
初代BIG-1ことCB1000SFから、33年の長きに渡りホンダネイキッドのフラッグシップとして君臨してきたCB1300シリーズが、いよいよ生産終了を迎えた。BIG-1と共に数々の伝説を残してきた丸山浩がファイナルエディションを味わうとともに、これを手にするライダーに向けて、どうやったらBIG-1らしく走らせられるのか、どこにBIG-1ならではの楽しみがあるのか、そのコツを解説する! ※ヤングマシン2025年5月号より
●まとめ:宮田健一 ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダ
デカいバイクに挑むロマンがここにはある
これまで何度か噂には上っていたが、遂にそのときがやってきてしまった。’92年の初代BIG-1ことCB1000SFから30年以上の長きに渡り、ビッグネイキッドのみならずジャパニーズバイク界の金字塔として君臨してきたCB1300シリーズが生産終了を迎える。これまで何度も乗ってはきたが、ここで最後のCB1300となるファイナルエディションに跨り、あらためてBIG-1ならではの魅力、そしてその楽しみ方を読者にお伝えしたい。
TESTER 丸山浩
CB1000SFでのテイスト・オブ・フリーランス、CB1300SFでの鈴鹿8耐など、サーキットで巨大なCBを豪快に操り、BIG-1乗りたちに強烈な記憶を残してきた。自らのショップ“WITHME”の基礎を築いたのもBIG-1でのレース参戦があったからだ。
私がまず感動したのは、そのカラーリングだ。ファイナルエディションはスーパーフォア(SF)とスーパーボルドール(SB)、さらにそれぞれSTDと上級版のSPにも設定。今回乗ったSPがまとうのは、おなじみの白×赤カラーとなる。だが、その内容は限りなく初代BIG-1と同じ。
タンクに入る“HONDA”とその下に並ぶ““SUPER FOUR”のロゴ、サイドカバーに入る“PROJECT BIG1”の文字。よく見るとフロントブレーキディスクのインナーローターもゴールドになっていて「確かに1000SFはこうだった!」とあの頃の記憶を呼び覚ましてくれる。
’22年に出た30周年記念車の赤フレーム&ゴールドエンジンカバーのような派手さはないものの、ファイナルのカラーは最初にして最後を飾るものとして誰しもが「やっぱりBIG-1はこれだよな」と納得いく佇まいになっていると思うのだ。
【CB1300SF SP Final Edition】’25モデルのCB1300シリーズは初代BIG-1のCB1000SFカラーをモチーフにしたファイナルエディションとして設定。オーリンズサス+ブレンボのSPにはおなじみの白×赤カラーが与えられた。 ●価格:210万1000円 ●発売日:2025年2月28日
さて、あらためて押し引きしたり引き起こそうとすると、最近のバイクに慣れ切った身体にはやはり“デカい”そして“重い”。しかし、これこそがBIG-1たる存在意義であり、初代CB750FOURを前に本田宗一郎氏が口にした「こんな大きいバイクに一体誰が乗るんだ?」という言葉を彷彿とさせる。
そう!「こんな大きいバイクだからこそ、乗りこなせたらカッコイイ」。
BIG-1乗りたちの歴史は、このロマンを追い続けた33年間なのだ。
私がCB1000SFでレースを始めたのも「こんな大きいBIG-1で戦ったら、もっとカッコイイ」というのが始まり。このファイナルエディションで新たにBIG-1乗りの仲間入りを果たす人に伝えたい。乗りこなしのコツは「巨大なバイクをいかに軽々しく扱ってみせるか」、これに尽きるのだ。
もっとも、いざ実際のCB1300に乗ってみると、動き出した途端に重さがスッと消え、予想よりも軽く扱えることに驚くことはずだ。今どきスポーツバイクのような軽さこそないが、大排気量ならではの豊かなトルクが重い車体を低回転の街中から従順に走らせてくれ、なおかつそのエンジンフィーリングが上質極まりない。高速道路を使っての長距離クルージングに至っては快適そのもの。さすが技術とコストの限りを尽くしたフラッグシップのクオリティを存分に味わわせてくれる。
だが、それだけで満足してはBIG-1はもったいない。スポーツライディングを通じて、もっと深い部分も味わってもらいたいのだ。
ビッグネイキッド感を存分に味わえる威風堂々とした王道ポジション。ただし同じSC54 型でも’03初代よりサイドカバーの形状変更など熟成を重ねて足着き性は随分良くなった。【身長167cm/体重61kg】
自分からマシンに挑戦する気持ちを忘れるな
CB1300は今のSC54型となって重量感とスポーツ性のバランスがとことんまで熟成され、本当に「重いけど操って楽しめるバイク」になった。楽しんでもらいたいのは、まずはそのアイデンティティと呼べる直4エンジンだ。
同じ直4ではあるが、BIG-1はスーパースポーツのように高回転を使った馬力を利用する走りではなく、豊かなトルクを使った下からズドンと来る盛り上がり感を楽しむのが気持ちよさのポイント。だから峠では一定回転で走り続けるのではなく、スロットルのメリハリを活かしてコーナリングの進入では回転を落とし、開けられるところではしっかり開けるのがコツだ。
「巨体を軽々と操ってみせる」それがBIG-1流だ!
もちろん、それが安全にできる場所かどうか、ちゃんと道の先読み技術も要求されるわけで、こうしたところもBIG-1乗りがベテランライダーと呼ばれる理由のひとつとなっている。
コーナリングの立ち上がりでスロットルを開けたときは、そのサウンドの素晴らしさも味わってほしい。マイナーチェンジを重ね、’20で集合方式が4-2-1から4-1に改められた現在のマフラーは個人的に至高の完成度を誇っていると思っている。BIG-1乗りという者は往々にして自分好みのサウンドにたどり着くまで市販マフラーを2回も3回も交換するのは珍しくなかったのだが、このマフラーはノーマルでもサウンドとパワー特性ともにその必要がないのではとさえ思える。
スポーツライディングではないが、信号待ちをしている間もアイドリング状態から無意識にスロットルを軽くスナッチして「ボボボボボボ、ヴォンッ!」という大排気量直4ならではのダイナミックサウンドに酔いしれがちになってしまう。
さて、CB1300にはスポーツ性があると言っても、やはりコーナーを攻める際はスーパースポーツなどと比べるとはるかに重い。だからライディングフォームは腰を積極的にズラしたオーバーアクション気味がオススメだ。
CBの持つスポーツ性能を積極的に引き出せ!
マシンに旋回を任せるのではなく、身体をインに落として自分からマシンを曲げていくようなマインドで挑んでもらいたい。そうするとスポーツ性を引き出していくのを感じとれて楽しく、また端から見ていてもカッコよく“乗りこなしている”姿となっているはずだ。今のハンドル設定だとヒジは特に意識して上げる必要はないかな。肩幅に対して広すぎも狭すぎもせず、このあたりも熟成でベストポジションが完成している感がある。
同じく足まわりに関しても普段乗りから峠でのスポーツライディングまですべてに応える完成度だ。初代1300(SC40)のリヤサスではコーナリング中に重い車体を受け止めきるためにダブルプロリンクを用いていたが、今はサス本体の性能が良くなり、その必要もなくなった。さらにSPにはオーリンズサスとブレンボキャリパーが付いているが、STDのショーワサスとニッシンキャリパーでも峠でのスポーツライディングくらいなら十分なほどクオリティは高い。
それでも飽き足らずBIG-1でのさらなるカッコよさを追求するならサーキットということになるが、流石にレースまで戦おうとするなら覚悟しておこう。私がCB1000SFでレースしていた頃も実際に速く走らせるために費やした苦労はどれほどだったか。でもそうやって戦う姿がBIG-1には似合うんだよね。
ちなみにサーキット走行自体は楽しいので、ぜひ体験を。その際はサスが沈み切ったところでもうひとつ奥が残っているSPのオーリンズ&ブレンボはやはり嬉しい装備。この組み合わせは私の1000SFレーサーでも同じで、ビッグネイキッドやNK1レースのブームを知っている人には当時を思い出して懐かしんでもらうのもいいかもしれない。
巨大で重い車体を思うがままに操って見せるロマンを持ったBIG-1は、まさにCBのあるべき姿のひとつだった。今後も速くてスタイルも良いCBが誕生して新しい時代を作っていくのだとは思うが、BIG-1のようなロマンあるCBが消えてしまうのは非常に残念としか言いようがない。ユーロ5相当もクリアしていたことだし、もう少し頑張って続けてほしかった!
初代BIG-1カラーを忠実に再現
CB1300スーパーフォアSP ファイナルエディション 主要諸元■全長2200 全幅795 全高1135 軸距1520 シート高790(各mm) 車重266kg■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 総排気量1284cc 最高出力113ps/7750rpm 最大トルク11.4kg-m/6250rpm 燃料タンク容量21L■ブレーキF=Wディスク R=ディスク■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17
前後オーリンズサス+FブレンボキャリパーとなるSPのファイナルエディションは初代CB1000SFの白×赤カラーを忠実に再現。有終の美を最もBIG-1らしいカラーリングで締めくくる。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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