
イタリアのハンドメイド・マニファクチャラー、Vins Srl社が開発した「今どき」の2ストロークマシンであるVins Duecinquanta(ヴィンス・ドゥエチンクアンタ)。フェラーリでフォーミュラマシンの開発を担当してきたヴィンセンツォ・マッティアと同僚のニコラ・トレンターニが、ビジネス面をサポートする高校時代からの親友、ジュゼッペ・エヴァンゲリスタを誘って2017設立した若いブランドだ。同社はフェラーリの故郷でもあるイタリアはマラネロに本社がある。搭載された2ストエンジンは、レース仕様とストリート仕様共に75hp/45Nmを発揮し、単体重量はわずか28㎏。そんなハイパフォーマンスエンジンを搭載するオリジナル・モーターサイクルについてモータリスト代表の野口さんに聞いてみた。
●文&写真:モータリスト ●まとめ:高橋祐介 ●BRAND POST提供:MOTORISTS
ひとりのエンジニアの理想と技術が作り出した唯一無二のマシン
すでにモータリストのお店ではVINS Duecinquanta(ヴィンス ドゥエチンクエンタ)があるとのことですが、皆さんの反応はいかがでしょうか?
「多くのモーターサイクル関係媒体に、試乗記事が登場しているVINS。一切の忖度なし(何しろこの車両のために当社が広告だしてお金で書いていただく、なんてことはできませんからね)、文字通りこのマシンを見て乗ったことが書かれている、限りなくピュアなインプレッションが散見されています」
フェラーリF1直系の超軽量カーボン構造。先入観は今すぐ捨てるべし このマシンを開発したのは、元フェラーリF1のエンジニア、ヴィンセンツォ・マッティア。2017年にVINS社を立ち上げつつ、すでに201[…]
だれもが口をそろえるのが、『この時代に、最新型の2サイクルマシンに乗れるなんて!』
皆さん乗ったとたんに、あの興奮がよみがえるとともに、パワフルなのに乗りにくくない気持ちよさに感動していきます。マシンから離れるとまたマシンに戻り、もう一度お気に入りのワインディングに乗り出したくなってしまうほどに、奥が深く楽しい。そんなモーターサイクル、今まであったでしょうか?」
VINS Duecinquantaが仕様や価格も含めプレミアムな車両ですが、マシンの魅力について詳しく教えてください。
「まずは、排気量のヒエラルキーからも完全に解き放たれた250㏄。デカければ偉い、はもう過去のものです。日本では車検のない「軽二輪」に相当する普通免許で乗れてしまう排気量ですから軽く見られがち。でも、VINSはそんなヒエラルキーをはるかに超越したところにあるマシンです。モーターサイクルとして、技術として、つくりからして、思想までも⋯⋯」
エンジンをベースに、フル・カーボンのシャシーを編み上げていく手法で完成させた
「そもそも、現代にあって、小さなメーカーとはいえ、いや小さなメーカーだからこそ、エンジンをゼロから設計し、フレームも完全な白紙から作りこみ、1台のモーターサイクルを完成させたことがあったでしょうか?それも、たったひとりの人物が、すべてを自らの手で生み出すなんて。VINS Duecinquantaはそんな環境から誕生したマシンなのです」
VINS(ヴィンス)というブランドと、野口さんとの出会いはいつからだったのでしょうか?
「VINSを主宰するVincenzo Matta(ヴィンチェンツォ マッティア)と私は、ドイツ人ジャーナリスト、Klaus Nennevitz(クラウス ネネヴィッツ)に紹介されてから、深くコミュニケーションをとり続けてきました。Vincenzoの自ら生み出したマシンにかける執念と、その創作への思想に深く共鳴し、彼が作るマシンをこの手で操り、日本のお客さまの手に渡していきたい、と私は考え、その日を待ち続けてきたのです」
車体設計の肝はヴィンセンツォが固め、それを二コラが仕上げてドゥエチンクアンタは完成した
「話は少し変わりますが、かつて、ニュージーランドの鬼才・John Britten(ジョン ブリッテン)が車体からエンジンまでのほとんどの部品をオリジナルで製作したマシン、BrittenV1000を生み出しました。日本にそのマシンが持ち込まれ、レースを走らせた時、私は間近に張り付いて、食い入るようにマシンを観察したことを今も覚えています」
自ら設計したオリジナルの60°Vツインのエンジンを搭載し、1994年に302.705km/hの最高速度を記録。他にも当時、1,000cc以下で4つの世界記録を樹立したマシン。惜しくもブリッテン氏は皮膚癌で45歳の若さで急逝してしまったが、彼の伝説は今でも語り継がれている
「当時、Buell(ビューエル)で理想のマシンを作り出そうと、夢中になって議論したのもまた、他にはないオリジナルのシャシーを作り出すことが理想の実現には必要だったからでした(BuellはエンジンこそHarley-Davidsonを手本とすることが決定づけられていたが、その縛りとエンジンのキャラクターがあったからこそ成功した側面も否定できないはずです)」
「『理想のモーターサイクルを作り出す』そこには、ビルダーの確固たる思想が必要です。ありものを改造するのではなく、自分の思想に従って設計され、ゼロから作り出したマシンが理想のハンドリングを実現する、そうした筋の通ったマシンづくりはいったい何人のビルダーが本当に実現できたのでしょうか。VINSは、まさにそうした、すべてを自らの手で生み出し、誕生させたマニファクチャラなのです」
VINSはどのように誕生し、マニュファクチャーとしてバイクを生産しているのですか?
「VINSはまず、その心臓部となるエンジンを生み出し、Langen Technology(ランゲン テクノロジー)に供給することで資金を手当てしました。VINS Duecinquantaというマシンを実現するための資金作りの始まりは、エンジンの外販からスタートしたのです」
「VINS SRL社は、エンジンの販売だけではなく、エンジニアリング会社として技術を売り収益を生み出しています。例えば、オートクレーブを持つカーボン製部品製作・設計者として多くのスポーツカー向けの部品や用品を生み出していたり、アルミの部品設計からマニシングなど、商品を企画販売することによって、安定した会社でした。こうした事業を柱に据えていたからこそ、モーターサイクル(完成車)については、じっくりと腰を据えて、徹底した理想を追い求めた開発へとつながっているのです」
Langen Two Stroke(ランゲン ツー ストローク)
試乗でわかったVINS Duecinquantaの潜在能力
試乗会を箱根で開催されたそうですが、ご自身もライディングしていかがでしたか?
「まずは私がVINSというブランドを理解したうえで訪問し、Vincenzoとじっくりと話をしながら互いに理解を深め、ようやくそこで乗る機会が与えられる(かもしれない)のが、VINSに乗る唯一の方法でした」
Vins Duecinquanta(ヴィンス・ドゥエチンクアンタ)
「それを理解したうえでやってきた試乗の機会です。VINS Duecinquantaが日本に届けられ、『乗って理解を深めてくれ、俺たちにもう言葉はいらないだろう!』という状態になったのです。世界で唯一、VINSがイタリアを離れ、他人の手に委ねられて自由な試乗機会が与えられる。こんな奇跡があるでしょうか」
「Vincenzoはその文字通りの奇跡を提供してくれたのです。試乗会に先立ち、私は興奮を隠せませんでした。まずは、木箱に入れられたVINSが日本に到着。箱を分解し、マシンが目の前に登場します。車体そのものはヨーロッパで一度、直接目にしていたものですが、改めて触ることができるマシンがここにあるというのは感慨深いものです。その後、書類作業などがあり、ようやくナンバーが取得できたのが約2週間後。その間各部を点検し、バッテリーをつなぎ、燃料を入れ、いよいよ始動しました」
Vins Duecinquanta(ヴィンス・ドゥエチンクアンタ)
「2サイクル独特のサウンドが、しかし250㏄とは思えない重厚な排気音とともに響き渡り、これがVINSか⋯⋯と。暖気を済ませると、まずはナラシがてら早速テストに出かけました。ストリートマシンとして作られているはずですから、会社の前の国道からスタートして普通に走れなくてはお客さまに紹介できません」
「とはいえ、知れば知るほどにレーシングマシン以上のこのモデル、本当に酷暑の東京にいきなり乗り出していいのだろうか?と心配しつつ、クラッチをつないでいきます。想像をはるかに超えたトルクと、軽量な車体のおかげでエンストする気配もないままにするすると走り出しました。ホサック式フロントサスペンションは意外なほど初期が柔らかく、バンピーな国道のギャップを丁寧に拾います」
Vins Duecinquanta(ヴィンス・ドゥエチンクアンタ)
「信号に引っ掛かってもエンストしたり調子が悪くなる気配もなく、特別な対応を必要としないある意味普通のモーターサイクルです。ただ、驚くほど軽いことと、やる気にあふれた排気音が、アクセルをひねる右手を駆り立てます」
「いや、マシンがというよりは、筆者自身が、早くアクセルを開けたい、パワーを開放してそのトルクと音を味わいたい、と心が逸ります。でも街中ですからね、そうもいきません。いつものテストコースは、緩やかなカーブのある川沿いの気持ちのいいストリートです。ここまでくれば信号もなく、見通しもよく、気分良くスロットルを開けて行くことができます」
Vins Duecinquanta(ヴィンス・ドゥエチンクアンタ)
「ちょっと高めのギアからでもストレスなく加速していきますが、やはり低いギアを選んでパワーバンドに入れていくと恐ろしいほどのダッシュ力を発揮します。それが気持ちいいのです。たちまちフロントが軽くなる力を持ちながらも、比較的長いホイールベースが走行に安定感を与えてくれます。それでいながら、立ち気味のキャスターアングルのせいか倒し込みも極めてクイックで、街中の小さなコーナーでさえ曲がるのがひたすら楽しくてニヤついてしまいます」
Vins Duecinquanta(ヴィンス・ドゥエチンクアンタ)
「箱根の試乗会では、さらに好印象に変わって行きます。ギャンギャン走るというよりは、むしろ高めのギアでワインディングを流したり、ワイドなトルクを生かしながらアクセルをひねって立ち上がっていく快感。まさに大人のコーナリングマシンです」
「フロントはプリダイブ+アンチダイブのセッティングが可能ですから、不必要な沈み込みを解消しつつ、よく動いて不安なくワインディングをいなします。リアサスペンションの接地感も秀逸で、パワーが確実にタイヤを通じて路面をとらえる感覚はまるでマシンを完全に理解して走らせているかのような快感に浸らせてくれます」
「このところオフロードバイクやスクランブラーばかり乗ってきた私には強烈なフロントブレーキは、使うほどに安心感を与えてくれ、ライディングアベレージが自然と上がっていくのを助けてくれます。好みを言えばもうちょっと柔らかいタイヤで楽しみたいところですが、これは賛否両論あるところかもしれません。それにしても、ツースト、楽しい!」
Vins Duecinquanta(ヴィンス・ドゥエチンクアンタ)
「80〜90年代のレーサーレプリカ全盛期の2サイクルエンジンを搭載した、250㏄のスポーツバイクを経験した方でも、この乗り味とエンジンはちょっと想像できないところにあったかと思います。2ストとは思えないほど中間がリッチでトルクに乗せて加速していく様は、まるで300㏄の2サイクルエンデューロマシンのようです」
「それが高回転まで続く一方で、アクセルを大きくひねればじゃじゃ馬のように駆け出すパワーを秘めているわけです。フロントの剛性感が高いから安心して前に荷重を預けて行くことができ、それが強い旋回力へとつながっていきます。走る、曲がる、止まる。すべてが楽しいスーパーマシンなのです」
デザインと性能を両立させた技術の結晶
ここまで、エンジンに注目してしまいますが、車体全体を通してVins Duecinquantaの構成を教えてください。
「そうですね。まず、高価なプライスタグばかりが独り歩きしがちですが、ハイブランドのスーパーバイクはすでに300-500万円台の価格が見えてきている時代です。そこにVINSが持つキャラクターを仕掛けていくと、到底この値段では作りこめないことは誰にでも簡単に想像できると思います」
「エンジンと車体のすべてがオリジナルであり、世の中のいかなるモーターサイクルをもってしても同じマシンに出会えることはありません。クイックファスナーだけで止められているアウターフェアリングは簡単に取り外しができ、その下には一般のモーターサイクルのフレームに相当するモノコックが控えています」
エンジンはストレスメンバー(機関部品をフレームの構造部材の一部として利用する方法)ではないため極めて軽量。モノコックは徹底的に空力を考えて設計されている。フロント両サイドのエアスクープはダイレクトにラジエーターを冷やし、通過する空気はそのままモノコックを通ってシート下に作られた負圧になる空間から吸い出され、極めて高効率なエアの流れを生み出す
ラジエーターもエンジンのサイズとパワーからは想像できないほど小型に収まっている。
フォーミュラカーの様にレイアウトされたリアショックユニットのおかげでできた空間を使って、チャンバーはほぼストレート形状で設計され、高出力にも貢献している
「車体もエンジンもすべてが画期的でありながら、単なる技術のショーケースではなく、目的のために生み出されてきた技術を提供して形に変えている、それがVINSなのです。どうです?決して高いだけのファンシーな商品ではないことが見えてきましたでしょうか」
まったく新しい考え方で設計されたエンジンは、空気、燃料、オイルを完全に分離してそれを制御して要求するという発想。リードバルブが提供するのはあくまでも空気だけであり、その周辺にチャネル構造で設けられたオイル吐出口から回転数に応じて適切にオイルを吐出する。ガソリンを噴射するインジェクターはリードバルブブロックの中央に独立して位置しているため、これも狙った時に狙った量だけを正確に噴射し、霧化させる。VINSがEURO5をクリアするほどに、2サイクルとは思えないほどエミッションがよいのはこの手によるところ。同時に燃費もよく、おおむね16km/L は走る。この種のスーパースポーツとは思えないほどといってもいい。
「何よりもこの時代に2サイクルエンジンで走りを楽しもうという心意気に乾杯したいじゃありませんか。そして、乗れば間違いなく掛け値なしに楽しい。そこに投資する価値を見出してくださるお客さまも、確実にいらっしゃいます。価値がわかって投下できる資金があるって素晴らしいですね。うらやましい⋯⋯」
「VINSがいつまでモータリストにあるかはわかりませんが、気になる人は是非見に来ていただきたいです。そして、出来れば乗る機会を作りたいですよね。もちろん誰にでもお乗りいただけるわけではありませんが⋯⋯サーキットイベントなんかに持ち込める機会があったらそれも楽しいだろうなぁ」
マシンの造りを考え、オリジナルのエンジンを作り出したことを考えて行くと、カーボンをふんだんに使用し、この価格でやれるんだという驚きの方が先行する。ある意味、本当に自分で作っているから実現できた価格とも言える
VINSに関する話は、ぜひモータリスト・カフェで!じっくり語らいにいらっしゃいませんか。お待ちしております。
モータリスト・カフェ
住所:東京都大田区仲六郷2-41-8(モータリスト・ファクトリー内)
定休日:不定休(主にイベント開催日)
営業時間:11:00-18:00
*カフェ部門(11:00-18:00)の営業はファクトリー営業日(毎週水・木定休)に準じます。
*バー部門(-22:00)は事前予約制。予約は当日でも可。営業日を問わず予約があれば営業。
安心してゆっくりとアルコールを楽しむ時間が過ごせるよう。オートバイあるいは自転車のお客さまに限り、有償で車両のお預かりも可能です。
最新の関連記事(モータリスト)
欧州での人気を背景により本格的なオフロードモデルに進化 2025年にフルモデルチェンジを行ったキャバレロラリー500最大のトピックは、従来モデルから大幅な見直しが図られた車体構成にある。これまでのラリ[…]
VINSのエンジンとLangenの技術が融合したモデル 早速ですが、正規代理店であるモータリスト代表の野口さんから、Langen 2Strokeについて教えていただけないでしょうか? 「Langenは[…]
本格イタリアン・スクランブラーをとことん味わう!! イタリア生まれ、イタリア育ち、海外の資本が入らない生粋のイタリアンブランドで、創業は1960年代だからもう50年以上の歴史のファンティック。日本に入[…]
83馬力へと進化した、完全新設計の2ストロークVツイン まず注目したいのは、なんといっても現代の環境規制に適合しながら公道を走れる完全オリジナルの水冷2ストローク250ccVツインエンジンだ。 ヴィン[…]
イタリア国内で生産完結することで技術力と品質を守る 今回、新型のキャバレロを生産している国はどこなのでしょうか? 「ファンティックは今、すべてのモデルをイタリアで生産しています。フルラインメーカーとし[…]
※本記事はが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。























