
ハーレーダビッドソンの2023年モデルをまるごと紹介、試乗レポートもお届けする。今回レポートするのは、デビュー以来爆発的ヒットとなっているローライダーSTとローライダーSだ。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:磯部孝夫 ●外部リンク:ハーレーダビッドソンジャパン
ローライダーST:オリジナリティあふれるスタイルと総合力高いバランスの良さ
デビューして以来、入手困難が続くほどの爆発的ヒットとなっているローライダーST。人気の秘訣はなんといっても迫力満点なフロントカウルにあり、唯一無二といえるボリューミーなスタイルがファンを魅了してやまない。
【HARLEY-DAVIDSON FXLRST LOW RIDER ST】 走りを重視するアグレッシブなライダーに向けたモデルであることを示すかのように、車体色は2つしか設定されていない。デビューイヤーの2022年はベーシックとなるビビッドブラックとガンシップグレーであったが、’23年式ではホワイトサンドパールが登場。この車体色もまた人気を呼んでいる。初代FXSローライダーを想起させる「HARLEY-DAVIDSON」のタンクグラフィックスは、好評のまま継続となった。
ルーツはショベルヘッドエンジンを積んでいた1983年のFXRTスポーツグライドに遡ることができる。心臓部がエボリューションに切り替わっても、丸みを帯びたグラマラスなフロントエンドのまま、その頭でっかちなシルエットは1990年代半ばまで健在であった。しかし当時はまだ斬新すぎたのだろう、不人気のまま姿を消してしまっている。
ハーレーダビッドソンの歴史を振り返れば、これは珍しいことではない。2眼ヘッドライトを内蔵するシャークノーズフェアリングも1980年のツアーグライドでデビューして以来、人気を集めることはなかった。2000年を間近に再登場したロードグライドで一躍脚光を浴び、いまやバットウイングフェアリングと双璧を成すハーレーを代表する顔となっているのだから、じつに興味深いところだ。
RTカウルもまたカスタムシーンから復活を待ち望む声が上がり、クラブスタイルを決定づけるアイコンとなった。シャークノーズフェアリングと共通して言えることは、どちらも強烈すぎるほどの個性があり、真似のできないオリジナリティを持ち合わせていることだ。
そして満を持して開発されたニューフェアリングがまた文句のつけようのない出来栄えであり、新たな伝説のはじまりを予感させるものであったから、ファンは鳥肌が立ち歓喜に沸いた。
往年のスタイルをオマージュしつつも、細部の作り込みはまるで違う。しかし誰が見てもRTカウルの進化版とわかるもので、伝統のフォルムを踏襲しながら最新のエアロダイナミクスを持ち、優れたウインドプロテクション効果を発揮する。
トールハンドルは見た目こそグリップ位置が高そうだが、実際には両腕を伸ばした自然な位置にあり、リラックスのできるライディングポジションとなる。上半身がわずかに屈むゆったりとした乗車姿勢で、ハンドル位置も広すぎない。ミッドステップはスポーティな走りへ誘われるかのようで、足つき性も良好。〈身長175cm/体重65kg〉
実際に走り出すと、ハンドリングの軽快性に舌を巻く。見た目では、いかにも重たそうなフロント周りだが、操作フィールは拍子抜けするほど俊敏だ。
これはカウルをフレームマウントしていることによるもので、フェアリング(ヘッドライトやメーター類を含む)はステアリング機構に一切干渉していない。ステア特性で、非常に有利となっている。
倒立フォークは初期荷重からよく動く味付けで、レースマシンのような神経質さは見当たらない。フロント19インチはおおらかな応答性で、クイックすぎてシビアなんてこともない。
アクセルを積極的に開けて持ち味の加速フィールを堪能できるから痛快としか言いようがなく、右手のグリップ操作は大胆になりがちだ。
どの速度域からもダッシュは力強く、潤沢なトルクでぐいぐい速度を上げていく。2000ccに近いミルウォーキーエイト117の最高出力は105PSとST=スポーツツーリングと呼ぶに相応しいもので、高い運動性能を発揮しつつ、ロングライドもそつなくこなしてしまう。
ハイスピードレンジで感じるのはウインドプロテクション性能の高さで、フェアリングに守られながらのクルージングは快適そのもの。オートクルーズコントロールも搭載され、グランドアメリカンツーリングにカテゴライズされる上級モデルたちともひけをとらず、同じペースで走り続けられる。総合力で見ても、死角はどこにも見当たらない。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ハーレーダビッドソン専門誌『ウィズハーレー』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
2023年最初のチャプターツーリングは“ナマズのハンバーガー”を食らう?! 真冬のツーリング計画は、その目的地とルートの選択が大変だ。ハーレーダビッドソン埼玉花園店の2023年のチャプターツーリングの[…]
国籍/年齢/性別を問わず、さまざまなオーナーが加入するH.O.G. ハーレーオーナーズグループ(H.O.G.)は1983年にスタートして今年で40周年。当初はミルウォーキー本社で始まった小さなライダー[…]
リジッドフレーム最終年のパンヘッドは、博物館で保管されていたリアルポリス! この車両は、アメリカ・ミズーリ州セントルイス警察で使われていた正真正銘のポリスバイクで、走行距離は1万4000マイル(2万2[…]
ハードな見た目でソフトな乗り心地。ソフテイルのリミテッドエディション 創業者たちの家系による純血主義を貫いてきたハーレーダビッドソンだったが、企業買収が盛んになった1960年代後半、経済状況の低迷から[…]
バガーレーサー譲りのモーター ハーレーダビッドソンの純正エンジン「スクリーミンイーグル135」は、ボア109.5×ストローク158.75mm(4.31×4.625インチ)で、排気量はじつに2212cc[…]
最新の関連記事(ハーレーダビッドソン)
世界に名高いカスタムビルダーも! カスタムショーに新作を持ち込めばアワード常勝のカスタムビルダーたちがやってくる! 世界を舞台に活躍し、今年で25周年を迎えた「LUCK Motorcycles」と、大[…]
ナショナルハーレーデー:世界中のハーレー乗りと一緒に! ハーレーダビッドソンの故郷・アメリカはもちろん、ヨーロッパでも豪州でもアジアでも、世界中のハーレー乗りたちが一斉に走る日、それが「ナショナルハー[…]
FXLRSローライダーS:パワーユニット強化で走りはさらにアグレッシブ 許容リーンアングルが深めに設定されるなど、スピードクルーザーとして絶対的な人気を誇る「ローライダーS」 。2025年式は最高出力[…]
FLHRロードキング[2002年式] ハーレーダビッドソンが1999年に満を持してリリースしたツインカムエンジン。従来(エボリューション)までのワンカム構造を改め、カムシャフトを2本配置。伝統のOHV[…]
FXLRSTローライダーST:強力なパワーユニットを積みますます走りがスポーティー!! ローライダーSTが纏うクラブスタイルを象徴する独創的なフェアリングは、1980〜90年代半ばにラインナップされ、[…]
最新の関連記事(新型クルーザー)
日本では400だが、グローバルでは500(451ccエンジン)のエリミネーター 欧州でエリミネーター500/SEに新色が登場した。日本仕様でプラザエディションとしてラインナップされる『メタリックインペ[…]
71カ国で認められた気鋭のバイクブランド ゾンテスは、2003年に中国・広東省で設立された「広東大洋オートバイ科技有限公司」が展開するブランドだ。彼らは総投資額26億人民元、従業員3600名という巨大[…]
ニューカラー採用、スペックや“カワサキケアモデル”に変更なし カワサキがアーバンクルーザー「バルカンS」の2026年モデルを発売する。2022年モデルの発売後、コロナ禍もあって国内導入が一時中断されて[…]
FXLRSローライダーS:パワーユニット強化で走りはさらにアグレッシブ 許容リーンアングルが深めに設定されるなど、スピードクルーザーとして絶対的な人気を誇る「ローライダーS」 。2025年式は最高出力[…]
FXLRSTローライダーST:強力なパワーユニットを積みますます走りがスポーティー!! ローライダーSTが纏うクラブスタイルを象徴する独創的なフェアリングは、1980〜90年代半ばにラインナップされ、[…]
人気記事ランキング(全体)
新たな時代の「角Z」:スタイルと操案の狭間で揺れたZ1-Rの人気 Z1からZ1000までリファインを重ねて完成度を高めた“丸Z”だが、1970年代後半にはスズキのGS750/1000のようなライバル車[…]
取り付けから録画までスマートすぎるドライブレコーダー ドライブレコーダーを取り付ける際、ネックになるのが電源確保のための配線作業だ。バイクへの取り付けともなると、専門知識や工具、あるいは高めの工賃が必[…]
2ストGPマシン開発を決断、その僅か9ヶ月後にプロトは走り出した! ホンダは1967年に50cc、125cc、250cc、350cc、そして500ccクラスの5クラスでメーカータイトル全制覇の後、FI[…]
3つの冷却プレートで最大-25℃を実現 2025年最新モデルの「ペルチェベスト」は、半導体冷却システムを採用し、背中に冷たい缶ジュースを当てたような感覚をわずか1秒で体感できる画期的なウェアです。小型[…]
フレームまで変わるモデルチェンジ、かつリヤキャリアを新装備してたったの+6600円 スズキは、グローバルで先行発表されていた新型「アドレス125」の国内導入を正式発表。基本スタイリングは継承しながら、[…]
最新の投稿記事(全体)
日本では400だが、グローバルでは500(451ccエンジン)のエリミネーター 欧州でエリミネーター500/SEに新色が登場した。日本仕様でプラザエディションとしてラインナップされる『メタリックインペ[…]
仕事を通じてわかった、足を保護すること、足で確実に操作すること 今回は、乗車ブーツの話をします。バイクに乗る上で、重要な装備の一つとなるのが乗車ブーツです。バイクの装備といえばヘルメットやジャケット、[…]
3色すべてホイールカラーも異なる カワサキは欧州でZ650RSのニューカラーを発表。カラーバリエーションの全てが新色に置き換わり、黒ボディにレッドストライプ&レッドホイールのエボニー、メタリックブルー[…]
欧州仕様に準じた仕様でKYB製フロントフォーク、ウイングレット、ブレンボキャリパーなどを採用するR1 2026年シーズンをヤマハ車で戦うライダーに向け、サーキット走行専用モデルの新型「YZF-R1 レ[…]
メーカー自体が存在しない絶版車のメンテやレストアは難しい 日本のバイクメーカーは今でこそ4社に集約されていますが、1950年代には大小含めて数十社のメーカーが林立していました。第二次世界大戦で疲弊した[…]