個性派揃いの’20タイヤ強化書

’20新作ラジアルタイヤ ピンポイント解説〈後編:メッツラー|ダンロップ|ピレリ〉

バイク本体以上に個性豊かで挑戦的では? そう思えるのが近年の最新ラジアルタイヤだ。特に今年は、従来と異なる潮流が見え隠れする。訪れつつある“タイヤ作りの変換期”について掘り下げるとともに、5ブランドの新作について解説する。その後編。■メッツラー スポルテックM9RR|ダンロップ ロードスマート4|ピレリ エンジェルGT2

前編より続く〉

先代M7RRのコンセプトが「Wet roads, dry roads, just ride it」だったのに対して、M9RRは「RIDE THE UNEXPECTED」。ライディングの条件が「雨もドライも」から「予期せぬ状況」へと変わったわけだが、確かにメッツラー製スポーツタイヤ・スポルテックの最新作「M9RR」は環境変化にすこぶる強いのが特徴だ。

【METZELER SPORTEC M9RR】●価格:オープン

実際にM9RRを体感したら、誰もが感心するのはすべての挙動に付随する優しさ、接地感のわかりやすさだろう。しかも、ウェットコンディションでも荒れた路面の舗装林道でも、その感触は変わらないから、乗り手はどんな状況でも自信を持って、思い切ったアクションを行うことができる。

また、先代M7RRと比較すると、前後輪への積極的な荷重を意識しなくても必要にして十分な接地感が得られることや、ABSやトラクションコントロールといった電子制御の介入の仕方が滑らかになっていることも、M9RRならではの美点だ。

ドライ路面の運動性も先代をしのぐ実力を備え、外観もサーキットで本領発揮するレーステック寄りになったけれど、実際はレーステックだけではなく、ツーリング指向のロードテックの資質も取り入れている。言ってみればM9RRは、メッツラーの総力を結集した、守備範囲が猛烈に広いタイヤなのである。

【PVは雨のマン島】M9RRを履いたS1000RRが、ほぼウェット路面のマン島を激走するプロモーションビデオ。悪条件への高い対応力をSSでも存分に楽しめるタイヤであることが分かる。

【メッツラー ロードテック01SE:最新電子制御システムに合わせて作り込み】最近のメッツラー/ピレリは、電子制御システムへの適応を念頭に開発を行っている。ロードテック01の改良版として新登場した「SE」も、欧州ミドルの電制デバイス採用増を受け、その対応を強化したタイヤだ。

メッツラー ロードテック01SE

ダンロップ スポーツマックス ロードスマート4:乗り心地では現在最強か!?

ストレスを数値化し、それを軽減するという画期的なアプローチで’15年に登場したダンロップのツーリングラジアルタイヤがロードスマート3。その後継である「ロードスマート4」は、トレッドパターンの印象こそ大きく変わらないが、内部構造やラウンド形状、コンパウンドの配合比率まで全てが一新されており、5年ぶりのモデルチェンジに賭けるダンロップの意気込みが伝わろう。

【DUNLOP SPORTMAX ROADSMART IV】●価格:オープン

ロードスマート3との違いは走り出した瞬間から明確で、とにかくショックの吸収性が高い。最新のツーリングラジアルはどのメーカーの製品も乗り心地が優秀だが、ロードスマート4のそれはケーシングが第二のサスとして機能しているのが伝わるほどで、まるでモッツァレラのように衝撃を柔らかく包み込んでしまうのだ。

そして、ハンドリングもいい。軽快でありながら軽薄と表現するほどではなく、フルバンクに至るまでの動きや旋回力もナチュラル。こうした地道な積み重ねにより、疲労低減効果はロードスマート3よりも高まっているという。

豊富なサイズ全てで実車に装着してテストを行っているという点も、旧車や希少車ユーザーにとって安心材料になろう。ロングツーリングが好きなライダーにぜひ試してほしい銘柄だ。

前作のロードスマート3と比較すると、特に乗り心地の向上が顕著。また、低い路面温度でも接地感が高く、これもストレス軽減に。

【4つの「続く」がキーワード】(1)新プロファイルによる軽快なハンドリング (2)内部構造の変更で乗り心地を向上 (3)偏摩耗を抑制する新パターンでライフ末期まで良好なハンドリングを継続 (4)高充填シリカコンパウンドでウェット性能を向上

※重量車向けのGTスペックも設定

〈次のページは…〉ピレリ エンジェルGT2|番外編:”先鋭化”という、もうひとつの流れ