マシン・オブ・ザ・イヤー2018
乗りこなす楽しみにあふれる!

ハスクバーナ ヴィットピレン401のインプレッション

’14年のミラノショーで発表されたコンセプトモデルそのままの姿で登場したヴィットピレン401。これぞ現代版カフェレーサーだ!

【〇】扱いやすいレスポンス 驚くほど軽くて小さい

久しぶりに戸惑った。ライポジが特殊なのだ。真一文字に近いセパレートハンドルと後退気味のステップにより、上半身の前傾角はスーパースポーツ並みに深い。しかも、ほぼフラットなシートはどうにも腰が落ち着かず、足着き性も決して良いとは言えない。体幹でしっかり上半身を支えていないと、体重の多くがハンドルに掛かってしまいそうだ。

戸惑いはまだ続く。そうした前荷重気味のライポジでありながら、フロントタイヤはトレールが短いかのように落ち着きがない。ベースとなったKTMの390デュークは傑作と言えるほど快活なハンドリングの持ち主だが、ヴィットピレン401にその面影はほとんどない……。

ところが、しばらく試行錯誤しながら峠道を流しているうち、ピタッと気持ち良く旋回するシーンが現れた。どうやら着座位置を後ろ気味にすると、前後輪の動的な分布荷重が適正になるようで、それが分かってからはとにかく楽しくて仕方がなかった。とはいえ、座る位置がどこであっても、常に揺らぎというかしなりを感じさせるシャシーの雰囲気は小排気量のオフロード車に近く、コーナーの入り口にギャップがあろうものならかなり慌てることに。しかし、そうした挙動も車体が軽いからこそ許容でき、気が付けば久しぶりに心地良い汗をかいていたのだ。

そんなジャジャ馬的な走りを支えているのは、390デューク譲りのエンジンだ。1万rpmまで勢い良く吹け上がるほどシャープな特性ながら、スロットルレスポンスが優しいので扱いやすく、エンジンによって走りを乱すことがない。アシスト&スリッパークラッチはレバー操作が軽い上に、急激なシフトダウンでもリヤタイヤがロックする心配はなし。シングルらしい歯切れのいい排気音も含めて非常に気に入った。

同じく390デューク譲りのブレーキセットは強力かつコントローラブルで、これもエンジンと同様にライダーを慌てさせない要因の一つとなっている。スタイリング重視のカフェレーサーだが、基本となる要素はまったく妥協していないのだ。

【ハスクバーナ VITPILEN401 2018年型日本仕様 色:白 価格:77万7000円】 「白い矢」を意味する車名は、1955年に登場したハスクバーナ・シルバーピレン(=銀の矢)からインスピレーションを得たもの。ネオクラシックに分類できるが、その枠に収まらない先進のデザイン性が大きな特徴だ。

現在はKTM 傘下にあるハスクバーナ。エンジンやフレームなど基本骨格は390デュークがベースとなっている。ホイールはアルミキャストからワイヤースポークへ。車重は1kg増の148kg。

 

ライポジは強烈スポーティ! シート高は835mmと高いため、足着き性はご覧の通り。トップブリッジと同じ高さのハンドル、後退したステップにより、スーパースポーツ並みの前傾姿勢となる。長距離は不向きだ。(身長175cm/体重62kg)

【×】ライポジは賛否両論 荷物の積載もほぼ不可

冒頭でも述べたが、やはりライポジが特殊なので合う合わないが明確に分かれそう。また、ご覧の通りタンデムシートの面積が極端に狭いので、荷物を大量に積んでのツーリングはかなり困難と言えるだろう。

【結論】気分転換の相棒としては最高の選択だ!

久しぶりに乗り方で試行錯誤させられたが、その過程はむしろ楽しかった。そして、何よりスタイリングが個性的で、注目度は満点だ。ベースとなった390デュークより15万円以上高いが、伊達を気取るのならいいチョイスだろう。

シンプルながら個性的。極限まで無駄をそぎ落としたミニマルかつホリゾンタル基調のスタイリングはインパクト大だ。タイヤサイズや前後サスのストローク量、ブレーキセットなどは390デュークに準じる。

一文字のハンドルバーはアルミ鍛造のトップブリッジに直に差し込まれており、垂れ角はほとんどなし。メーターはヘッドライトと同様に真円で、スイッチも円状にレイアウトされる。

タンクとサイドカバーが一体となった個性的な外装。容量は390デュークの13.4Lから9.5Lへと縮小されいている。キャップはハスクバーナのロゴ入りだ。

表皮にヌバックレザーを使用したシート。キーロックにて取り外し可能だが、収納スペースはほぼ皆無。グラブバーはボルトオンだ。

43hpを発揮する375ccの水冷単気筒は390デューク譲り。ミッションは6段で、スリッパークラッチを組み合わせる。トレリスフレームはクロモリ鋼だ。ラジエターのサイドやホイールのリムには差し色としてイエローが効果的に使われている。

灯火類も独自色が強い。ヘッドライト、テールランプ、ウインカーなど灯火類は全てLED。リヤウインカーはナンバープレートとともにスイングアームにマウントされる。

φ43mm倒立式フロントフォークやシンプルなリヤショックなども390デューク譲り。前後キャリパーはバイブレ製で、ボッシュのABSを導入する。

他にもある「ピレン=矢」兄弟。左=スヴァルトピレン401(375㏄・77万7000円)/右=ヴィットピレン701(692.7㏄・135万5000円) 390デュークをベースとしたスクランブラースタイルのスヴァルトピレン401、690デュークがベースのヴィットピレン701も存在。なお、デザインに関してはKTMと同様にキスカ社が担当している。

主要諸元■全長― 全幅― 全高― 軸距1357±15.5 キャスター/トレール=25°/95 シート高835(各mm) 車重148kg(装備)■水冷4スト単気筒DOHC4バルブ 375cc 43hp/9000rpm 3.8kg-m/7000rpm 変機6段リターン 燃料タンク容量9.5L■ブレーキF=ディスク R=ディスク■ タイヤF=110/70R17 R=150/60R17

写真:飛澤慎

兄弟車390DUKEの機能をテストした「【動画】KTMのコネクテッドメーターを実践!」はこちら

大屋雄一

大屋雄一

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紙面版にて厳正なる新製品テストを担当するベテランジャーナリスト。

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