第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

ツアラーの定義を変える傑作

ヤマハ ナイケンGT試乗インプレッション【ハイスクリーン採用で真の狙いがより明瞭に】

  • 2019/9/5
YAMAHA NIKEN GT

トリシティ125、155に続くLMWシリーズ第3弾として、2018年9月に受注開始となったヤマハのナイケン。初の派生モデルである“GT”は、大型のハイスクリーンや厚みを増した専用シートをはじめ、グリップヒーターやメインスタンドなどで長距離性能を強化。その実力をチェックしたぞ!

(◯)防風効果大幅アップ! 専用シートも好印象だ

トリシティ125、155に続くLMW(リーニング・マルチ・ホイール)シリーズ第3弾として、2018年9月に受注開始となったヤマハのナイケン。その派生モデルとして2019年3月に日本でも正式発表されたのがナイケンGTだ。大型のハイスクリーンや厚みを増した専用シートをはじめ、グリップヒーターやメインスタンド、純正オプションのトップケースに対応したグラブバーなどを追加しているのが特徴であり、さらに車体色も専用となっているのだ。

YAMAHA NIKEN GT

【ヤマハ ナイケンGT[2019]】主要諸元■[ ]内はナイケン■全長2150 全幅885 全高1425[1250] 軸距1510 シート高835[820](各mm) 車重267[263]kg ■水冷4スト並列3気筒DOHC4バルブ 845cc 116ps/10000rpm 8.9kg-m/8500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量18L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70R15×2 R=190/55R17 ●価格:194万4000円 ●色:灰、つや消し青

YAMAHA NIKEN GT

【STDからは16万2000円高】スタンダードのナイケン(右)はダークグレーのみ。GT(左)のカラーリングは2色で、それぞれフロントフォークの色が異なる。

’19年4月号のタッチ&トライでスタンダードに試乗した際、一般的なモーターサイクルでは到達しえない別次元の安定感と、そこに卓越した運動性が同居していることに心底驚かされた。その一方で、FJR1300も顔負けのスポーツツアラーとしての潜在能力を秘めながら、防風効果はやや中途半端で、さらに素の状態では積載性に乏しいなど、ちぐはぐな印象を持ったのも事実だ。

そうしたアンバランスなイメージを完全に払拭したのが、このナイケンGTだ。元々、フロントカウルがワイドなだけに下半身の防風効果は高かったが、大型ハイスクリーンの採用によって上半身までほぼ完璧にカバー。しかも不快な風切り音もほとんどなく、極めて快適である。

YAMAHA NIKEN GT

【純正アクセとも異なる専用のハイスクリーン】ワイズギア扱いのハイスクリーンよりも大型の専用品を装備。なお、トレーサー900のような高さ調整システムは採用していない。

シートもいいことづくめだ。座面が15mm上がったことでクッション性が増しただけでなく、ステップに足を置いた時のヒザの曲がりが緩やかになり、疲労度が軽減。さらに座面がフラットに近くなったことで着座位置の自由度が増し、適切な側面形状によって足着き性も悪化していない。高級感のある赤いステッチも含め、この専用シートの採用は大正解だ。

YAMAHA NIKEN GT

【前後ともに肉厚化してロング時の疲労を軽減】前後とも形状と着座面積を最適化し、さらにステッチを施すことで高級感を高めた。トップケース対応のグラブバーもGTの新作だ。

ナイケンとしての基本性能はスタンダードと共通だが、風と格闘する必要がなくなった分だけエンジンとの対話が濃密になった印象だ。3種類の走行モードや2モード選択式のトラコン、クイックシフター、クルーズコントロール、アシスト&スリッパークラッチはどれもライダーにとって有益であり、特にGTならではのシチュエーションではクルコンが大活躍。まさにナイケン本来の姿はこれだと断言していいだろう。

YAMAHA NIKEN GT

シート高は15mm増えたが、形状が最適化されたことで足着き性はむしろ向上。ハンドルバーはかなり広めだ(身長175cm 体重62kg)。

YAMAHA NIKEN GT

【全高175mm&4kgアップ。ツアラーらしい外観に】ハイスクリーンの採用により全高は175mmアップし、各種装備追加で車重が4㎏増えているナイケンGT。スチールとアルミのハイブリッドフレームなど、基本的な構成は変更なし。

YAMAHA NIKEN GT

反転液晶のメーターなどコックピットは変更なし。クルーズコントロールは4速以上のギヤでセット可能だ。

YAMAHA NIKEN GT

MT-09シリーズの845cc水冷並列3気筒をベースに、クランク慣性モーメントを18%増やす。Dモードやトラコンなどを採用。

YAMAHA NIKEN GT

【フロント2輪+専用15インチの特徴的な前脚だ】外側片持ちサスとLMWアッカーマンジオメトリーによってスムーズな旋回特性と45度という深いバンク角を実現。ハンドル切れ角は36度。

YAMAHA NIKEN GT

【GTの専用装備】メーター横に加え、ライダーシートの左下にも12Vの電源ソケットを標準装備する(右上)。メインスタンドも標準装備(左下)。センタースタンドと同様にワイズギア扱いだった、3段階の温度調整が可能なグリップヒーター(右下)。作動状況はメーター内で確認できる。

(△)受注はすでに終了。在庫を探すか次年度を待つか……

スタンダードと同様にリヤからの突き上げが大きめで、フロントの追従性がいいだけに前後をバランスさせたいところ。なお、残念なことに’19年モデルの予約受注はスタンダード、GTともに7月31日までで終了済み。新車を買うなら店頭在庫を探すか、2020年モデルを待つしかない……。

(結論)こんな人におすすめ:ツアラーの定義を変える傑作。旅の質が上がる

アルプスやピレネーなど過酷な峠を走る自転車ロードレース。そのサポートバイクとしても活躍しているナイケン。操縦感こそ通常のモーターサイクルだが、疲労度の少なさは乗用車並み。スポーツツアラーの定義を変える秀作だ。

●写真:岡 拓
※取材協力:ヤマハ発動機

※ヤングマシン2019年9月号掲載記事をベースに再構成

※本記事の内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。

大屋雄一

大屋雄一

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紙面版にて厳正なる新製品テストを担当するベテランジャーナリスト。