ハンターカブ”噂の真相”を追及する

「CT125ハンターカブは水中を走れるらしい!?」実際にやってみた【泳げCTくん!?】


●文:ヤングマシン編集部(谷田貝洋暁) ●写真:増井貴光 ●取材協力:モトツーリング編集部

現在、売れに売れているホンダCT125ハンターカブにまつわる”噂の真相”を確かめる! その1番勝負は、「ハンターカブは水中を走れるらしい!?」 シュノーケルのようにリヤキャリアの高さまで上げられたエアの取り入れ口、そしてアップタイプのマフラーに注目し、誰もが気になる(?)渡河性能――つまりどのくらいまで水に浸かっても大丈夫なのか検証した。

※注:今回の実験は私有地で、管理者の許可を得た上で行っています。通行が許可されていない河川や湖沼、海岸などでの入水走行はしないでください。また、この実験はCT125の渡河性能を保証するものではなく、同様の走行において車両故障などを招いても責任を負いかねます。

【確かめた人:谷田貝洋暁】「読者はそこを知りたいっ!」というキラーワードを振りかざし、無理/無茶/無謀の”3無い運動”を編集部に強いるフリーライター。

やばい時はエンジンカット! 転ける前にキルスイッチ!?

ホンダCT125ハンターカブについて、色々な”噂”が飛び交っている。「ハイマウントエアスクープに、サイドアップマフラーなら結構な水深でも走れるハズ…」「いやいやカタチだけでしょ?」「そもそも水の抵抗で125㏄じゃ進めないよ」

今や万能といわれるネットの海やSNSも無責任な憶測ばかりで、ホントのところは誰も教えちゃくれない…。当然、編集部としても開発陣に対し「実際どこまでの水深なら走れます?」なんて直球を投げつけてもみたのだが、言葉を濁すばかり(当たり前だ)。

ならば! ヤングマシンがやらなきゃ誰がやる!? そんなこんなで今筆者は、「やばい時はエンジンカット! 転ける前にキルスイッチ!」と呟きながら冷たい水の中へ飛び込むことになったのだ。

渡河で一番避けたい状況は、転倒水没にしろ冠水にしろ、吸気口からの吸水だ。負圧でエアクリーナーボックスへと吸い込まれた水は、当然そのままシリンダーへと流れ込む。こうなると当然プラグも濡れて失火…だけならまだいいが、恐ろしいのはウォーターハンマー現象。混合気と違いほとんど圧縮することができない水をしこたま吸い込んで圧縮をかけてしまったら…? 筆者もやったことはないが、行き場を失った力は水に押し戻されコンロッドをへし折れることだってあるらしい。

防御策は、水没前のエンジンカットしかない。シリンダーへと水が到達する前にエンジンを止めることができれば最悪の事態は免れられるというワケだ。

泳げ…じゃなかった! 走れ! ハンターカブ! お前ならこの危機的状況を乗り切れるハズだ!

まずは水深37cmから検証開始!

状況を改めて説明しよう! 今回のテストは、ヤングマシン兄弟誌『モトツーリング』長野支局の庭にある雪消し用のため池で実施した。しかも、実験車両も同編集部の所有車である。この場をお借りしてお礼を言いたい。サンキュー!

さて、このため池であるが、対角で約10mの長さがあり、池の底はコンクリート。底に泥が堆積しているものの、水深の変化は3cmほど。川渡り/渡河性能検証とは言っているが、いわゆる水害で冠水した道路が一番近しい状況と言えそうだ。

測ってみると、約25cmでアクスルシャフトが水没。約40cmでエンジンが水没。約60cmでフロントフェンダーが水没する。

池の深さを測ってみると最深部で40cm、平均37cmといったところ。シリンダーヘッドが7割方水没する深さだ。

エアスクープ&マフラーエンドの高さが約70cm。ここまで深いと吸排気系が水を吸い込む。最悪、ウォーターハンマー現象でエンジンお釈迦だ!

実験にあたってはマフラーエンドおよびエアスクープの上端70cmを限界値と定め、その半分の水深から検証を始めたのだが…、なんと水深37〜40cm程度なら余裕で走るじゃないか。

アクスルシャフトの水深越えたらマズイぞ!…なんて下馬評はどこへやら。晩秋の信州・水温12度の池でやることじゃないが、こういうアトラクションがあったら人気が出そうだ(笑)

【フツーに走れる!】37cm程度の水深なら、ものともせず進むハンターカブ。アクスルシャフト超えたら進まないなんて誰が言った!? フツーに進むし、Uターンも可能だった。

水深37cmで水中アイドリング完遂!

[写真タップで拡大]

【新説・水中はフローティングターンがしやすい!?】池の中をグルグル走っていて気がついたのは、水中ではフロントアップがしやすいってこと。浮力/水の抵抗など要因はいろいろあるだろうが、結果としてとにかく陸上よりフローティングターンがしやすい!

54cmまで水位アップ。果たしてクリアできるのか!?

そこで調子に乗って、タイヤが水没するかしないかの54cmまで一気にため池の水位を上げてみたのだが…、

【これくらいなら行けんじゃね?】水深37cmの結果でまだまだイケると確信。一気に池の水の水位を50cmオーバーまで上げてみることにした。エンジン、電装系&バッテリーまわりが完全に水没する深さだ。

【最深部で54cm!】実際に池の水位を上げてみると、17cmアップの54cmほど水が溜まった! しかし我々はこの後、重大なことを見落としていたことに気がつくのだ…。

「ヤバイ!」そう思った時にはもう戻れないところまで進んでいた。池の深さは入念に測ったハズなのだが、水位が予想以上に高いのだ。ヘッドライトを越えた水がスプラッシュマウンテンよろしく筆者の視界を遮り、搔き分けた水は膝下を洗ってるじゃね〜かっ!?

「ヘウレーカッ!」かの数学者アルキメデスは浮力を発見したとき、風呂の中でこう叫んだらしいが、筆者がすべてを理解したのはため池の中だ。バイクのサスって人が乗れば沈むじゃん? それに水も押されりゃ盛り上がるのが波じゃん!? 無事渡り切れたからいいものの、写真を確認してみればフロント側は限界値ギリギリまで水没してるじゃない!? CT125ハンターカブで水の中を進む時は、あまり勢いをつけちゃイケナイってことがわかったね。いやぁヤングマシンってためになる!!

【もはや水中走ってねえか!?】ウォータースライダーよろしく54cmの池へダイブ! 筆者もこの仕事を始めて20年近くになるが、水面の方がバイクがよく見える写真を見たのはこれが始めて。逆さ富士ならぬ、逆さハンターカブである。

「アクスルシャフトぐらいまでならたぶん大丈夫ですよ」。そんな関係者の助言はどこへやら!? しっかりフロントフェンダー上まで水没させてシマッタッ!! やるならトコトンがヤンマシ流だ!

【ここまで浸けて大丈夫なのか!?】上の写真がこの水深54cmで行った渡河である。…がどうみても60cm以上の水位があるように見える(笑)。水を押し分けるときの引き波ってすごい。ただ想定外のところまで水没させてシマッタ!

渡河後の車両の状態は大丈夫なのか? ということで後編へ

【不具合はないか? 専門家に診てもらおう】バッテリー/ヒューズボックスに藻が絡みついており、水がかかるというレベルではなく、しっかり水没していることが確認できた。エンジンにもかなりの水圧がかかったハズである。エンジンオイルをチェックするも、水が入り込んだ形跡はなし、…というかよくわからない。

ホンダCT125ハンターカブ “噂の真相” 5番勝負その1「ハンターカブは水中を走れるらしい!?」 後編では渡河実験後の車両へのダメージを専門家に診てもらうことに。


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