![ホンダNR750 [名車バイクレビュー]](https://young-machine.com/main/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
●文:ライドハイ編集部(根本健) ●写真:大谷耕一
ビッグシングルのような低中速パンチ&ジェットフィールの高回転!
Part1で触れたように、鈴鹿のバックストレートで2速も6速も同じ加速Gという、経験したことのない哮(たけ)り狂ったダッシュに怖れを感じつつ、もっともインパクトが大きかったのが、強大なトラクション。中速域はもちろん、コーナーで2~3速ほど上のギヤへ放り込んだ街乗り回転域でさえ、開ければ路面を蹴って曲がっていく。
4ストビッグシングルのオフロードモデルで、ターンの出口でガバッと開けると、ドバーッとテールが振り出しそうでも、後輪が石を跳ね飛ばしながら必要な噛み込みで、前に進む旋回加速へと変換してくれる、あの瞬発力とグリップするトラクションがあるのだ。
これが、オーバルピストンのポテンシャル…。NR500で、2ストの500ccに負けずブチ抜くために必要な130psに対して、2万rpm上限で得るバルブ面積の合計がどうにも不足する(丸い燃焼室に欲しい面積の丸いバルブを並べると、大径化は○が重なり、小径化で多バルブにした配置でもかえって使わない面積が増えてしまう)。
それを、ある朝の通勤で信号機を見たとき、長円になら収まるかもと閃き、オーバルに吸気4バルブ排気4バルブを横に並べる気筒あたり8バルブにしてみたら、計算上は目標出力に達すると結論づけて、チャレンジがスタートした由。
これによって増える吸気量は、20%近く。言い換えれば、排気量が20%大きなエンジンのパフォーマンスを得られることになる。
750ccなら900ccクラス、そりゃ低い回転域の力強さが違って当然だ。というより、この多バルブと燃焼室がコンパクトな組み合わせは、最大出力でひとまわり大きな排気量と同じどころか、レスポンスが瞬発的で燃焼によるダッシュ力が、これまでにないエンジン特性を生んでいる…。
そんな風に伝わってくるポテンシャルの発見に、胸が破裂しそうなほどドキドキする“ときめき”を感じていた。
中速のトルク、「経験上すぐ消せるのでご安心を」の意外な言葉!?
マシンから降りてまず、6速での回転数を知らせると、300km/hオーバーと告げられる。そして、興奮気味に経験のない中速域の力強さを称賛したら、「あ~、それ邪魔ですよネ。散々経験してるので、すぐ消せますのでご安心を」と即答された。
エッ!? せっかくあるトラクションに好都合な力強さ、しかも開けてからのトルキーな追従が曲がれる特性で楽しくて仕方なかったので、「なんで消すとか言いだすの?」と問いただすと、「NR500では、パーシャル区間が安定せず、立ち上がりで2次曲線的に加速しない」とライダーからの不満が多く、そこをなだらかに繋ぐ吸排設定からキャブレーションまで、ノウハウをたっぷり積み上げたとのこと。
何年も前の500ccのグランプリはともかく、ビッグバイクはそういった乗り方をしないし、このプロジェクトは市販車で必要になるアレンジもテーマのひとつ、このツーリングしやすいポテンシャルをむしろ重点的に伸ばしましょう!と力説した……
※本記事は2023年2月1日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
1971年の東京モーターショーに突如出現した750cc2スト並列4気筒、YZR500の4気筒マシン・デビュー2年前! いまでもファンの間で幻のドリームマシンとして語り継がれるヤマハGL750。その衝撃[…]
凛としたトラディショナルをカジュアルクラシックで訴求! ヤマハが1992年にリリースしたSRV250は、1988年のXV250Viragoで開発した空冷250Vツインを搭載、感度の高いトラディショナル[…]
CB1000 SUPER FOUR BIG-1の400cc版でスタート、1999年のHYPER VTEC搭載で独り舞台に! 2019年モデル発表後、期間限定で2022年まで販売され惜しまれつつホンダの[…]
最後の250cc4気筒レプリカは、扱いやすい動力性能とハンドリング追求で究極を目指した! ホンダが1960年代に世界GPを制覇した原動力はマルチシリンダー(多気筒化)。125cc5気筒や250ccの6[…]
意表をついたZ1-RデザインがカワサキZの新しいトレンドに! 1972年に世界で量産されていなかった900ccのDOHC4気筒で大成功を収めたカワサキ。 しかし王座に君臨していられた時期が長く続いたわ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車 | ホンダ [HONDA])
モトラのデザインエッセンスが令和に登場 バブルが弾ける前、空前のオートバイブームが訪れた1980年代には現在では思いもよらぬほど多種多様なモデルが生まれた。ホンダからは、トールボーイデザインの新しいコ[…]
2007年モデル概要:平成19年国内排出ガス規制に適合しつつ進化 二度目のフルモデルチェンジを果たしたのが、この2007年モデル。動力性能と車体の取り回しやすさの向上を目指し、それまでのモデルと比べて[…]
ホンダCBR600RR(2020) 試乗レビュー 排気量も気筒数も関係ない、コイツがいい! 仕事柄、しばしば「スーパースポーツが欲しいんですけど、リッタークラスとミドルクラスのどっちがいいと思います?[…]
CB1000 SUPER FOUR BIG-1の400cc版でスタート、1999年のHYPER VTEC搭載で独り舞台に! 2019年モデル発表後、期間限定で2022年まで販売され惜しまれつつホンダの[…]
2005年モデル概要:大幅な軽量化で乗りやすさと運動性能向上 2003年7月の発売以来、安定した走りと高いポテンシャルによって、サーキットのみならず市街地でも快適なライディングを実現したスーパースポー[…]
最新の関連記事(ネモケンのこのバイクに注目)
新型4気筒を待ち焦がれていたホンダファン CBにXが加わった車名のCBX400Fは、1981年10月にデビュー。バイクブーム真っ只中で爆発的な人気を誇ったホンダの切り札となったマシンだ。 実はカワサキ[…]
ボクサーエンジンの誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば、2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカーだ。[…]
特別な存在をアピールする“衝撃”=IMPULSEと名付けたバイク スズキには、1982年から400ccネイキッドのシリーズに「IMPULSE(インパルス)」と銘打ったバイクが存在した。 IMPULSE[…]
250ccの4気筒はパフォーマンスで不利。それでも届けたかった4気筒の贅沢な快適さ 250ccで4気筒…。1982年当時、それは国産ライバルメーカーが手をつけていないカテゴリーだった。 1976年にD[…]
一般公道は乗りやすさ最優先、そのコンセプトを後方排気でピュアレーシーへ ヤマハは、1980年にレーサーレプリカ時代の幕開けともいうべきRZ250を発売。一躍250ccをビッグバイクを凌ぐパフォーマンス[…]
人気記事ランキング(全体)
コーデュラ(R)ユーロ3Dメッシュジャケット:プロテクションと通気性を両立 ライダーの安全と快適を追求した一着。腕部分には耐摩耗性に優れたコーデュラ(R)素材を採用。万が一の転倒時にもダメージを軽減す[…]
ホンダ GB350S カスタムコンテストが欧州で開催 ホンダが欧州で開催した正規ディーラー向けカスタムコンテスト「Honda Garage Dreams Contest」で、スペインのHONDA MO[…]
SHOEIは、2025年5月9日に東本昌平のイラストをSNSで公開。このとき「WYVERN(ワイバーン)」を被っているライダーが唐突に現れたことから、もしや復活ではとの噂が立ったが、2025年6月2日[…]
スズキではレアだった並列2気筒は、GSX-8Sの遠い先祖かも? 今回ご紹介するスズキGR650は1983年3月30日にデビューしました。 1983年といえば、日本のバイク史に記憶される年号のひとつと思[…]
予選はCBR1000RR-RとCBR600RRがトップタイムだったが…… 今年のマン島は、予選ウィークがはじまった5月26日から雨が降らない日が一日もない、悪天候に見舞われた。そのため予選はことごとく[…]
最新の投稿記事(全体)
運を味方につけたザルコの勝利 天候に翻弄されまくったMotoGP第6戦フランスGP。ややこしいスタートになったのでざっくり説明しておくと、決勝スタート直前のウォームアップ走行がウエット路面になり、全員[…]
25SJ-1 レザージャケット:普段使いもスマートに決まる、大人のレザージャケット ふだん使いにも最適な、シンプルでスタイリッシュなレザージャケット。バイクに乗る際はもちろん、街着としてもコーディネー[…]
モトラのデザインエッセンスが令和に登場 バブルが弾ける前、空前のオートバイブームが訪れた1980年代には現在では思いもよらぬほど多種多様なモデルが生まれた。ホンダからは、トールボーイデザインの新しいコ[…]
そもそもなぜお尻は痛くなるのか? バイクでのロングツーリングは、お尻の痛みとの戦いともいえます。これは長時間の着座状態により、お尻の血管を圧迫することで血行不良を起こし、お尻の痛みにつながります。解消[…]
オイルひとつでエンジン特性が激変!! ヤマハ純正オイル「ヤマルーブ」。4ストロークエンジン用のオイルだけでもさまざまなグレードが用意されているが、いったいナニがどう違うのだろうか? はたして一般ライダ[…]