
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHIVE●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
並列4気筒と2気筒で基本設計/生産設備を共有
’74年初頭からスタートしたスズキの4ストプロジェクトは、次世代の旗艦として、カワサキZを凌駕する大排気量並列4気筒車と、その車両と基本設計/生産設備を共有するミドル並列2気筒車の2本立てで進行しており(後に550cc並列4気筒車も追加)、旗艦の排気量は当初960ccだった。
ただし同年秋に日本の免許制度改正の情報を入手したスズキは、ミドル2気筒車の排気量を中型免許に対応する400ccに設定。結果的にミドルとの共有化を図るため、旗艦は750ccに縮小されることになった。
もっともGS750/400を送り出した後の同社は、即座にGS1000/425(400のボアアップ版)に着手しているから、4スト第1弾の排気量を控えめにしたのは、安全策だったのかもしれない。
なおGS750と1000のエンジンとシャーシの構成は、超えるべき指針とされたカワサキZとよく似ているものの、エンジンの要となるクランクシャフトをカワサキ同様の組み立て式としたのは、既存の2ストで培った技術を転用した結果だったし、ダブルクレードルタイプのフレームは、前任に当たるGT750の発展型として設計されたものだった。
いずれにしても、GSとZの類似性を否定的に捉えるライダーやチューナーほとんど存在せず、それどころかZを徹底的に研究して生まれたGSは、高速安定性や剛性バランス、乗り心地、エンジンの耐久性などといった面で、Zを上まわる高評価を獲得することとなったのである。
ENGINE:Z系を凌駕する驚異の潜在能力
GS750が搭載する4スト並列4気筒の構成は、’72年の登場以来、大排気量スポーツバイクの王座に君臨して来た、カワサキZ系のエンジンとよく似ていた。
ただし、組み立て式クランクを支持するインナーレース付きベアリングや、クランクウェブとは別部品の1次減速ギア、トロコイド式のオイルポンプ、ラムエアシステムを取り入れたシリンダーヘッド、接触面積を広く設定したカムチェーンガイドなどは、スズキならではの特徴。耐久性とチューニングに対する許容量なら、GSの資質はZを上回ると言われた。
【ライバル勢よりショートストローク】65×56.4㎜という設定は、当時としてはかなりのショートストローク。同時代のCB750フォアは61×63㎜、Z1/2は66×66/64×58㎜だった。GS400は65×60㎜。
【ラムエアシステムで冷却】2/3番気筒のスパークプラグ周辺の冷却性を高めるため、シリンダーヘッドカバー上部にはアーチ状の導風板を設置。当時のスズキはこの機構をラムエアシステムと呼んだ。ホーンを水平配置したのも、冷却性を考慮した結果だ。
強制開閉式のキャブレターはミクニVM26SS。基本構成は同時代のカワサキZ用と同じだが、細部はスズキ用として専用設計。ちなみに、弟分のGS400は負圧式のBS34だった。
FRAME & CHASSIS:レースの技術を投入したシャーシ
形式は前任のGT750と同じダブルクレードルだが、世界GPやF750レースで培った技術を投入したGS750のフレームは、パイプワークを全面刷新すると同時に高張力鋼管を用いることで、軽量・高剛性化を促進。
同時代のライバルだったカワサキZやホンダCBとの相違点は、フレームのステアリングヘッドとリヤショックの角度が寝ていること、豊富な前後サスストロークが設定されていること、スイングアームの軸受けにニードルベアリングを採用していることなど。
フレーム前半部を構成する高張力鋼管はφ34/31.8/28.6mmの3種類。シートレールには細身のφ25.4㎜パイプを使用。
【ステアリングヘッド周辺の入念な補強】背骨となるトップチューブと左右タンクレールは、合計4 本のパイプと板材で連結。また、ステアリングヘッドパイプとダウンチューブは、プレス素材を用いた補強材で結ばれる。この補強材は走行風の流れも考慮して設計。
シートベースはスチール製。ヒンジは右側に設置するのが一般的だが、スズキ車は左側が多かった。テールカウルはリベットで一体化されたフタ付きの書類入れを介して、フローティング状態でマウント。
前後ショックはオーソドックスな構成だが、サスストロークは当時としては長めのF:160/R:85mm。’78年型以降のブレーキディスクは前後φ275mmだが、初期型のフロントはφ244mm。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
400cc4気筒ブームの立役者、第3世代の直4を実現したカワサキの戦略 Z1/Z2系からZ650のザッパー系に続くカワサキ直4の第3弾がZ400FX。1980年代初頭に日本で巻き起こった空前のバイクブ[…]
ミドル直4“ザッパー”見参! 次世代を見据えた新技術を余さず投入 1970年代中頃はZ1がすでにビッグバイク界を席巻していたが、カワサキはその名を不動とするため「Z1ジュニア」のコンセプトのもと、40[…]
国内規制に合わせてエンジンを再設計 ホンダのCB750フォア(1969年)の発売と前後して、大型バイクの事故の増加や暴走族が社会問題化し、国内では750ccを超える排気量のバイクを販売しない自主規制が[…]
ライムグリーンのローソン・レプリカが人気を独占 カワサキはZ1からZ1000Mk.IIまで進化を重ねたが、1980年代に入ると大排気量スポーツのライバル車が台頭。そこでZ1系のエンジンとシャシーを刷新[…]
本格オフロードモデルDT系を原付のちょうど良いサイズでリリース! ヤマハは1968年、250ccの大きな排気量で初のオフロード用2ストローク単気筒エンジンを搭載した画期的なDT1をリリース、以来125[…]
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI])
秋の浜松はスズキ祭り! 3つのミーティングが開催 2025年のスズキミーティングは、3つのモデルシリーズに焦点を当てて開催される。 9月7日(日) 「KATANA Meeting 2025」 会場:は[…]
発表と同時に発売! マットチタニウムカラーのアヴェニス125など新色×5種 スズキは欧州で、日本でいう原付二種に相当する125ccのスクーター×2車をカラーチェンジ。1車は2022年の現地登場以来(日[…]
鮮やかなブルーでスポーティな外観に 欧州においてスズキ「ハヤブサ」が2026年モデルへと更新された。アルティメットスポーツを標ぼうするマシンは基本的に2025年モデルを踏襲しながら、レギュラーカラーが[…]
鈴鹿8耐スズキブースは未来への期待満載! 鈴鹿8耐会場、スズキブースがアツかった。GPスクエアのスズキブースには、なんと新型GSX-R1000Rを含む未発売モデルがズラリと並んだのだ。グローバル発表直[…]
フレームまで変わるモデルチェンジ、かつリヤキャリアを新装備してたったの+6600円 スズキは、グローバルで先行発表されていた新型「アドレス125」の国内導入を正式発表。基本スタイリングは継承しながら、[…]
人気記事ランキング(全体)
ホンダ「CB1000F SE コンセプト」が鈴鹿8耐で世界初公開! 8月1日より予選が始まった“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第46回大会のホンダブースにて、CB1000F SE コンセプト[…]
日本では400だが、グローバルでは500(451ccエンジン)のエリミネーター 欧州でエリミネーター500/SEに新色が登場した。日本仕様でプラザエディションとしてラインナップされる『メタリックインペ[…]
キャッチニッパー :作業後のゴミが減り掃除が楽になる、切れ端を飛ばさないキャッチ機能付き 配線や結束バンドを切断した際に切れ端が飛び散るのは仕方がないというのが一般的な常識に対して、一方の刃にプレート[…]
鮮やかなブルーでスポーティな外観に 欧州においてスズキ「ハヤブサ」が2026年モデルへと更新された。アルティメットスポーツを標ぼうするマシンは基本的に2025年モデルを踏襲しながら、レギュラーカラーが[…]
仕事を通じてわかった、足を保護すること、足で確実に操作すること 今回は、乗車ブーツの話をします。バイクに乗る上で、重要な装備の一つとなるのが乗車ブーツです。バイクの装備といえばヘルメットやジャケット、[…]
最新の投稿記事(全体)
世界の二輪市場にBSA復活を知らせる2台の新型車 BSAブランドが再び動き出したのは2016年。自動車や二輪車、物流や不動産など多角的に事業を展開するインド/マヒンドラ・グループが、新たに起ち上げたク[…]
夏場は100℃超えも珍しくないけれど… いまやバイクのエンジンは“水冷”が主流。安定した冷却性能によってエンジンパワーを確実に引き出すだけでなく、排出ガス/燃費/静粛性の面でも水冷の方が空冷より有利な[…]
400cc4気筒ブームの立役者、第3世代の直4を実現したカワサキの戦略 Z1/Z2系からZ650のザッパー系に続くカワサキ直4の第3弾がZ400FX。1980年代初頭に日本で巻き起こった空前のバイクブ[…]
秋の浜松はスズキ祭り! 3つのミーティングが開催 2025年のスズキミーティングは、3つのモデルシリーズに焦点を当てて開催される。 9月7日(日) 「KATANA Meeting 2025」 会場:は[…]
今年の1月から6月までにニューモデルなどを11 機種投入した 大隅さんは、’98年にBMWジャパンに入社以来、ずっとモトラッド部門で勤務され、我々メディアと接する機会の多いマーケティング担当として働か[…]
- 1
- 2