2018年6月6日、ボッシュ・グループ年次記者会見がボッシュ株式会社の渋谷本社で行われた。同社は1911年に日本進出を果たしたボッシュの日本法人で、「モーターサイクル&パワースポーツ」部門がバイク用の技術開発も行っている。今年は、5月に発表されたバイク用レーダーの開発車両が展示された。
150m以上を見通す機械の目で何が可能に?
ボッシュは、2015年11月のミラノショーで車両後方などの死角をカバーする超音波センサーを発表し、それを2016年モデルのBMW C650GTが採用。そして今度は、2018年5月にバイク用レーダーを発表し、2020年にドゥカティとKTMが採用を予定していることがアナウンスされた。
まず、超音波とレーダーの違いだが、前者のカバーする範囲は5mほど。C650GTでは、左右後方に他車が迫っているかどうかを検知&警告するサイドビューアシストとなって活用されており、4輪では自動駐車などで活用されることが多い。そして、後者では距離にして150m以上、中心から20度の範囲をカバーすることが可能となった。この探知能力の向上によってACC(アダプティブクルーズコントロール)、FCW(衝突予知警報)、BSD(死角検知)という3つの機能を盛り込めるようになったのだ。
ACCではスロットルとブレーキをシステムが操作
今回新たに判明したのは、ACCの詳細が主。ACC=アダプティブクルーズコントロールとは、従来のクルーズコントロールに車速や車間距離の調整機能がついたものだ。前の車両が加速すればそれに合わせて自動で加速し、減速すれば自動で速度を落として車間距離を保ってくれるのだ。ライダーではなくシステムがスロットルとブレーキをコントロールするが、それぞれ既存の電子制御スロットルとABSを有効活用している。レーダーの情報を活用する制御ソフトを開発することで、ACCが利用可能となるのだ。
30㎞/hまでは自動で減速してくれる
気になるのはどこまで自動でやってくれるか? という点だろうがこれは原則として採用するメーカーが設定する領域だ。ただし現状の基本形ではクルーズコントロールの速度設定は任意。加速では100㎞/hに設定すれば100㎞/hまで、110㎞/hにすれば110㎞/hを上限に前車を追走する。そして減速は30㎞/h以下になるとライダーにコントロールを戻すという設定で、その際にはアラート等で知らせてくれるという。つまり歩くような渋滞ではACCは機能しないということになるのだが、転倒のリスクなどを考慮するとこれは仕方ないことだろう。ちなみに前車とは1.8秒の車間になっている。
レーダーセンサーは第一世代という位置づけ
2輪車向け先進安全システムのレーダーを使用したライダーアシスタンスシステムは、プロジェクトマネージャーのトーマス・マウラー氏によると第一世代という位置づけになるという。将来的には超音波センサーからレーダーに移行した状況認識機能がさらに進化し、より高度化したライダーアシスタンスに発展することも考えられるだろう。ただし、マウラー氏は安全性を高めることがバイクの楽しさに影響してしまうようなことはないとも語る。ボッシュのモーターサイクル&パワースポーツ部門の開発者たちもまたライダーで、2輪車は安全とともに「fan」であることが最も重要だと強調する。
取材協力:ボッシュ株式会社
撮影:八百山ゆーすけ/編集部