フロント2輪の強烈な存在感。見たことのない近未来的なデザイン…。バイクの常識をことごとく覆して、2018年バイク市場において大きな話題となったヤマハNIKEN(ナイケン)は、ヤマハの「バイク愛」がたっぷり込められた1台だ。このニューモデルを徹底解剖する本特集、#1はヤングマシン本誌でおなじみの丸山浩氏が国内にて試乗。同じエンジンを積んだMT-09との比較レポートをお届けする。
[TESTER] 丸山 浩(まるやま・ひろし)バイク業界随一の新しモノ好きながら、常に鋭い視点でニューモデルをチェック。バドミントンで体を鍛え、感覚を研ぎ澄ませている。2輪からパッと乗り換えて違和感がないというスゴさ
2輪か、3輪か…。前輪の個数を選べるというのだから、いやはや、スゴい時代になったものだ。
コミューターであるトリシティから始まったフロント2輪の「LMW(リーニング・マルチ・ホイール)テクノロジー」を、ヤマハは積極的に押し広げようとしている。
コミューターとは対極にあるスポーツバイクカテゴリーに切り込んできたナイケンは、まさにヤマハの意欲作と言えるだろう。
言うまでもなく私(丸山)は正統的なバイクに乗り続けた身で、2輪の動きが身に染みついている。だが一方で、ナイケンを前にすると、新しもの好きのココロがウズウズと騒ぐ。
すでに2018年9月26日に修善寺・サイクルスポーツセンターで行われたナイケン試乗会に参加し、初ライド済みだ。まずナイケンのまったく違和感のない操縦感覚に驚かされた。何しろ、フロントにふたつのタイヤがあるとはまったく思えないのだ。しかも、フロントの安心感はバイク以上!…と、試乗会では感じることができたが、果たして本当なのだろうか? 2輪か、3輪か。ニュートラルな目で、そして同じ条件で、両方を比較してみたい。3輪の意味、そして2輪の価値を、改めて探ってみたい…。
そして、チャンスはすぐにやってきた。ナイケンとMT‐09、同じエンジンを搭載した2台の同門による徹底比較試乗だ! 「対決」ともひと味違う純粋な好奇心とともに、ストリートで、高速道路で、そしてサーキットで、2台を走らせてみた。
やはり試乗会と同様に、違和感がまったくない。2台を取っ替え引っ替えしながらのライディングとなったが、これがまずスゴイ。サーキットでの全開アタックを含め、取っ替え引っ替えを問題なくこなせてしまうこと自体が、ナイケンのバイクとしての完成度を物語っているのだ。
だが、まったくバイクのままじゃない。そんなはずはない。メーカーが大変な手間とテクノロジーを投入してわざわざ前輪をひとつ増やすからには、必ずメリットがあるはずだ。「安心感」といったフィーリングだけではなく、2輪と比べた時の実質的なメリットを探す一日となったわけだが、それはかなりあっさりと見つかった。
実は、試乗会の時点でその片鱗は窺えていたのだ。ウエット路面で私をタンデムシートに乗せた編集スタッフが、「おいおいっ!」という勢いでコーナーに突っ込んだのだ。思わず身を固くしたが、ナイケンは難なくクリアした。
お世辞にもエキスパートとは言えない彼が見せた、大胆不敵なライディング。なぜそれが可能になったのか、MT‐ 09と比較試乗するにつれて、その理由が明らかになっていった…。
●まとめ:高橋 剛 ●撮影:松井 慎/飛澤 慎
※『ヤングマシン2018年12月号』掲載記事をベースに再構成
↓続きを読む〈2〉公道&未舗装路試乗インプレ編↓
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