
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:磯部孝夫 ●外部リンク:TASTE CONCEPT MOTOR CYCLE
エンジンが暖まり、キャブレターのエンリッチナーノブを戻せば、アイドリングが低い回転で落ち着く。インジェクション化した2007年式以降はこうした手間は要らなくなった。
そしてアクセルを大きく開け、アグレッシブに走らせると、そのネーミングが示す通りスポーツスターのスポーティーさ、運動性能の高さが際立ってくる。
1957年に誕生したXLスポーツスターは、当時高性能を誇った英国車に対抗するため、OHV化されると同時に、生まれながらにして高回転化に有利な“4カム”をKモデルから受け継ぎ、1970年代にはフラットトラックレーサーへと昇華していく。そのとき身にまとったのが、H-Dレーシングオレンジであり、スポーツスターにこそふさわしいカラーリングだ。
今回乗ったスポーツスターは、ワイドなXRバーであったり、シートカウルなど、そうしたレーシングスピリットを感じるカスタムが施されている。
気持ちが昂ぶり、コーナーを駆け抜けるのもより爽快だが、高回転でのバイブレーションは容赦なく全身へ伝わってくる。不快な微振動を解消するには、エンジンにカウンターバランサーを入れる方法もあるが、ハーレーダビッドソンはゴムブロックを入れるラバーマウントを選び、車体の剛性アップを図った。
しかし、2003年式以前のリジッドマウントならではのソリッドで荒々しい硬質な振動は、現代のオートバイと比較すればデメリットとして評価されるものであるはずだが、「これぞスポーツスター」と思わせる不思議な魅力があり、心を鷲掴みにされるファンも少なくない。筆者もまたそのうちのひとりだ。
車体が軽く、コントロール性に長けることも気付かされる。スペック的には2004年式以降のモデルより30kgも軽量だ。
シャシーの剛性不足は否めないものの、エンジンとの調和を考えれば、これはこれでいいと思えるもので、限界が来てはアクセルを戻すという、ある意味で健全なやりとりをオートバイと交わすことになる。シフトチェンジのタッチは褒められたものではなく、逆にいえば、高年式車がいかに洗練されていたかがわかる。
そして、スタンダードバイクとして、日常の街乗りからツーリングまで幅広く使える大らかでゆったりとしたフレンドリーさがある一方で、熱きレーシングスピリットを根源に宿らせ、ロードスターの資質も持ち合わせているのがスポーツスターだと再確認できた。
軽快なハンドリングは、長きにわたり熟成されたディメンションがもたらすもので、ニュートラルでクセがない。
フロント19インチに細身のタイヤを履く、スポーツスターの標準的な足まわりは、唐突なグリップの変動やイン側に巻き込まれたり振られる心配もなく、路面からの反応に対して穏やか。前輪が落ち着いていて、コーナーでもアクセルを開けるのにためらう必要がない。
エンジンフィーリングについて、大らかさが扱いやすさを感じると先述したが、それはハンドリングにも言えることで、過敏であったり神経質さがなく、荒れた路面や雨天時にも対応しやすい。
オールマイティという性格は、突出した何かがあるわけではなく、こうしたトータルバランスがもたらすもので、だからこそ多くの人にスポーツスターは受け入れられるのだ。伝説にするにはまだ早い!
XR750レプリカともいえるカスタムは、スポーツスターによく似合う。2本出しのマフラーは、フラットトラックレーサーでは左側に配置されるが、スーパートラップは写真の通り右にレイアウト。軽快なテールエンドを演出するシートカウルともジャストマッチしている。2000年頃に全盛を極めたスポーツスターカップをはじめ、サーキット走行を愉しむスポスタユーザーは少なくなかったが、ファイナルギヤを変更するのにチェーン化はマストであった。試乗した車輌は2台とも、ミスミエンジニアリングのローターとブレンボキャリパーで足まわりも強化済みだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ハーレーダビッドソン専門誌『ウィズハーレー』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
ローライダーST:結晶塗装を巧みに用いて、とことんブラックにこだわった ローライダーSTをベースに、ダイナを意識したクラブスタイルに仕上げた。ラッキーデイブスのサンディエゴバーは高さ16インチと迫り上[…]
荒くれ者の圧倒的パワー。ワイドオープンの一撃は計り知れない!! 大排気量化が進むハーレーダビッドソンの心臓部・ミルウォーキーエイト。新車から搭載されるストック状態でも117キュービックインチ=1923[…]
北の大地にてブルスカ前哨戦 ライダーが交流する場を。もっと自由に楽しく! ファッションや音楽、ローカルフードなど、誰でも楽しめるコーナーがたくさん用意されるイベント「ブルースカイミーティング™️」が、[…]
「すべてのユーザーに寄り添う」ハーレーダビッドソン春日部 ハーレーダビッドソンを買おうとする時はもちろんだが、むしろディーラーとの付き合いは購入後の方が長くなるもの。そして「すべてのユーザーに寄り添う[…]
今年は4日間通して最高の天候に恵まれて開催! 「コヨーテキャンプミーティング」の主催は、群馬県太田市にハーレーのカスタムショップを構える遠藤自動車サービス。創業が1974年という老舗で、主に扱う車両は[…]
最新の関連記事(新型バイク(外国車/輸入車))
元気溌剌350か、上質感ある500か!! ウィズハーレー編集部では2023年の秋、X350の日本市場導入が発表されたのと同時に購入を決意。ハーレーダビッドソン川口にて予約を入れた。 「Vツインではない[…]
ベスパ LX 125 ■空冷4ストローク単気筒SOHC3バルブ 124cc 10.6ps/7250rpm シート高785mm 車重120kg ●価格:46万2000円 ●色:ユーフォリコライラック(新[…]
チャンピオンマシンからダイレクトにフィードバック トプラック・ラズガットリオグルの手により2024年のスーパーバイク世界選手権でチャンピオンを獲得したマシン、それがBMWモトラッド「M1000RR」だ[…]
ビモータの工房があるイタリアの都市「リミニ」をその名に冠する Ninja ZX-10RRのエンジンを搭載したビモータ製スーパーバイクが、ついに正式発表された。すでにスーパーバイク世界選手権を走っている[…]
”最高”のスピードトリプルが登場 スピードトリプル1200RXは、世界限定1200台のみ生産予定。2025年1月に発表されたスピードトリプル1200RSからさらにアップデートされており、「究極のスピー[…]
最新の関連記事(カスタム&パーツ)
低音域で重厚感のあるサウンドを実現 軽快なスポーツライディングと都会的なデザインが融合したX-ADVに、IKAZUCHIの存在感とパフォーマンスをプラス。 純正のマフラーは車体に溶け込むような控えめな[…]
TSRのEWCレーサーをイメージさせるCBR250RR用スリップオン 2023年の世界耐久選手権(EWC)からコラボレーションを開始した「F.C.C. TSR Honda France」と「アールズ・[…]
構造もデザインも新設計! アールズ・ギアでは、すでにホンダGB350/S用のスリップオンマフラーを販売しているが、よりクラシックテイストのGB350Cがラインナップに追加されたことを受け、C専用のマフ[…]
CB1300SF/SB“ファイナルエディション”としての存在感をもっと強く! 今回、CB1300SF/SBファイナルエディション向けにラインナップされたマフラー/ステップ/ドレスアップパーツなどには、[…]
CBR650R&CB650Rをもっと楽しく、ジェントルに! マフラーカスタムは出力特性を向上させるもの。そんなイメージを抱いている方はとても多いと思います。しかし、近年のバイクはノーマルでも十分パワフ[…]
人気記事ランキング(全体)
コーデュラ(R)ユーロ3Dメッシュジャケット:プロテクションと通気性を両立 ライダーの安全と快適を追求した一着。腕部分には耐摩耗性に優れたコーデュラ(R)素材を採用。万が一の転倒時にもダメージを軽減す[…]
ホンダ GB350S カスタムコンテストが欧州で開催 ホンダが欧州で開催した正規ディーラー向けカスタムコンテスト「Honda Garage Dreams Contest」で、スペインのHONDA MO[…]
SHOEIは、2025年5月9日に東本昌平のイラストをSNSで公開。このとき「WYVERN(ワイバーン)」を被っているライダーが唐突に現れたことから、もしや復活ではとの噂が立ったが、2025年6月2日[…]
スズキではレアだった並列2気筒は、GSX-8Sの遠い先祖かも? 今回ご紹介するスズキGR650は1983年3月30日にデビューしました。 1983年といえば、日本のバイク史に記憶される年号のひとつと思[…]
予選はCBR1000RR-RとCBR600RRがトップタイムだったが…… 今年のマン島は、予選ウィークがはじまった5月26日から雨が降らない日が一日もない、悪天候に見舞われた。そのため予選はことごとく[…]
最新の投稿記事(全体)
【受注期間限定】SHOEI「EX-ZERO」新色モスグリーン 「EX-ZERO」は、クラシカルな帽体デザインにインナーバイザーを装備し利便性に優れる一方で、着脱式内装システムや、万一の際にヘルメットを[…]
PROSPECを謳い一人称カタログで語る自信のほど! ’80年代の2ストレプリカ時代を知るライダーは、’88のNSR250Rを史上最強のマシンに位置づけるファンが多数を占める。 実はホンダにとって2ス[…]
運を味方につけたザルコの勝利 天候に翻弄されまくったMotoGP第6戦フランスGP。ややこしいスタートになったのでざっくり説明しておくと、決勝スタート直前のウォームアップ走行がウエット路面になり、全員[…]
25SJ-1 レザージャケット:普段使いもスマートに決まる、大人のレザージャケット ふだん使いにも最適な、シンプルでスタイリッシュなレザージャケット。バイクに乗る際はもちろん、街着としてもコーディネー[…]
モトラのデザインエッセンスが令和に登場 バブルが弾ける前、空前のオートバイブームが訪れた1980年代には現在では思いもよらぬほど多種多様なモデルが生まれた。ホンダからは、トールボーイデザインの新しいコ[…]
- 1
- 2