タンデムツーリング前におさらい! 実はたくさんあった2人乗りの条件

●文:[クリエイターチャンネル] Peacock Blue K.K.
【Peacock Blue K.K.】2017年11月創業のクリエイティブ・エージェンシー。自動車やバイクを中心に、原稿制作から写真撮影、動画制作などを行っている。
一人でふらりと出かけて自由気ままにワインディングや食を楽しむソロツーリングもいいですが、家族やパートナーと出かけるタンデムツーリングもまた乙なもの。慣れ親しんだ道端の風景や行きつけのお店でも、誰かと一緒というだけでまた違った楽しみを見いだせますし、印象的な思い出ともなります。
でもちょっと待って。実はバイクの2人乗りにはいろいろな条件があるんです。知らず知らずのうちに違反してしまわないよう、お出かけ前に決まり事をおさらいしておきましょう。
道路運送車両による決まり事
まず乗車定員が2名となっていることは当然ですが、タンデムシートが設置されているからといってどんなバイクでも2人乗りできるわけではありません。道路運送車両の保安基準 第20条(乗車装置)でいくつかの条件が定められています。「乗車人員が動揺、衝撃等により転落又は転倒することなく安全な乗車を確保できるものとして、構造に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない」ために握り手/足かけもしくはタンデムベルト/タンデムグリップ/タンデムステップが設置されていることが必須です。
またライダーの側にも道路交通法第七十一条の四の5によって定められた制限があります。免許取得後すぐに2人乗りができるわけではなく、免許が交付されてから1年以上が経過してから初めてできるようになります。
ちなみに高速道路の2人乗りについては、さらに厳しく定められており、免許取得後3年以上が経過していない、または20歳未満の運転手は高速道路で2人乗りをしてはいけないとなっています。
同乗者にも条件あり!
同乗者にも道路交通法で定められた条件があります。安全性の面から考えれば当たり前ですが、同乗者も必ずヘルメットを着用しなければなりません。きちんと頭のサイズに合ったものを用意するようにしましょう。いざというとき、頭をしっかりと守ってくれます。
二輪免許を取得してすぐに高速道路で2人乗りできるわけではない。
また年齢制限こそ定められていないものの、ステップに足が届いて、シートに正しく着座できていなければバイクに同乗してはいけません。もちろん、小さな子どもをおぶったり、前に乗せて運転することも禁止されています。
ここまで紹介した条件をいずれかでも満たしていない場合は、法令違反にあたってしまうので注意しましょう。
2人乗りで違反をした場合はどうなる?
もしバイクを2人乗りで違反してしまった場合は、罰金/違反点数などがつき、道路交通法で処罰されます。
平成17年4月1日に道路交通法が一部改正されたことで、バイクの2人乗りの罰則は大きく変更され、下記のように厳罰化されています。
- 変更前は罰金5万円以下だったが、10万円以下に改正
- 反則金も、変更前は6000円だったものの1万2000円と倍増
- 違反点数も以前までは1点だったが、2点に変更
同乗者にもヘルメットの着用義務があるのを忘れてはいけない。
例えば、定員1名のバイクで2人乗りしてしまった場合は反則点数2点に加え、1万2000円の反則金が課せられます。
また改正に伴って、下記のような警察官の取り締まりが実施されるようになりました。
- 違反している2人乗りを発見した場合、バイクを停止させるもしくは運転者に対して免許証の提示を求める
- 現状では違反をしていないが、今後禁止違反をしてしまう可能性があると判断した場合も、危険防止のために必要な措置を取ることができる
他にも停止命令/免許証の提示に従わなかった場合には、二人乗り禁止違反よりもさらに大きな罰則が与えられます。
たとえば停止命令を無視した場合では、3ヶ月以下の懲役もしくは5万円以下の罰金が課されるほか、免許証の提示に従わなかった場合は、5万円以下の罰金が課されると定められています。
バイクを2人乗りする際に注意したいこと
高速道路では長時間に渡り走行し続けるため、想定以上に疲れる傾向にあるなど一般道での走行とは違いがあるので、2人乗りともなれば1人でいるときよりも注意が必要です。
大型自動二輪車/普通自動二輪車の最高速度は、速度指定のある区間でない限り、普通自動車と同じ100 km/hと定められています。これはセンターラインのない一般道の最高速度である50km/hの約2倍。制動距離は速度の2乗に比例するため、50km/hで走行した場合の制動距離が約20mであることを踏まえると、100km/hで走行した場合は約80mにもなります。一般的な電車1両の長さが約20mであることを踏まえると、およそ4両分にあたるので、かなり長い距離であることがわかるはずです。
1人で乗っている場合と2人乗りしている場合とでは制動距離が変わる。
この数値は乾燥した路面を一人で乗った時に計測したデータです。路面が雨で濡れていると制動距離はさらに増加します。特に2人乗りの場合は、重量が1人分増えるためすぐに停止しづらく、一人で乗っているときと同じ感覚で走行すると非常に危険です。
そのため、いつも以上に車間距離を適切に保持しながら走行したり、落ち着いてブレーキをかける必要があります。
また高速道路では、トンネルの出入り口/橋の上などを通過する場合は、強風に煽られてバランスを崩してしまうことも少なくありません。
ちなみに強風が発生しやすい場所には、風の強さや方向がわかる吹き流しが設置されており、水平で風速が10m以上だと動く仕組みが作られています。横風で煽られそうな場所を走行する場合は、速度を落として同乗者に後ろに引っ張られないような運転を心がけるとよいでしょう。
同乗者と楽しい時間を共有できるタンデムツーリング。せっかくの楽しい機会を、交通違反/危険走行などでムダにしないためにも、二人乗りの条件をきちんと満たしているのか十分に確認してから出かけましょう。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(Peacock Blue K.K.)
秋は1日を通して過ごしやすい日が多く、紅葉などの自然美を楽しめるため絶好のツーリングシーズンです。 季節を楽しみながら旬の食べ物を求めてツーリングするライダーは多く、たとえば関東近郊では下記のスポット[…]
高速道路の中央分離帯に植物が植えられているワケ SAやPAなど、高速道路の至るところに存在する大小さまざまな緑地。特に走行しているとしばしば目に入ってくる中央分離帯の緑地は、いつ見てもきれいに整備され[…]
夏場のライディングは暑さ対策ばかりに目が行きがちですが、男女関係なく日焼け対策も同時に講じておくと安心です。 日焼けと聞くとシミ/シワの原因になるもの、と捉えている人も多いかもしれませんが、そのほかに[…]
暑さの厳しい8月。この時期は特に脱水症/熱中症の危険性が高く、夏場にツーリングを予定しているライダーは対策を練っておきたいところです。 脱水症/熱中症を予防するためには、定期的な水分/塩分補給が欠かせ[…]
全国各地で熱中症警戒アラートが発令されるほどの猛暑が続く、2023年の夏。しかし夏場であっても、基本的にバイクに乗るときは長袖長ズボン/ヘルメット/グローブなどを着用しなければいけません。その際に特に[…]
最新の関連記事(交通法規)
16歳以上が免許なしで乗れる“特定小型原付”の誕生によって、原付新時代が到来 2023年の大ニュースとして、運転免許不要で運転できる原動機付自転車が新設されたことが挙げられます。そのこと自体について賛[…]
なくならない高齢ドライバーによる交通事故。免許所持者の“自主返納”への意識は? 2019年4月に東京・池袋で発生した高齢ドライバーによる事故などをきっかけに、“高齢者の免許返納”についてこれまで以上に[…]
文科省/学校における交通安全教育について、「第3次学校安全の推進に関する計画」により、各校に学校安全計画/危機管理マニュアルが置かれたこと、交通安全教育に係る指導者を養成していること、教職員向けの冊子[…]
自治体の本音が見える回答結果 自動二輪を対象とした附置義務条例の設置は全国でもなかなか進んでいないが、放置自転車対策として制定されている自転車駐輪に関する条例や、自動車駐車に関する条例を一部改正して、[…]
国土交通省は9月22日、『後続車に衝突の危険を知らせる機能として、これまで四輪自動車に導入されている「後面衝突警告表示灯」について、我が国も参加する国連WP29での議論を経て、新たに二輪自動車等におい[…]
最新の関連記事(バイクビギナー/初心者)
秋は1日を通して過ごしやすい日が多く、紅葉などの自然美を楽しめるため絶好のツーリングシーズンです。 季節を楽しみながら旬の食べ物を求めてツーリングするライダーは多く、たとえば関東近郊では下記のスポット[…]
高速道路の中央分離帯に植物が植えられているワケ SAやPAなど、高速道路の至るところに存在する大小さまざまな緑地。特に走行しているとしばしば目に入ってくる中央分離帯の緑地は、いつ見てもきれいに整備され[…]
スポーツバイクはエンジン/キャラクターを楽しむ乗り物 スポーツバイクのエンジンは高度なパーツの集合体で、V4であったりパラ4や、Vツインにパラツインなど様々な呼び方のエンジン形式がある。 そもそも気筒[…]
段差を乗り越える際を例に、乗車姿勢が安定感に与える影響を比べてみよう A. 力むとタイヤの路面追従性が損なわれ、グリップや安定性が大きく損なわれます。徐々にでも良いので留意すべきポイントをひとつひとつ[…]
第3話 そうなる気はしてた… 事前にタンデムさせてもらったアシスタント先の先生などから、バイクの「引き起こし審査」の話は聞いていました。わたしは身長が152cmと高いわけでもなく、ひょろひょろした体型[…]
人気記事ランキング(全体)
土踏まずを支点につま先で上に引き上げるのはNG バイクにまだ慣れていない、もしくはキャリアはあっても乗る機会が少ないライダーは、ギヤのシフトアップのコツが掴めず、左足の親指つけ根が痛くなったり皮が剥け[…]
実はずっと気になっていた「APトライク125」 これを読んでいる皆さんの中にも、タイの「トゥクトゥク」のようなトライシクル (三輪バイク)「APトライク(APTrikes)125」を目撃したことがある[…]
アンダーボーンにブロックタイヤ、フラットなシート ヤマハがタイで面白いバイクを発表したぞ! その名も「PG-1」で、数日前からウェブ界隈を賑わせてきたが、スペックや価格も正式発表されたのでお伝えしたい[…]
SHOEI最高峰の快適性と利便性がより幅広いユーザー層のものになる 『ネオテック3』は、SHOEIのシステムヘルメット第3世代となる最新モデルだ。ヨーロッパではすでに販売中だが、国内発売は’23年12[…]
まさかのパンアメリカX350か!? と騒いでみたものの…… 353cc並列2気筒エンジンを搭載し、”普通二輪免許で乗れるハーレー”として話題のX350にバリエーションモデルが存在する……?! ヤングマ[…]
最新の投稿記事(全体)
世界選手権の場で行われた論外の行為 史上最長、3月24日〜11月26日までをかけて全20戦が行われたモトGPも、バレンシアGPをもって無事に閉幕しました。何回かに分けて、シーズンを振り返りたいと思いま[…]
レトロなデザインに最新の機能を盛り込んでいる ブリクストンは新興ブランドですが、125〜1200ccまで多くのモデルをラインナップしています。その中でも“クラシックブリティッシュスタイル”を具現化した[…]
今までより重くなる……? と思ったら小さく軽くなっていた! ビッグアドベンチャーの頂点に君臨するBMW・GSシリーズのフラッグシップがフルモデルチェンジを果たした。1254ccを誇った先代旗艦のR12[…]
柴田賢二/柴田制作所の手によるイラストポスター 国産モーターサイクルを題材に手書き製作されている柴田賢二/柴田制作所のTSR車両図版です。精密で芸術性の高いイラストポスターです。TSRオリジナルロゴ付[…]
YZF-R7似のデザイン、YZF-R25超えのアグレッシブさ どれも個性的ななスタイルを持つヤマハ新型フルサイズ125の中で、もっともスポーティな存在感を放っているのがYZF-R125だ。フルカウルを[…]
- 1
- 2