付ける。
サンプル1:低走行車の場合
走行距離わずか5000kmという貴重なノーマル車。自賠責に加え、整備と保証付きなのがうれしい。
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