ハイスピード化するクルーザーカスタムにおいて目立ってきた、エンジン載せ替えやボアアップ。そこで、合法的に車検に通り堂々と乗れるようにしたいと考えたのが、S&S製2000㏄超エンジンを取り扱うプロトだ。フォレストウイングとの共同作業により”公認取得エンジン”を実現させた経緯を追った。
●文:青木タカオ ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
誰も成し得なかったハーレー合法カスタムの提案
ことの発端は、プロト(カスタムパーツ企画・製造の他、海外部品・用品のインポーター)の「S&S」社担当である島田真学氏が、ハーレーイベントに参加した2018年夏の終わりに遡る。そのイベントで行き過ぎた非合法カスタムの多さを改めて認識し、心を痛めたところから話が始まった。
「クラブスタイル」「HOGGスタイル」等のハイスピードクルーザーカスタムが増えてきている中、非合法でエンジンをボアアップをしたり、エンジン載せ替えをしていたり、現在のハーレーカスタムは少しやり過ぎていると痛感したとのことだ。
そんな中、非合法カスタムをしているユーザーも心の底には若干後ろめたさもある、ということを島田氏は知った。そこで、ハーレーカスタムブランド「S&S」の正規輸入販売元であるプロトとして、「堂々と一般公道を走れる」「合法的にエンジンを載せ替えられるようにしたい」と思い立ち、「PROJECT ENGINE SWAP T124 Street Legal」をスタートさせるに至ったのだ。
しかし、合法的に公認を取得するには、単純にエンジンを載せ替えて陸運局で申請すれば、合格=公認となるわけではない。その道のりは、長く険しいものだった…。
フォレストウイングとの共同作業=自動車排出ガス試験に挑戦
このプロジェクトを進めるにあたり、ゼロエンジニアリング「ロードホッパー」を日本および世界各国の規制に対応させた技術と経験を持つプロトと、ハーレーダビッドソンのカスタム・インジェクションチューニングで定評のある「フォレストウィング」(奥藤悟氏が主宰する名古屋の有力カスタムショップ)が手を組み、自動車排出ガス試験(WMTCモード)・加速走行騒音試験に臨むことになった。
いわゆる排出ガス試験(WMTC モード)は、CO・THC・NOX等を測定し、すべての排出量に対し基準値以下でないと不合格になる。CO・THCを減らせばNOXが増え、NOXを減らせば CO・THCが増えるという難しさ。インジェクションチューニングで定評のあるショップでも、この試験に挑戦したショップは多くないという。
CO・THC・NOXの測定は、気温や湿度、気圧なども関係し、試験前に行うテスト走行で合格数値を出しても安定しないため、納得のいくまでテストが行われた。通常営業とは別に、毎晩遅くまで計測・調整を繰り返し、日本車両検査協会で行われる自動車排出ガス試験・加速騒音試験を無事クリア。プロジェクト開始から約半年の月日を費やし、ついに合格通知を手にしたのだった。
改造自動車審査結果通知書(合格通知)が届いた!
各試験の合格通知を受け取ったからといって、すなわち公認を取得できるというわけではない。ここからは陸運局との闘いが始まるのだ。エンジンの載せ替えをするにあたり、保安基準を満たしていることをわかりやすく書面で証明しなくてはならない。
島田氏は何度も陸運局に足を運び、必要書類についてやりとりを繰り返した。そして、完成させた書類を提出してから待つこと3週間。書類審査に合格し、ついに改造自動車審査結果通知書(合格通知)を手に入れたのだ。
その後の流れは比較的簡単だった。すべての書類と車両を陸運局に持ち込み、検査ライン通過後、新たな自動車検査証が発行された。こうして平成から令和へと元号を跨ぎ、「PROJECT ENGINE SWAP T124」というハーレーの新たな合法カスタムの歴史が幕を開けたのである。
[参考]フォレストウイングの店舗取材映像
写真をまとめて見る
あなたにおすすめの関連記事
横浜市鶴見区の老舗バイクショップ「一国サイクルワークス」は、国内メーカーも取り扱うがハーレーのカスタムバイク製作が得意である。それもルックスだけのカスタムではなく、バイクとしてトータルポテンシャルをス[…]
既存イメージからの脱却を図っているハーレーダビッドソン。'20プロトタイプとして、完全新作の水冷エンジンを引っさげたアドベンチャーモデル「パンアメリカ」とストリートファイター「ブロンクス」が登場。年内[…]
世界でただひとつだけ、ハーレーダビッドソン社が運営するオーナーズグループ、それがH.O.G.(ホグ)だ。活動は多岐にわたるが、そのひとつがメンバーらが集結するファンライドラリー。ひとりであってもグルー[…]
’20年モデルで登場したハーレーの最新パフォーマンスクルーザー「FXLRS ローライダーS」は、全身をブラックアウトした車体に1868ccの強力エンジン搭載!! 100km/h巡航などたやすく、トップ[…]
ハーレーダビッドソン2020年モデルと最新カスタムを一挙紹介する『WITH HARLEY(ウィズハーレー)』vol.2が新発売!! まずはLOWRIDER(ローライダー)、FXDR114、DELUXE[…]