●文:モーサイ編集部(石橋知也)
1984年、鈴鹿8耐に付いた初めての冠スポンサーが“コカ・コーラ”だった
バイクファン/レースファンにとって夏の一大イベントといえば、鈴鹿8耐。今や当たり前のように感じられる「コカ・コーラ」がついたレースタイトル名ですが、8耐に冠スポンサーが付いたのは、1984年の第7回大会からです。
その正式大会名は「世界選手権シリーズ第2戦 “コカ・コーラ” ’84鈴鹿8時間耐久オートバイレース大会」(現在は「FIM世界耐久選手権“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース」)。
耐久レースは1980年から世界選手権となっていて、8耐も主要車両メーカーの母国レースとして、シリーズ中でも重要な1戦です。
その当時のGPや耐久レースの参戦マシンには、1970年代後半からスポンサーカラーも出てきてはいたものの、モータースポーツで冠スポンサーが付くレースはまだ少数でした。
コカ・コーラは1984年の8耐以前に、ジャパンスーパークロスの2大会の冠スポンサーとなっていました。元々コカ・コーラは個々のチームや個人にスポンサードすることはなく、スポーツイベントなど大会全体に協賛するのが会社の方針でした。
では、コカ・コーラはどうして8耐の冠スポンサーになったのでしょう。
日本コカ・コーラの中年営業マンが1981年の8耐で感動!
ストーリーは、1枚のチケットと1人の40代サラリーマンの感動から始まったのです。
永井豊さんは、日本コカ・コーラでスポーツイベントのスポンサー関連の仕事をしていました。そして知人からチケットをもらって、1981年8耐に出かけました。スポーツイベントのリサーチも仕事のうちでしたから。
「バイクのレースなんて暴走族の集まりだろうぐらいに思っていました。どうせロクなイベントじゃないし、その手のアンチャンが集まっているだけで…」後年、当時を振り返って永井さんは申し訳なさそうに語っていました。
けれども、スタートした瞬間から永井さんの先入観は崩壊していきます。53台一斉の咆哮は、優良外資系企業の中年サラリーマンの度肝を抜きました。
まだTT-F1が1000ccで、騒音規制も厳しくなかった時代。空冷インライン4の図太い音は強烈でした。
スタートしてから、永井さんはコースのあちこちを回り、夕暮れに最終コーナーのアウト側にたどり着きました。鈴鹿サーキットは6kmコース。観客席を結ぶ通路を歩いて移動するだけでも相当の距離を歩いたはずです。
天気は晴れ。気温は30℃を軽く超え、炎天下。
もたれるように金網にへばり付いていると「なぜだか、突然泣けてきまして。男も40歳をすぎると簡単に感動しなくなるものです。それが目の前を走り去るマシンを見ているだけで、涙が出てくる。これはどうしたものかと」
まだ最終コーナーにシケインはなく、観客席の金網からコースまでの距離が近かった頃です(シケイン設置は1983年から)。
手前の左130Rコーナーを抜け、下りながらグランドスタンド前のメインストレートに抜ける右コーナーが最終コーナーです。
4速もしくは5速の高速コーナーで、全開で抜けるには度胸と腕とマシンの仕上がりが試されました。大迫力…と同時に1コーナーに消えていくマシンとライダーの後ろ姿は、夕暮れの淡い青さも手伝って、はかなさも入り混じっていました。
先入観と現実のギャップがあまりに大きく「本当にあの時の感動はたとえようもないものでした」……
※本記事は2022年8月30日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
一般人でも許される現行犯逮捕とは? 「逮捕」とは、犯罪の容疑がある人の身柄を強制的に拘束する手続きです。 原則として、事前に裁判官の審査を受けて許可を取り、令状の発付を得てからでなければ、たとえ警察で[…]
大型トラックの渦=乱流と負圧域でバイクを吸い寄せる 大型トラックでもバイクでも、空気の塊を突き破るように走っています。そのとき空気がキレイに車体に沿って流れてくれればいいのですが、そううまくは行かず、[…]
「カワサキメグロ製作所」倒産後、カワサキ明石工場で生産されたメグロ 大正13年(1924年)に操業を開始した目黒製作所。戦前から純国産の500cc単気筒エンジンを搭載した二輪車を生産し「国産大型車の名[…]
キャストでもスポークでもない独自構造のホイール 国産の2輪車にキャストホイール車が登場し始めたのは、1970年代後半のこと。当初は一部の高級モデルにのみ採用されたこともあり、ワイヤースポークとは違う新[…]
イラスト入りのカントリーサイン カントリーサインとは、正式には「市町村案内標識」といい、町と町との境界に設置されています。 市町村案内標識自体は日本各地にありますが、そのほとんどが都道府県章や市町村章[…]
最新の関連記事(鈴鹿8耐)
ポップ吉村は優しくて冗談好きのおじいちゃんだった ヨシムラの新社長に今年の3月に就任した加藤陽平は、ポップ吉村(以下ポップ)の次女の由美子(故人)と加藤昇平(レーシングライダーでテスト中の事故で死去)[…]
2023年の世界チャンピオン、2024年は総合2位の『Yamalube YART Yamaha EWC Official Team』 ヤマハモーターヨーロッパ(YME)とヤマハオーストリアレーシングチ[…]
11月以降の開催ならGPライダーも参戦しやすいかも 遅ればせながら、鈴鹿8耐はHRCが3連覇を成し遂げましたね。個人的な予想では「YARTが勝つかな」と思っていたので、HRCの優勝はちょっと意外でした[…]
「GSX-R1000Rは、現行モデルが最後とは誰も言っていない」 2022シーズン末をもってMotoGPやEWC(世界耐久選手権)のワークス活動を終了したスズキは、レースグループも解体。もうスズキのワ[…]
Team HRC【予選3位/決勝1位】 4位までが従来の最多周回数記録を超えた決勝レース 密度の高い、緊張感のあるトップ争いだった。といっても激しいバトルになることはあまりなく、淡々とノーミス、ノート[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
ライダーを魅了してやまない「ハイパーVTEC」 CB400SF(スーパーフォア)に採用されていることでも有名な、バルブ制御システム「ハイパーVTEC(HYPER VTEC)」。この口コミを検索してみる[…]
夏場はサイドスタンドがアスファルトにめり込む危険性あり!いったいどういうこと? 駐車場などに使われている一般的なアスファルトについて、その軟化点は47.0〜55.0℃と言われていますが、夏場の強烈な直[…]
「コスプレとバイク」本編 今回のバイク:Vストローム250とNIKEN Vストローム250はスズキの250㏄クラスのアドベンチャースタイルのバイクです。ガソリンが17L入るタンクやフロントのスクリーン[…]
バイクのハンドルに荷物をかける行為は交通違反? じつは、ハンドルにレジ袋/カバンなどを引っかけて運転する行為は、明らかな交通違反です。 道路交通法第55条第2項には、「運転視野やハンドル操作などを妨げ[…]
キャストでもスポークでもない独自構造のホイール 国産の2輪車にキャストホイール車が登場し始めたのは、1970年代後半のこと。当初は一部の高級モデルにのみ採用されたこともあり、ワイヤースポークとは違う新[…]
人気記事ランキング(全体)
小椋藍選手のファンならずとも注目の1台! MotoGPでは小椋藍選手が来季より移籍(トラックハウスレーシング)することでも注目のアプリリアから、新しいミドルクラスのスポーツモデルが登場した。欧州ではす[…]
電熱インナートップス ジャージタイプで使いやすいインナージャケット EK-106 ポリエステルのジャージ生地を採用した、ふだん使いをしても違和感のないインナージャケット。38度/44度/54度と、3段[…]
グローバル展開では『500cc』のほうが有利になる地域も ホンダ「GB350」シリーズといえば、直近ではクラシカル要素を強化したGB350Cも新登場し、走りのフィーリングまで変えてくるこだわりっぷりが[…]
125ccスクーターは16歳から取得可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限[…]
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことがわかった[…]
最新の投稿記事(全体)
トラコン装備で330ccの『eSP+』エンジンを搭載、スマホ連携5インチTFTメーターを新採用 シティスクーターらしい洗練されたスタイリングと、アドベンチャーモデルのエッセンスを高次元で融合させ人気と[…]
「BMW F900XR」3台を先行導入 BMWは、首都高速道路のバイク隊に向け「F900XR」を納入したことを発表。これは「「BMW F900XR POLICE仕様」をベースとしたものだ。 黄色いバイ[…]
マルチスマートモニターYUMIでバイクライフが激変! 待ちに待った開梱! 同梱物のチェック! まずは、中身の確認! シエルのマルチスマートモニターには2モデルあり、ドライブレコーダー、空気圧センサーが[…]
『ゲルザブウォーム シートカバー』とは? 『ゲルザブウォーム シートカバー』は、冬を快適に過ごすためのゲルザブR用の電熱シートカバーです。この商品は、寒さが厳しい季節でもライダーが心地よくツーリングで[…]
Vストローム250SX[59万1800円] vs Vストローム250[66万8800円] 2023年8月に発売された、スズキ自慢の油冷単気筒エンジンを搭載したアドベンチャーモデル「Vストローム250S[…]