アメリカでもっとも歴史のあるモーターサイクルメーカー「Indian motorcycle(インディアンモーターサイクル)」の主軸モデル「SCOUT(スカウト)」。初代誕生からナント100年! そのアニバーサリーモデルが世界限定750台で発売されている。ハーレー専門誌「ウィズハーレー」編集長で、クルーザーに造詣の深い青木タカオが乗ってみた。
●文:青木タカオ ●写真:真弓悟史 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
二面性あるエンジンが飽きさせない!
創業1901年、アメリカ最古参のバイクメーカー「Indian motorcycle(インディアンモーターサイクル)」。1920年に初代モデルが誕生した「SCOUT(スカウト)」は、30年代に運動性能を向上した「SPORT SCOUT(スポーツスカウト)」へと昇華すると、フロリダ州ジャクソンビルやジョージア州サバンナでの200マイルレースなどで圧巻の強さを見せつける。
ライバル、ハーレーダビッドソンは37年にスピード重視の「WLDR」で対抗するが、その年に初開催されたデイトナ200マイルでもインディアン・スカウトが1位を堅守。躍進は、誰にも止めることができなかった。ちなみに、その名をバイクファンではない人にも広く知らしめた映画『世界最速のインディアン』(2005年公開)に登場したマシンも“スカウト”だ。
その由緒正しきモデルの生誕100周年を記念し、世界750台のみ生産されたのが『スカウト100thアニバーサリーエディション』。
高剛性アルミフレームに搭載する排気量1133ccの水冷VツインDOHC4バルブエンジンや、前後16インチの足まわりなど基本構成はシリーズで共通としつつ、ワイヤースポーク仕様のホイールや幅広のビーチハンドルバー、本革を用いたサドルシート、クロームパイプのリアキャリアを装備。
外装は数々の栄冠をもたらした“レッキングクルー”のマシンたちがそうだったように「インディアンレッド」で美しくペイントされ、100周年記念バッジとともに彩られた。ディープフェンダーや燃料タンクに、繊細でエレガントなゴールドのストライプが描かれ、プレミアムな1台であることを強く感じる。
ツインカムでショートストロークの60度Vツインエンジンは、ミドルレンジまでは心地よくテイスティだが、その気になれば猛然と加速し、元気溌剌という二面性のあるキャラクター。
不等間隔爆発の心地良い鼓動を低回転域では味わえ、ダッシュが必要なシーンでアクセルを開ければ力強いトルクとともに回転上昇し、5600rpmでピークトルク97Nmを発揮。トップギヤ6速での100km/h巡航は3100rpmほどで、120km/hあたりまでがスイートな領域であることは140以降の目盛りが小さい速度計を見ても納得がいく。
大排気量クルーザーにしてはコンパクト感がシャシーにあり、それは俊敏な身のこなしであったり、軽快なハンドリングが乗り手に印象づけている。
前後16インチとピレリ・ナイトドラゴンが素直な初期旋回をもたらし、前後サスも踏ん張りが効き、突き上げをくらう不安もない。バンク角は深くないから旋回力が高いと言えないが、操作に対し従順に車体が反応し、剛性の高いフレームや踏ん張りの効く前後サスはハードに攻め込んでも音を上げず、車体に対しては現代的な印象を抱く。
ハーレー・スポーツスターが直接のライバルとなるが、全方位で先進的であることは間違いない。ただし、XL系はスチールフレームに空冷45度Vツイン5速という、もはや旧車然とした組み合わせだから、そう感じるのは当然。本当のライバルは、今夏以降登場してくる、同じ水冷60度VツインのRevolution Max(レボリューションマックス)搭載車となるだろう。
見た目どおり紳士的にゆったり流しても味わい深いし、ワインディングで前方に投げ出した両足を載せるステップを路面に擦らせてアグレシッブなライディングに没頭するのもいいだろう。どちらも楽しい、満足度の高い1台だ。
伝統とモダンが融合し、ハイクオリティと新しい価値を生み出した!
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