日本車の絶頂期だった’80年代の名車たちに“高騰”の波が押し寄せている。超プレミアマシンと化した’70年代車のような状況ではまだないものの、現実的な価格で入手できる時間的猶予はそう長くないだろう。本記事では2ストレプリカの先駆けとなり、NSRの好敵手として戦ったヤマハTZR250/Rの状況をレポートする。
※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。
世代ごとにキャラが激変。安いのは初代、人気は3XV
本格2ストレプリカの先駆けとなり、NSRの好敵手として戦ったTZR。大まかに3世代があり、劇的にキャラが異なるのが特徴だ。’85の初代は、扱いやすい出力特性とハンドリングで登場。改良型の2XTを経て、’89で投入された次世代の3MAは、前方吸気&後方排気の革新的な設計で、一転してピーキーな性格となった。’91年にはエンジンをV型とし、高いバランスと速さを兼備した3XVに進化。完成度に優れ、相場も高騰中だ。とはいえ、過熱気味のNSRに比べ、歴代とも相場は控えめ。タマもそれなりにあるのがうれしい。
TZR250〈1KT〉ファンの多い初期型。多彩なカラーも魅力
- 相場:50万円前後(約40~60万円)
- タマ数:少ない
市販レーサーと共同開発したパラツインとアルミデルタボックスフレームで登場した初代。程度は玉石混淆ながら、相場が低め安定で買いやすい。以前よりタマ数は減少したものの、まだ選べる状態だ。車体色が豊富で、白×赤のストロボカラーをはじめ、ゴロワーズ、マールボロなど往年のWGPムードが味わえるのもポイント。
実例物件サンプリング
サンプル1:’85年式 1KTの場合
サンプル2:’86年式 走行距離1kmの未使用車の場合
YSP限定車として発売された1KTのニューヤマハブラック、通称田村カラー(=当時のヤマハ契約ライダー・田村圭二選手のレプリカ)はそもそもが希少だが、なんと未使用の新車! 永久保存したいお宝だ。
TZR250〈2XT〉1KTの改良型。希少車だ
- 相場:60万円前後(約40~85万円)
- タマ数:希少
初代をベースにアルミメッキシリンダーや新設計クランクケースを投入し、中高回転の伸びを増強。ボトムリンク式リヤサスも採用するなど、パラツインTZRの完成版と名高い。カウルは1KTと同じだが、カラーリングは異なる。販売期間は1年のみなので、タマは少なめ。1KTよりこちらを好むマニアも多く、相場は少しだけ高い。
実例物件サンプリング
サンプル1:’88年式 2XTの場合
TZR250〈3MA〉TZに準じた後方排気。通称”サンマ”
- 相場:75万円前後(約35~130万円)
- タマ数:並み
’89年2月、第2世代の3MA(通称サンマ)に全面刷新した。レーサーTZ250と同様に、キャブを車体前方、チャンバーを後方に配置するという普通のバイクと真逆のレイアウトを採用。’90で倒立フォークも獲得した。気難しい性格を嫌う者もいたが、センター2本出しの独特な共鳴音とスタイルは唯一無二。上玉には100万円超の値が付く。
実例物件サンプリング
サンプル1:’89年式 3MAの場合
サンプル2:’88年式 知る人ぞ知るコンプリート車の場合
YUZOチャンバーで知られる、名2ストチューナー・故柳沢雄造氏が手がけた3MAベースのコンプリート車。フロントの17インチラジアルを16インチ&バイアス化するなど、氏の独自理論が各部に注がれる。
TZR250R〈3XV〉Vツイン化された最終型。SPRが高騰中
- 相場:105万円前後(約65~200万円)
- タマ数:並み
完全新設計の90度Vツインにスイッチ。車名もTZR250Rに改めた。新作アルミフレームに倒立、クラス最軽量の126kgなどで躍進し、鈴鹿4耐での活躍も目立った。最終型の’95はSPRのみの販売で、キャブや車体を強化した決定版となる。’95以降は人気かつ希少で160万円超の相場を形成。NSRよりは買いやすいが、爆アゲ中だ。
実例物件サンプリング
サンプル1:’95年式 3XVの場合
●文:沼尾宏明 ●販売車両画像提供:グーバイク ●取材協力:グーバイクおよび各バイクショップ ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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