手の内に収められるが、まるで退屈しない速さあり。ヘルメットの中で思わずニヤリとしてしまった……。ビッグバイク乗りにもぜひ味わってほしい快感だ!
TEXT:Toru TAMIYA PHOTO:Satoshi MAYUMI
ぶん回して乗る気持ちよさと低速時の扱いやすさが共存
裏切られた……いい意味で!
遅ればせながら初めて乗ったGSX-R125 ABS。もっとデザイン先行の設計を想像していたのだが、コイツには走りの楽しさと日常での扱いやすさも十分に備わっているのだ。
このモデルが日本で発売開始されたのは’18年1月末。同年9月には初の車体色変更を受け、3バリエーションともGSX-RシリーズのフラッグシップとなるGSX-R1000R ABSと共通イメージのカラー&グラフィックとなった。このうち今回試乗したトリトンブルーメタリックは、MotoGPファクトリーマシンのレプリカカラー。9月の変更時には、スズキ純正エンジンオイルでモトGPファクトリーチーム名称にも「チーム・スズキ・エクスター」として加えられているエクスターのロゴが追加された。
DOHC4バルブの水冷単気筒エンジンは、さすがに小排気量クラスなので低回転域トルクは薄めだが、6000回転付近から盛り上がり、最大トルクを発揮する8000回転、そして最高出力を生む1万回転と、高回転域になるにつれて加速力が増していく。原付二種クラスなので、フルスロットルでも怖いほどの加速ではないが、一方でダルさを感じさせるような鈍さはなく、むしろこのクラスとしてはかなり速い。小排気量クラスなので、トルクというよりはエンジン回転で速度を稼ぐフィーリングなのだが、レッドゾーンの1万1500回転を超えてからも唐突な頭打ち感がなく、高回転まで使い切りながら走るのが気持ちよい。
クローズドコースでこのマシンを走らせたことがある知人によると「バックミラーを寝かせていない状態でも、長めのストレートなら120km/hに達した」という。この力強さと伸びなら、その証言にも納得できる。
ただしこのエンジン、中高回転域ばかりで低回転域は扱いづらいのかというと、これまた予想に反して日常的な市街地走行との相性も悪くない。特に秀逸なのは、1~2速でクラッチを切らず、歩くような速度で走らせたとき。SV650などのようなローRPMアシストの搭載はうたわれていないが、的確なFI制御のおかげで、エンジンがストールせず回り続けてくれる。だから、Uターンだってとても簡単だ。
もちろん、市街地での扱いやすさやUターンしやすさには、軽量コンパクトな車体もプラスの要因となっている。そして、ゴージャスなアイテムが使われているわけではないが、全体のバランスに優れることから、この車体は中高速域でのスポーツ性も高い。前後17インチ径のフルサイズホイールは、高速コーナーなどで適度な安定感ももたらし、もちろん低速コーナーでは小型軽量級らしいヒラヒラ感もあるが、過敏すぎて不安になることがない。
さて、このGSX-R125は、マニュアルクラッチで楽しめる本格的な原付二種スポーツとして、エントリーライダーが乗る最初の1台という役割も担う。しかし試乗を終えて思ったのは、「これを初心者だけのモノにさせておくのはもったいない」ということだった。回転数とギヤを考えながら加速させる楽しさと奥深さや、小型軽量級でしか味わえないコーナリングの自在感は、普段はビッグバイクに乗るライダーこそ、より実感できる要素でもある。セカンドバイクにすれば、ベテランライダーでも新しい(もしくは懐かしい)快感に心躍ることだろう。
GSX-R125 ABSのスタイリング&スペック
GSX-R125 ABSの各部ディテール
GSX-R125 ABSのライディングポジション 身長167㎝/体重63kg
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