フロント2輪の強烈な存在感。見たことのない近未来的なデザイン…。バイクの常識をことごとく覆して、2018年バイク市場において大きな話題となったヤマハNIKEN(ナイケン)は、ヤマハの「バイク愛」がたっぷり込められた1台だ。このニューモデルを徹底解剖する本特集、ヤングマシン本誌でおなじみの丸山浩氏が国内サーキット・公道・未舗装路にて試乗。同じエンジンを積んだMT-09との比較レポートをお届けする。#3ではサーキット(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)でMT-09と対決! 走行動画も合わせてお楽しみあれ。
[TESTER] 丸山 浩(まるやま・ひろし)バイク業界随一の新しモノ好きながら、常に鋭い視点でニューモデルをチェック。バドミントンで体を鍛え、感覚を研ぎ澄ませている。↓戻って読む〈2〉公道&未舗装路試乗インプレ編↓
フロント2輪の強烈な存在感。見たことのない近未来的なデザイン…。バイクの常識をことごとく覆して、2018年バイク市場において大きな話題となったヤマハNIKEN(ナイケン)は、ヤマハの「バイク愛」がたっ[…]
スポーツ性はほぼ互角!! 限界の分かりやすさはナイケンのメリット
ナイケンについて必ず聞かれるのが「転ぶのかどうか」だ。ホイール3つと聞けば、「転ばないのではないか」と考えるのはごく自然だ。実際、フロント2輪のカンナム・スパイダーなどは足を着かなくても自立し、転ばない。
しかし、ナイケンは”転べる”。サーキットを激攻めして、確信できた。ナイケンは3輪車じゃない。構造からして2輪車とは呼べないが、これはれっきとしたバイクなのだ。
サーキットでも、普通に走っている分にはやはりフロントの接地感と安心感が極めて高い。MT‐09と比べても差は歴然としている。また、旋回力も高いので、コーナー入口でシュッとインに着くことができる。
タイムを見ても、なんと70kgも軽いMT‐09とほぼ互角。これはフロント2輪のメリットを生かし、コーナリングスピードを高められるからだ。
だが、さらに攻め立てると、リヤが流れるのは当然として、なんとフロントが切れ込み始めた! 「そのまま攻めたら前から転ぶぞ」という限界感も一般的なバイクと同じにちゃんとある。実際、間違いなくイッてしまうだろう。
限界の分かりやすさは、2輪車であるMT‐09以上。インフォメーションが多く、「ヤバイ」と感じてから実際にイッてしまうまでの懐は深そうだ。
だが、確実に転べる。転倒のリスクがあることをバイクの特性と言っていいのかは分からないが、少なくともそれをコントロールするのがライディングの醍醐味であることは確か。ヤマハはナイケンをあくまでもバイクと捉えていることがハッキリと分かった。
サーキットで攻めてみた結果は…【動画もチェック】
【ナイケン】ベストタイム:1分20秒164/最高速度:171.38km/h
【MT-09】 ベストタイム:1分19秒815/最高速度:179.26km/h
試乗レポート総括:バイクの魅力をひとつも失っていないナイケン
ナイケンは転べる。フロント2輪のLMWは多くのメリットを備えているが、ネガティブなポイントもある。そこに私は、ヤマハのバイク愛を感じる。「バイクらしさを備えたまま、どうにか転びにくい乗り物を作れないだろうか」という熱い思いを。
ナイケンに乗れば、バイクに乗ることで得られる楽しさや喜びを、すべて感じることができる。車体を傾けて走る爽快感。スロットルを開けた時の豪快な加速。コーナリングの軽快さ。そして「転ぶかもしれない」という緊張感まである。このうちのひとつでも失ってしまえばバイクではなくなるのだが、ナイケンは見事にすべての要素を備えているのだ。
それに加えて、フロントからの豊かな接地感、圧倒的な安心感、そしてどっしりとした安定感も持ち合わせているのだ。ワダチやギャップ、横風にも強く、Uターンもしやすい。
どう見てもナイケンは異形だ。圧倒的少数派の今は、キワモノと受け止められてしまうかもしれない。だが、極限状態まで攻め込んだ時にこそ、まっとうな考え方に基づいて真剣に作られていることが分かる。バイクの血統の中に、ナイケンはある。
メカメカしくワイルドなルックスだが、ナイケンはとても優しい「バイク」なのだ。だから40代後半の編集スタッフは、自信を持って濡れた路面でもコーナーに突っ込むことができた。
いくつになってもスポーツマインドを忘れないアダルトライダーにこそ、ナイケンはフィットする。バイクの喜びを知り尽くし、あくまでもバイクにこだわり続けようとするライダーのために、ナイケンは生まれてきたのだ。
〈参考〉燃費データ(サーキット走行各30分を含む)
ナイケン[MT-09]●燃料タンク容量18L[14L] ●走行距離229.0km[206.7km] ●消費燃料15.64L[11.11L] ●燃費14.64km/L[18.60km/L] ●航続距離263.5km[260.4km]
●まとめ:高橋 剛 ●撮影:松井 慎/飛澤 慎 ●取材協力:袖ヶ浦フォレストレースウェイ
※この記事は『ヤングマシン2018年12月号』に掲載されたものを基に再構成したものです。
※3輪によるサーキット走行は袖ヶ浦フォレストレースウェイの許可を特別に得てテストしたものです。同施設にて3輪を走らせる場合は、可能かどうか事前に問い合わせを。
↓続きを読む〈4〉LMWアッカーマン・ジオメトリ詳解編↓
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