「寒いしバイクは冬眠」派に送る長期保管の裏技。ガソリン劣化防止にはケミカルを活用しよう!

雪国の冬や諸事情によりバイクを長期保管するとき、問題になってくるのが「ガソリンの長期保管」。劣化して“腐った”状態になると調子が悪くなるどころか、エンジンが動かなくなってしまうリスクもあります。そこで活用したいのが、ケミカル。うまく使えば、ガソリンの劣化防止や長期保管ができちゃいますよ~!
●文:[クリエイターチャンネル] DIY道楽テツ
場所によっては恒例行事なバイクの冬眠(長期保管)
「バイクの冬眠」…雪が多い地域の皆様にとっては、冬から春にかけて毎年恒例の行事かもしれませんね。また、雪国じゃなかったとしても、諸事情により長期間バイクに乗れない時などは、車両の長期保管、つまり冬眠させることもあるでしょう。
保管している間、バイクは走ることがないので部品などの消耗がない分、ずっと長持ちしそうなイメージがしますが、じつは乗らないことで逆に劣化してしまう部分もあります。その代表格がガソリンタンクなのです。
- 1つ目の問題はタンク内部の錆
- 2つ目の問題がガソリンの劣化
まずはサビについてですが、ガソリンタンクのキャップが閉じていたとしても、気温差などの影響によってガソリンタンク内部に結露が発生し、その水分が付着して結果としてガソリン内部を錆びさせる原因となります。
事前にガソリンタンクを空っぽにしてから完全乾燥させて、そして防錆処理を施すという方法もありますがちょっと手間。そこで、もっとシンプルな方法として、ガソリンを満タンにしておくことで空気を極力減らしてサビのリスクを減らすという手法があります。ただ、ここで2つ目の問題、「ガソリンは腐る」が頭をもたげてきます。
腐ると言っても食べ物のように腐るのではなく、ここではガソリンが劣化することを示しています。
ちなみにガソリンの劣化は、揮発と酸化という2つの化学的現象によって引き起こされます。
【揮発】ガソリンには軽い成分(低沸点の炭化水素)が含まれており、時間が経つとこれらが空気中に蒸発します。この成分はエンジンの始動性や燃焼効率を高める重要な役割を果たしますが、蒸発することでガソリンの品質が低下します。
【酸化】ガソリンは空気中の酸素と反応して酸化します。この反応によって、樹脂状の「ガム」と呼ばれる不純物が生成され、ガソリンが粘り気を持つようになります。このガムはエンジン内部の部品(燃料インジェクターやキャブレターなど)に詰まりを引き起こす原因となります。また、酸化によりガソリンのエネルギー効率が低下します。
これらの現象が進むと、ガソリンは「腐る」状態となり、エンジン性能に悪影響を及ぼすようになります。
腐ったガソリンが及ぼす影響は大きい
ガソリンが「腐る」と、あらゆる問題を引き起こす原因となってしまいます。
これは極端な例ですが、キャブレターの内部がこんなひどい状態になります。キャブレターの底にたまった劣化したガソリンの茶色いドロドロです。これよりもっとひどくなると緑色に変化していくのですが、こうなるともう完全に燃料としての役割ははたしてくれません。
また、ガム状に変化したものはご覧のようにジェットの穴に詰まってしまい、適正な混合気を作れなくなってしまいます。こうなったらエンジンが動かないばかりか、キャブレターやインジェクションを分解しないと掃除ができないため、多大な修理費用と手間と時間がかかってしまいます。
保存環境や条件によって劣化速度は異なります。ガソリンは通常3ヶ月から6ヶ月程度で劣化し始めるとされています。つまり、ひと冬を越すぐらいならそれほど大きな影響はないといえますが、本格的に長期間保管しようとすると、このサビ防止に満タンにした、ガソリン自体がとても厄介な敵となってしまう可能性があるわけです。
ガソリンを長持ちさせるケミカル登場
ここで有効なケミカルが登場します。それが、「ガソリン劣化防止剤」! ガソリンの劣化を防止する薬剤です。そのまんまの名前ですね。
フューエルスタビライザーとも言われ、タンクに入れるだけでガソリン劣化を約1年間抑制し、長期保管明けの始動を容易にしてくれるケミカルなのです。素晴らしい!!
そのままガソリンタンクに入れただけでは、うまく混ざらない可能性があります。一度ジョッキにフューエルスタビライザーを入れてから、ガソリンを入れてよく混ぜて、ガソリンタンクに注入。その上から残りのガソリンを入れて、タンクを満タンにしました。これで1年間は安心してバイクを眠らせることができます!!
冬眠後のガソリンの注意点
しかし、ガソリン劣化防止剤を入れたからと言って、ガソリンが永遠に長持ちするわけではないので、その点はご注意を。また、1年すぎたからと言ってガソリンがいきなりドロドロになるわけでもありません。それは個人の判断に任されるところなのですが、筆者の経験では多少酸っぱい匂いがするぐらいでは、エンジンを始動可能です。
もしそのままエンジンをかけてバイクを走らせることに不安がある場合は、もっとシンプルな機器に使ったり、メンテナンスが容易な小排気量車に使用すると良いかもしれません。
もっと理想を言えば、ガソリン劣化防止剤を使用した場合は1年を目安に、処置してないのであれば半年を限度として、タンクの中のガソリンをすべて新鮮なガソリンに入れ替えるのがベストと言えるでしょう。こうすることで、良好なコンディションを維持できるはずです。
この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(DIY道楽テツ)
アクセルワイヤーが長すぎた!というトラブル ハンドルを交換して長さが合わなくなってしまったり、はたまたケーブルそのものが痛んでしまったり。こうしたアクセルワイヤー(スロットルケーブル)を交換する際、「[…]
セルが弱くなったらバッテリー交換のサイン スクーターのバッテリーが弱ってきたのか、始動性がイマイチになってきました。 そういえば、このバッテリーもずいぶんずいぶん古くなってきたので、バッテリーを買い替[…]
新品タイヤが滑るその理由 新しいタイヤは滑ります。 滑りたくないから新しいタイヤに交換したというのに、なぜか新しいタイヤはマジで滑るんです(経験者は語る)。 なぜ滑るかというと、それはタイヤの製造過程[…]
燃料コックにも涙? それはある日の出来事。バイクで走り出そうとガソリンタンクの燃料コックをオンにした時、指先に冷たいものを感じました。 何があるのかと覗き込んでみると・・・燃料コックが泣いているぅ~![…]
ひと昔のバイクは一年中暖機運転が必須でした 昔のバイク…と行かないまでも、1990年代末ぐらいまでのバイクは、一年中エンジンの暖気が必要不可欠でした。とくに2サイクルエンジン車は、冬はなかなかエンジン[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
擦らず拭くだけでOK。デリケートな素材も傷つけることなく赤サビを除去できる バイクや自動車の部品はもちろん、橋梁/建築物/工具/アウトドア用品の材料として当たり前のように使われている鉄素材。豊富な埋蔵[…]
スパナやレンチの長さが違うのはナゼ? 工具箱に並ぶスパナやレンチ。 10mm、12mm、14mm…サイズごとに全長が違うのは、当たり前の光景ですよね。これもそうだし。 コッチもそう。狭所作業用の短いス[…]
オイルひとつでエンジン特性が激変!! ヤマハ純正オイル「ヤマルーブ」。4ストロークエンジン用のオイルだけでもさまざまなグレードが用意されているが、いったいナニがどう違うのだろうか? はたして一般ライダ[…]
チェーンメンテナンスって難しそう 日常的なバイクメンテナンスの代表格といえば洗車ですが、その次に作業頻度が高いと思われるのは「チェーンメンテナンス」 チェーンメンテナンスの工程は大きく分けて以下の3つ[…]
論より証拠! 試して実感、その効果!! カーシャンプーやワックスをはじめ、さまざまなカー用品を手がける老舗ブランド・シュアラスター。そのガソリン添加剤シリーズ「LOOP」のフラッグシップモデルが、この[…]
最新の関連記事(オイル/ケミカル)
擦らず拭くだけでOK。デリケートな素材も傷つけることなく赤サビを除去できる バイクや自動車の部品はもちろん、橋梁/建築物/工具/アウトドア用品の材料として当たり前のように使われている鉄素材。豊富な埋蔵[…]
オイルひとつでエンジン特性が激変!! ヤマハ純正オイル「ヤマルーブ」。4ストロークエンジン用のオイルだけでもさまざまなグレードが用意されているが、いったいナニがどう違うのだろうか? はたして一般ライダ[…]
チェーンメンテナンスって難しそう 日常的なバイクメンテナンスの代表格といえば洗車ですが、その次に作業頻度が高いと思われるのは「チェーンメンテナンス」 チェーンメンテナンスの工程は大きく分けて以下の3つ[…]
論より証拠! 試して実感、その効果!! カーシャンプーやワックスをはじめ、さまざまなカー用品を手がける老舗ブランド・シュアラスター。そのガソリン添加剤シリーズ「LOOP」のフラッグシップモデルが、この[…]
バイクライフをサポートするラインアップ Pro Hondaのラインアップとして、4サイクルエンジン用オイル×5種類/2サイクルエンジン用オイル×3種類/ブレーキフルード×1種類/クッションオイル×2種[…]
人気記事ランキング(全体)
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”の最新進化系 カワサキは、948cc並列4気筒エンジンを搭載したスーパーネイキッド「Z900」および上級モデル「Z900 SE」[…]
涼しさの心臓部。それは「素材」と「構造」の魔法的組み合わせ うだるような暑さと、じっとりと肌にまとわりつく湿気。毎年繰り返されるこの季節に、多くの人が少しでも快適に過ごせる服を探し求めている。そんな中[…]
『Wheels and Wavesフェスティバル』にカスタムマシン×11車を展示 6年目を迎えたHondacustoms(ホンダカスタムズ)、過去にはCB1000Rやレブル、CL250/CL500、モ[…]
左右2本出しマフラーやベルトドライブ、6速ミッションも採用 ヒョースンモータージャパンは、水冷124.7cc・V型2気筒エンジンを搭載したクルーザーモデル「GV125Xロードスター」を発売する。 挟み[…]
アメリカは”英国車マニア”多し! この1956年製MGAはご覧の通り左ハンドルで、最初から北米仕様だったもの。そもそも、アメリカは英国車マニアが数多く存在しており、1950年代どころか1930/194[…]
最新の投稿記事(全体)
ライダーが抱く「ヘルメットの悩み」を解消するために誕生 デルタから発売される高機能ヘルメットスタンドは、多くのライダーから寄せられた「こんな製品があったらいいな」を形にした、実用性とデザイン性を兼ね備[…]
「パンヘッドのチョッパーに乗りたい」理想像を具現化 目の肥えたファンが集まるカスタムショーに大きなブースを構え、絶え間なくハイレベルな作品を発表し続ける遠藤自動車サービス。その確かな技術力/信頼性の高[…]
2023年モデル:400クラス唯一のクルーザーとして復活 発売は2023年4月25日。先代となるエリミネーター400から実に15年ぶりの登場で、エリミネーター/SEの2グレード展開だった。 ニンジャ4[…]
日本を代表するツーリングロードのティア表だっ! 「次のツーリングは、どこへ行こう?」 そんな嬉しい悩みを抱える全てのライダーに捧げる、究極のツーリングスポット・ティア表が完成した。 ……いや、そもそも[…]
フレンドリーさも持ち合わせていた名機’89 NSR250R 1986年に初登場した2ストロークレーサーレプリカの名車、NSR250R。登場から30年以上が経過した現在でも、型式を問わず根強い人気を誇っ[…]