【Q&A】高速道路の中央分離帯、植物があるナゾに迫る! 実は絶滅危惧種も存在だって!?

●文:[クリエイターチャンネル] Peacock Blue K.K.
高速道路の中央分離帯に植物が植えられているワケ
SAやPAなど、高速道路の至るところに存在する大小さまざまな緑地。特に走行しているとしばしば目に入ってくる中央分離帯の緑地は、いつ見てもきれいに整備されています。場所が場所ですし、いつ手入れをしているのか疑問ですし、そもそもなぜあんなところにあるのか不思議です。
何気ない景色のひとつとしてあまり気にしたことはないかもしれませんが、中央分離帯の植物には、ちゃんとした存在理由があります。
高速道路の管理運営をおこなっているNEXCO東日本によると、中央分離帯の緑地には交通安全性の向上を目的として、主に3つの効果を及ぼしているといいます。
効果1:ヘッドライトの眩しさを防ぐ
まず挙げられるのは、ヘッドライトの眩しさを防ぐ効果です。この効果が求められた背景にはふたつの要因が考えられます。
ひとつは近年、ハロゲンに比べ長寿命で消費電が少ないだけでなく光量も高いLEDヘッドライトを採用したバイクやクルマが増加していることです。夜間や悪天候でも前方を明るく照らしてくれるため、使用者の安全には寄与しますが、ときに対向車の安全を脅かしかねません。
中央分離帯に植物が植えられているのは、反対車線のヘッドライトの影響を受けにくくするため。
もうひとつは、2017年3月の改正道路交通法施行により、クルマの夜間運転は原則ハイビームとなったことです。すれ違い時はロービームに切り替えることも謳われているものの、交通量の多い高速道路では、すべての対向車には配慮しきれない場合もあります。
こうした事情も相まって、中央分離帯に緑地を設けることが高速道路利用者の安全に繋がっているのです。
効果2:道路の形状をわかりやすくさせる
次に挙げられるのは、ライダー/ドライバーに道路の形状をわかりやすくさせる効果です。
直線の多い高速道路とはいえ、主に山間部などでは地形に沿って緩やかなカーブとなっている区間も存在します。曲がっていく方向をいち早くライダーに認知させることによって、適切なスピード/バンクでのライディングをアシストしています。
また近年はスマートフォンのナビ機能が急速に発達し、バイクでもより早い段階で進路形状を把握できるようになりました。緑地とナビの両方から情報を取り入れることで、より安心安全に高速ツーリングを楽しめるようになります。
効果3:景観に変化をつけて注意を促す
最後は、単調になりがちな景観に変化をつける効果です。
スピードの緩急が少なく景色の変化も乏しい高速道路では、長時間の走行で集中力が保てず注意散漫になりがちです。こうした状態が続くと、眠気を誘発してしまい事故や転倒につながります。
緑地があるだけでも景観に変化が生まれ、ライダーの集中力低下をある程度防ぐことができるのです。
植物があるのとないのとでは、道路の進行方向の視認性が大きく変わる。
ただし、眠気や注意力維持については、ライダー自身のコンディションによるものが大きいため過信は禁物。少し疲れ始めたら、早めにSAやPAで休息をとることが大切です。
その他にも効果あり! 役立つ中央分離帯の植物
ちなみに副次的な効果としては、事故や転倒により万が一突っ込んでしまっても、樹木がクッションとなり人体への被害を最小限に抑えられることも挙げられます。
またライダー自身が直接恩恵を受けることではありませんが、中央分離帯以外の緑地全般に関しても、騒音の低減/温室効果ガスの吸収などの環境保全機能や、景観調和/利用者へのサービス向上などの景観形成機能を担っています。
快適に高速道路を利用するためだけではなく、近隣住民の生活や地球環境を守る上で、緑地の存在は必要不可欠です。
実は絶滅危惧種も植えられている!
なお緑地に使用される植物は、基本的に近傍の地域に自然分布している種の種子を採取し、育成させたものです。これを地域性苗木と呼び、その土地の樹種固有の遺伝子を保存することを目的としています。なかには、発芽や育成が難しいものや市場に流通していないもの、レッドデータブックに絶滅危惧種として指定されているものもあります。
緑地自体は1963年、日本初の高速道路である名神高速道路の開通時点ですでに存在していましたが、地域性苗木の利用は1996年、中央高速道の八王子ジャンクションが始まりでした。これには、1993年”生物多様性に関する条約”の締結・発行による、遺伝子レベルでの種の保存に関する研究が推し進められたという背景があります。
NEXCOは高速道路の管理・運営だけでなく、こうした緑地の維持管理及び植物の育成にも力をいれており、グリーンインフラの活性化に大きく貢献しています。
こうして培われた地域性苗木の技術は今後、生物多様性国家戦略にて、一般道や林道の建設にも応用していく見解を示しています。
走行中に緑地に注目することは難しいですが、SAやPAでの休息時などに、地域ごとに異なる特色の緑地を楽しむと、より高いリラックス効果を得られていいかもしれませんよ。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(Peacock Blue K.K.)
複数人でバイクのツーリングに出かける「マスツーリング」は、初心者から上級者まで、多くのライダーに人気が高いツーリングのひとつです。経験豊富なライダーが同行してくれれば安心感を得られますし、彼らからバイ[…]
冬場であっても、たまにはツーリングに出かけたい! というよくばりさんなライダーもいるはず。 ただし冬だからと言って、「とりあえず着込め!」だけじゃ不十分です。寒い冬のツーリングを快適にするためには、ど[…]
秋は1日を通して過ごしやすい日が多く、紅葉などの自然美を楽しめるため絶好のツーリングシーズンです。 季節を楽しみながら旬の食べ物を求めてツーリングするライダーは多く、たとえば関東近郊では下記のスポット[…]
一人でふらりと出かけて自由気ままにワインディングや食を楽しむソロツーリングもいいですが、家族やパートナーと出かけるタンデムツーリングもまた乙なもの。慣れ親しんだ道端の風景や行きつけのお店でも、誰かと一[…]
夏場のライディングは暑さ対策ばかりに目が行きがちですが、男女関係なく日焼け対策も同時に講じておくと安心です。 日焼けと聞くとシミ/シワの原因になるもの、と捉えている人も多いかもしれませんが、そのほかに[…]
最新の関連記事(Q&A)
A:どちらも不具合。後ろはアフター、バックは戻ると覚えるべし 未燃焼ガスがシリンダー外で燃えるという意味では、どちらも同じ”不調”を表している。アフターファイアーはマフラー側に流れた未燃焼ガスが引火す[…]
A.クラッチを切らずにギヤチェンジできるクイックシフターは便利なはずですが、確かに操作するときの状況によっては仰るようにギクシャクしたりショックがあって怖い思いをするかも知れません。加速(増速)側の場[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
A.慣れたコーナーには先が見えている安心感で、そこそこアベレージ高くコーナリングできる満足感を楽しめます。でも慣れているからこそ潜んでいるリスクも考えましょう。知らない道のほうが楽しいといえる走り方こ[…]
Q.ツーリングへ出かけるとバイクのすぐ前の路面ばかり見てしまいます。そのため先のほうの様子に気づくのが遅れ、カーブの手前で慌てます。「遠くを見ろ」とよく言われますが、先を見ていると手前の路面が心配にな[…]
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
「バイクのスプロケットの交換タイミングはいつなんだろう?」 これは、バイク仲間や先輩、バイク屋さんやバイク雑誌などでも昔からとずっと語られてきたことで、今ではインターネット検索すればいくらでも情報が出[…]
A:どちらも不具合。後ろはアフター、バックは戻ると覚えるべし 未燃焼ガスがシリンダー外で燃えるという意味では、どちらも同じ”不調”を表している。アフターファイアーはマフラー側に流れた未燃焼ガスが引火す[…]
交換するだけで愛車がスポーツバイクにもツーリングバイクにもなる タイヤは、すごい。バイクのパーツで唯一路面に接しており、その接地面積は、たったクレジットカード1枚分と言われる。たったこれだけでバイクを[…]
半クラッチは熱膨張で繋がる位置が変わる! ほんとんどのバイクは、エンジンのシリンダーよりちょっと後ろに丸い膨らみがある。これがクラッチ。 丸い膨らみの中には、エンジンのパワーを発生するクランクシャフト[…]
トレッドのグルーブ(溝)は、ウエットでタイヤと接地面の間の水幕を防ぐだけでなく、ドライでも路面追従性で柔軟性を高める大きな役割が! タイヤのトレッドにあるグルーブと呼ばれる溝は、雨が降ったウエット路面[…]
人気記事ランキング(全体)
情熱は昔も今も変わらず 「土日ともなると、ヘルメットとその周辺パーツだけで1日の売り上げが200万円、それに加えて革ツナギやグローブ、ブーツなどの用品関係だけで1日に500万円とか600万円とかの売り[…]
正式発表が待たれる400ccオフロード/スーパーモト スズキは、昨秋のEICMA(ミラノショー)にて、新型400ccデュアルパーパスモデル「DR-Z4S」およびスーパーモトモデル「DR-Z4SM」を発[…]
660ccの3気筒エンジンを搭載するトライアンフ「デイトナ660」 イギリスのバイクメーカー・トライアンフから新型車「デイトナ660」が発表された際、クルマ好きの中でも話題となったことをご存知でしょう[…]
カワサキUSAが予告動画を公開!!! カワサキUSAがXで『We Heard You. #2Stroke #GoodTimes #Kawasaki』なるポストを短い動画とともに投稿した。動画は「カワサ[…]
止められても切符処理されないことも。そこにはどんな弁明があったのか? 交通取り締まりをしている警察官に停止を求められて「違反ですよ」と告げられ、アレコレと説明をしたところ…、「まぁ今回は切符を切らない[…]
最新の投稿記事(全体)
Paceプロジャケット 豊富な安全装備と快適な着心地を高次元でバランスした、ワインディングやロングツーリングに最適なライディングジャケット。腕と肩のトリムには、スチールとプラスチックを組み合わせたコン[…]
伝説の始まりはニンジャとともに 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに登場する初代ニンジャ=GPZ900Rへのこだわりやバイク[…]
ダイソーのアイテムを買ってみよう使ってみよう この記事で取り上げるダイソーのアイテムは「極厚 油よごれクリーナー」! 税込み110円で大判15枚入り。商品名が「油よごれクリーナー」なのに・・・ その下[…]
第1特集「極上バイクを楽しもう!」 バイクの魅力はいろいろとあるが、話題のニューモデルはライダーにとって間違いなく気になる存在。『R★B』最新号(Vol.55)の第1特集は「極上バイクを楽しもう!」と[…]
ガチの原付二種ライバルを徹底比較! 原付二種と呼ばれる、50cc超~125cc以下のバイクはユーザーメリットが多い。任意保険は4輪車などに付帯させるファミリーバイク特約が使えるし、自動車税も90cc以[…]
- 1
- 2