2020年に実用化を目指す

コネクテッド対応のMT-09トレーサー(TRACER)が展示

ホンダ、ヤマハ、BMWが中心になって2015年に創設された「コネクテッド・モーターサイクル・コンソーシアム」が、2018年10月のインターモトショーに出展。ヤマハの開発用MT-09トレーサーが展示された。

【基礎知識】車車間通信で全て先読み

ライダーの交通事故を抑止する基本機能として、現実的でもっとも効果が期待できるのが車車間通信だ。これから自車の進行方向上に現れるであろう、走行中、停車中の車両と通信を行い、お互いの進行方向やスピードなどをやり取りすることで、ライダーにほかの車両の存在を知らせてくれるというもの。事前に見えない車両がわかることで、クルマのドライバーより18倍も高いという、こうした事故で死亡に至るライダー側のリスクを減らしてくれる。ボッシュは今、国際的に検討されているITS用の通信方式を利用して、こうしたクルマとバイクの車車間通信システムを開発している。また、2015年にはホンダ、ヤマハ、BMWの3社が、こうした車車間通信も含めた協調型システム車載器の共同開発を発表するなど静かに動きは進んでいる。 ※ヤングマシン2018年8月号(6月24日発売)より

ボッシュの例。半径数百mの通信圏内にほかの車両が入ってくると、1秒間に最大10回の頻度で、車種や速度、位置、進行方向などのデータを数ミリ秒で送受信する。
こちらもボッシュの例。交差点やブラインドコーナーなど自分から見えない方向に障害となる停車車両や、進行方向上に進入してくる車両を、メーターやモニター上に表示すると同時に音声で警告してくれる。また、例えばほかのクルマが停車車両を検知していることを、いち早くその場所に進入してくる車両に伝えるなど、ネットワーク機能も備えているのが特徴だ。

バイクでの普及を目指して協業が進む

2輪4輪を含めた車車間通信だけなく、「人と道路と車両を一体のシステムとして構築することにより、ナビゲーションシステムの高度化、有料道路等の自動料金支払いシステムの確立、安全運転の支援、公共交通機関の利便性向上、物流事業の高度化等を図る(国交省)」というのがITS(=Intelligent Transport Systems、高度道路交通システム)の目標。ただし、2輪ではスペースの制約や防水性や耐震性への対策が必須になることから、4輪向けに設計されたITSは、そのまま2輪に搭載することはできない。また、2輪は4輪とは走行時の運動特性が異なるため、ソフトウェア開発やアルゴリズムに特別な要件が必要となるため、2輪の主要メーカーは「コネクテッド・モーターサイクル・コンソーシアム」を2015年10月に設立。当初はホンダ、ヤマハ、BMWが協業してバイク向けITSの開発を進めることにしたが、現在組織が拡大中だ。2018年10月に開催されたインターモトショーにはブースを出展し、ヤマハの開発車両であるMT-09トレーサーでメーター部分の警告表示をデモ展示していた。

【YAMAHA MT-09 TRACER 2018年コネクテッドモーターサイクルコンソーシアム出品車】インターモトショーで展示された開発車両のメーター。車の飛び出しだけでなくブレーキの警告や緊急車両の接近、道路工事の予告など、道路交通システムと繋がること(コネクテッド)により様々な危険要素をライダーに事前に知らせてくれるようだ。
2018年インタモトショー時点では、車両メーカーだけでなくボッシュやセナ、カルドといったサプライヤーやインカムメーカーもコンソーシアムに名を連ねている。同コンソーシアムはバイク向けITS(高度道路交通システム)の標準化を目指し、2020年までに各メーカーはこれを搭載したバイクを1モデルは市販するとしている。左上はその開発車両だ。

文:八百山ゆーすけ(前半部分)
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