●文:ライドハイ編集部(根本健) ●写真:大谷耕一
ビッグシングルのような低中速パンチ&ジェットフィールの高回転!
Part1で触れたように、鈴鹿のバックストレートで2速も6速も同じ加速Gという、経験したことのない哮(たけ)り狂ったダッシュに怖れを感じつつ、もっともインパクトが大きかったのが、強大なトラクション。中速域はもちろん、コーナーで2~3速ほど上のギヤへ放り込んだ街乗り回転域でさえ、開ければ路面を蹴って曲がっていく。
4ストビッグシングルのオフロードモデルで、ターンの出口でガバッと開けると、ドバーッとテールが振り出しそうでも、後輪が石を跳ね飛ばしながら必要な噛み込みで、前に進む旋回加速へと変換してくれる、あの瞬発力とグリップするトラクションがあるのだ。
これが、オーバルピストンのポテンシャル…。NR500で、2ストの500ccに負けずブチ抜くために必要な130psに対して、2万rpm上限で得るバルブ面積の合計がどうにも不足する(丸い燃焼室に欲しい面積の丸いバルブを並べると、大径化は○が重なり、小径化で多バルブにした配置でもかえって使わない面積が増えてしまう)。
それを、ある朝の通勤で信号機を見たとき、長円になら収まるかもと閃き、オーバルに吸気4バルブ排気4バルブを横に並べる気筒あたり8バルブにしてみたら、計算上は目標出力に達すると結論づけて、チャレンジがスタートした由。
これによって増える吸気量は、20%近く。言い換えれば、排気量が20%大きなエンジンのパフォーマンスを得られることになる。
750ccなら900ccクラス、そりゃ低い回転域の力強さが違って当然だ。というより、この多バルブと燃焼室がコンパクトな組み合わせは、最大出力でひとまわり大きな排気量と同じどころか、レスポンスが瞬発的で燃焼によるダッシュ力が、これまでにないエンジン特性を生んでいる…。
そんな風に伝わってくるポテンシャルの発見に、胸が破裂しそうなほどドキドキする“ときめき”を感じていた。
中速のトルク、「経験上すぐ消せるのでご安心を」の意外な言葉!?
マシンから降りてまず、6速での回転数を知らせると、300km/hオーバーと告げられる。そして、興奮気味に経験のない中速域の力強さを称賛したら、「あ~、それ邪魔ですよネ。散々経験してるので、すぐ消せますのでご安心を」と即答された。
エッ!? せっかくあるトラクションに好都合な力強さ、しかも開けてからのトルキーな追従が曲がれる特性で楽しくて仕方なかったので、「なんで消すとか言いだすの?」と問いただすと、「NR500では、パーシャル区間が安定せず、立ち上がりで2次曲線的に加速しない」とライダーからの不満が多く、そこをなだらかに繋ぐ吸排設定からキャブレーションまで、ノウハウをたっぷり積み上げたとのこと。
何年も前の500ccのグランプリはともかく、ビッグバイクはそういった乗り方をしないし、このプロジェクトは市販車で必要になるアレンジもテーマのひとつ、このツーリングしやすいポテンシャルをむしろ重点的に伸ばしましょう!と力説した……
※本記事は2023年2月1日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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