
1985年3月発売のヤマハFZ400N。車名のNはネイキッド(Naked)の頭文字。カタログには、国産車で初めて「ネイキッド」の表現が出てきている。(タイトル写真)
●記事提供:モーサイ編集部 ●まとめ:モーサイ編集部・阪本 ●写真/カタログ:八重洲出版アーカイブ
国内のカウル認可後に生まれた、1980年代半ばのネイキッドたち
オンロードモデルの中で、定着して久しいネイキッド(英語のNAKED=裸という意味)というカテゴリー名。今では「カウルの付かないスタンダードなバイク」の総称のようになっているが、ならばカウルが国内認可されていなかった1970年代以前の国産車はすべてネイキッドになる。でも、ちょっと違和感がある。“ネイキッドの言葉が生まれたのは1980年代半ばで、カテゴリーとして定着したのは概ね1990年以降だから”なのだ。
レーサーレプリカブームと逆の潮流として、真のネイキッドブームが生まれた起点は、1989年登場のカワサキ・ゼファー(400)からと、よく言われている。この大ヒット以降、国内4メーカーはこぞってネイキッドモデルを開発するのだが、1980年代半ばにネイキッドの言葉が初めて使われてから約5年ほど、スポットライトが当たらずに退場した「ネイキッド」があったことは、あまり知られていない。
今回は、そんなブーム前夜に生まれた「元祖ネイキッド」たちを紹介しよう。
1989年4月発売のゼファー(400)。レーサーレプリカブーム全盛の中、カウルなしの懐古的なスタイルをニュージャンルマシンとアピールしたカワサキは、同車をノンカウルと表現しネイキッドの言葉を使っていないものの、ブームの立役者と言われる。Z400FXベースの空冷4気筒DOHC2バルブエンジンは高性能を狙わず、最高出力は46ps。当時価格52万9000円。
初期のネイキッドは、本家レーサーレプリカモデルの地味な廉価版だった
CBX400Fの後を受けて登場したホンダ・CBR400F(1983年)
CBX400Fの後継として、2年後に登場したCBR400Fは1983年12月発売。同車はネイキッドとは謳われていないが、レーサーレプリカからカウルを取ったような雰囲気はここから始まり、他社に影響を与えたと思われる。そして翌1984年にカウル付きのCBR400Fエンデュランス(下写真)を追加発売。CBX400F系空冷4発をベースにしつつ、回転に応じてバルブ作動数を変えるREVを採用したのが特徴。最高出力58psで、当時価格53万9000円。
国内のレースブームを受けて登場したカウル付きモデルのホンダCBR400Fエンデュランス(1984年)
ネイキッドという言葉が定着する前段として、「バイクがどうして”裸”なのか」に着目しよう。裸の対語として「ちゃんと着ているバイク」がなくては言葉の意味が成り立たないのだが、「着ているバイク」=カウル付きバイク、ということになる。そして、カウルが国内で認可されたのは、ホンダCBX400Fインテグラ(1982年)が初めて。これ以降、ホンダはカウル付きモデルに「インテグラ」のサブネームを付けて、VF400F、VT250Fでもカウル付きモデルを追加発売している。
ベースモデルを発売し、その後派生モデルでカウル付きを追加する展開をホンダは国内でしばらく続けたが、同時期に、他メーカーは最初からカウル付きを国内発売するようになった。そうした例がヤマハXJ750D(1982年)やレーサーレプリカの始祖となるスズキRG250Γ(1983年)で、カワサキはGPz400(1983年)を発売した。
新車の開発サイクルが早いのがこの時期の特徴だが、1984年に入るとホンダはカウル付きのレーサーレプリカNS250Rを投入し、カウルなしのNS250Fを同時発売。この時点でNS250Fはネイキッドと表現されておらず、NS250R自体が短命に終わったため注目されなかったが、初期の意味合いでのネイキッドの起源を、ここに求めることができよう。
1980年代半ば時点でのネイキッドは今より狭義で、カウル付きの本家(主にレーサーレプリカ)に対して、カウルなしの廉価版という位置づけだった。無論のことメーカーはそんな表現を使わなかったが、後に、気の利いた表現はないかということでひねり出されたのが、「ネイキッド」の言葉だったと思われる。
MVX250Fの後を受けて発売されたホンダの2ストレプリカNS250R(1984年)
スポーツ車にカウル付きが定着してきた1984年、ホンダは2ストレプリカのNS250Rを発売。先代MVX250F(同車に付くビキニカウルはカウルとは言わない。メーターバイザーの呼称だった)でのトラブルと販売不振を経て、早くも1年でバトンを受けたNSは、カウル付きのRとカウルなしでスチールフレーム&スイングアーム採用のNS250F(写真下)を同時発売。ネイキッドの言葉は使われてなかったものの、主力機に対するカウルなしの廉価版として初の例と言えた。水冷2ストローク90度V型2気筒で、ともに最高出力45psを発揮。価格はRの53万9000円に対して、NS250Fは42万9000円。
2ストレプリカと同時発売されたホンダ・NS250F(1984年)
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
創業100年を迎えた青島文化教材社「草創期から異端派だった?」 中西英登さん●服飾の専門学校を卒業するも、全く畑違い(!?)の青島文化教材社に2000年に入社。現在に至るまで企画一筋。最初に手がけたの[…]
歩行者が消える?超危険な「蒸発現象」による事故を防ぐ方法 2024年10月、岡山県内の道路である現象が原因となる交通事故が起きました。横断歩道を渡っていた高齢の女性をクルマがはねた、という事故です。ク[…]
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
レーダーでの速度取締の現場 赤切符と青切符の違いとは? 冬から春にかけては卒業や就職をひかえて新たに運転免許を取得する人が増えてくる時期です。自動車学校・教習所で習ったとおりの運転を心がけているつもり[…]
白バイ警察官になるためのファーストステップ、必要なのは執拗なアピールや根回し!? 警察官になっても、すぐに白バイ警察官になれる訳ではありません。白バイ警察官になるには、まず「白バイ隊員になりたい」と希[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
コストダウンも意識した大胆なテコ入れ テコ入れを辞書で調べると、"期待した通りに進んでいない物事、停滞している状況を、外部からの刺激や援助で打開しようとする取り組みを意味する表現"とある。そしてこの言[…]
ヤマハSR400試乗レビュー この記事では、ヤマハのヘリテイジネイキッド、SR400の2021年モデルについて紹介するぞ。43年の歴史に幕を下ろした、最終モデルだった。 ※以下、2021年5月公開時の[…]
並列4気筒と2気筒で基本設計/生産設備を共有 ’74年初頭からスタートしたスズキの4ストプロジェクトは、次世代の旗艦として、カワサキZを凌駕する大排気量並列4気筒車と、その車両と基本設計/生産設備を共[…]
動力性能を高めるためエンジンを大幅刷新 カフェレーサー然としたスタイルばかりに注目が集まりがちだが、CB400フォアの魅力はそれだけではない。前任に当たるCB350フォアの不振を払拭するべく、動力性能[…]
FLHRロードキング[2002年式] ハーレーダビッドソンが1999年に満を持してリリースしたツインカムエンジン。従来(エボリューション)までのワンカム構造を改め、カムシャフトを2本配置。伝統のOHV[…]
人気記事ランキング(全体)
使い方は「水を含ませる」だけ。走行風を味方につける冷却アイテム 今回紹介するデイトナの「DI-015 ウェットクールベスト」は、水と走行風を利用した気化熱式のクールベストだ。使い方はシンプルで、ただベ[…]
並列4気筒と2気筒で基本設計/生産設備を共有 ’74年初頭からスタートしたスズキの4ストプロジェクトは、次世代の旗艦として、カワサキZを凌駕する大排気量並列4気筒車と、その車両と基本設計/生産設備を共[…]
三層一体構造で愛車を徹底ガード 「ウェザーシールド フリースガード」は三層構造になっていて、外側層の300デニール防水オックスフォード/中間層のTPUフィルム/内側層のフリースライニングを一体化した贅[…]
昭和レトロの世界が広がる神奈川県『中古タイヤ市場 相模原店』 昭和の夏休みって、どんなでしたっけ? 朝はラジオ体操に行って、午前10時頃からは仮面ライダーやウルトラマンの再放送。昼は学校や地域のプール[…]
二見エリアはツーリングライダーを惹きつける場所の宝庫 二見の地に足を踏み入れれば、まず目に飛び込むのは、夫婦岩を模したユニークなJR二見浦駅舎だ。そこから二見興玉神社へと続く「夫婦岩表参道」、通称「旅[…]
最新の投稿記事(全体)
125ccクラスは16歳から取得可能な“小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり[…]
XL750 TRANSALP:実物を見て気に入りました XL750トランザルプオーナーのヨッチンさんは、現在44歳のアドベンチャーライダー。 バイクに乗り始めたのは20歳で、長いこと古い英車に乗ってい[…]
コストダウンも意識した大胆なテコ入れ テコ入れを辞書で調べると、"期待した通りに進んでいない物事、停滞している状況を、外部からの刺激や援助で打開しようとする取り組みを意味する表現"とある。そしてこの言[…]
扇風機+冷却ブレートの二重冷却 KLIFEのペルチェベストは、空調ファンと半導体ペルチェ素子を組み合わせた業界初の設計。背中の冷却ブレートが体感温度を瞬時に下げ、同時にファンが服内の空気を循環させるこ[…]
ワンタッチで取り付け可能な便利設計 「FDH-1」は、強力なバネの力でペットボトルをしっかりホールドし、片手でワンタッチ脱着が可能なバイク用ドリンクホルダーです。600mlまでのペットボトルに対応し、[…]
- 1
- 2









