
環境性能や維持費の安さから、近年注目度が急上昇している電動バイク。なかでも普段使いに便利な原付二種クラスはガソリン車からの代替としても良い選択肢だ。本記事では、そのメリットと、購入前に知っておきたいデメリット、そして国内で購入可能な主要車種を解説する。
「走る」を変える次世代の相棒
一般的なガソリンバイクが燃料を燃焼させてエンジンを駆動するのに対し、電動バイクはバッテリーに充電した電気でモーターを回して走行する。そのため、排気ガスを一切排出しない、環境に優しい次世代のモビリティとして2010年代からだんだんと注目を集めるようになってきた。
また、モーター走行ゆえにエンジン音がなく、圧倒的な静音性を誇る。早朝や夜間の走行でも、周囲に気兼ねなく走れるのは大きな利点だ。
免許区分については、ガソリンバイクが「排気量(cc)」で決まるのに対し、電動バイクは「定格出力(kW)」で区分される。たとえば、モーターの定格出力が0.6kWを超え1.0kW以下のモデルは、原付二種に分類されるのだ。
原付二種は、原付免許や普通自動車免許に付帯する原付免許では運転できず、「小型限定普通二輪免許」または「AT小型限定普通二輪免許」が必要となるのはガソリン車と変わらない。
電動バイクのメリット
電動バイク、とくに原付二種クラスの魅力は多岐にわたる。具体的にどのようなメリットがあるのか見ていこう。
燃料コストの安さ
電動バイクは、ガソリン車と比較してランニングコストを大幅に抑えられる。1km走行あたりの電気代は、ガソリン車の約3分の1から4分の1程度に削減可能とされ、おおよそ0.48円ほどである。たとえば、週5日往復10kmの通勤に利用した場合、月々の燃料代は520円程度に収まると試算されている。
自宅での充電と容易なメンテナンス
ガソリンスタンドに立ち寄る手間がなく、自宅の家庭用コンセントで充電できる点は時間の節約ともいえる。とくにホンダ「CUV e:」のようなバッテリー着脱式モデルであれば、バッテリーを車体から外して持ち運び、家の中など好きな場所で充電できるため、利便性が高い。
また、電動バイクはガソリン車に比べてパワートレーンの構造がシンプルであり、オイル交換などが不要なため、メンテナンスの手間が少なく、修理費用などのランニングコストも抑えられる傾向にある。さらに、電動バイクは法律上「軽二輪」以下の扱いとなるため、車検が不要なのも経済的なメリットだ。
スムーズな乗り心地と先進機能
電動バイクはモーター駆動のため、ガソリン車特有の振動がなく、ゼロ発進から最大トルクが発揮できるため、とてもスムーズで快適な乗り心地を提供してくれる。原則AT仕様なので、操作も簡単だ。
購入補助金制度の存在
電動バイクの普及を促進するため、国や地方自治体から購入費用の一部を補助する制度が用意されている。たとえば、東京都では国の補助金に加えて自治体の補助金も利用でき、合計で最大19万2000円もの補助が受けられるといった具合だ。
これらに加えて、原付二種クラスの電動バイクともなれば、法定速度が時速60kmであり、一般道で普通自動車と同じ速度で走行できる。さらに、二人乗りも可能(免許取得後1年以上)で、原付一種に義務付けられている二段階右折も不要と、日常の足としては必要十分。
原付通行禁止の標識がある道路でも通行可能であり、中型~大型バイクに比べて維持費が安いのもメリットだ。
電動バイクのデメリット
一方で、電動バイクには2つの注意点も存在する。
充電に時間がかかる
ガソリン車のように瞬時に燃料を補充できないため、フル充電には数時間を要することが多い。長距離移動は基本的には避けるか、充電場所や休憩をしっかりと考えてから出発したいところだ。
航続距離の制約
回生ブレーキなどもあり、原付二種クラスでも1充電あたり60km程度の航続距離を実現したモデルも登場しているとはいえ、ガソリン車と比べればまだまだ低い数値。基本的には、日常の足に向いているのが現状だ。
今買える! おすすめ国内メーカーモデル4種
原付二種クラスとなると限られてくるが、ホンダとカワサキからジャンルの異なる4車種が登場している。
ホンダ CUV e:52万8000円
ホンダの新型EVスクーター「CUV e:」は、ひと目でEVとわかる先進的なスタイリングが特徴だ。力強さと扱いやすさを両立した走りを持ち、脱着可能なバッテリーパック、Honda Mobile Power Pack e:を2個使用する。一充電走行距離は60km/h定地走行テスト値で57.0kmを達成する。0%から100%までフル充電に必要な時間は約6時間だ。
【HONDA CUV e】主要諸元◼︎交流同期電動機0.98kW 8.2ps/3500rpm 2.2kg-m/2300rpm ◼︎120kg シート高766mm ◼︎タイヤF=110/90-12 R=110/90-12 ●色: 白、艶消し黒、銀 ●価格:52万8000円 ●発売日:2025年6月20日
ホンダ ベンリィe:II/プロ:69万800円~
ビジネスユースを想定した原付二種電動スクーターだが、個人購入も可能なのが「ベンリィe:II/プロ」だ。60kgフル積載でも、12度の登坂性能を実現する。着脱式バッテリーパック「Honda Mobile Power Pack e:」を2個使い、一充電走行距離は60km/h定地走行テスト値で55kmを達成する。0%から100%までフル充電に必要な時間は約6時間だ。
【HONDA BENLY e:II】主要諸元◼︎交流同期電動機0.98kW 5.7ps/3900rpm 1.5kg-m/1500rpm ◼︎125kg シート高710mm ◼︎タイヤF=90/90-12 R=110/90-10 ●色: 白 ●価格:69万800円 ●発売日:2020年4月24日
カワサキ Ninja e-1:106万7000円
カワサキ初の公道走行可能電動スポーツバイク「ニンジャe-1」は、ニンジャ400ベースの車体に最高出力12ps、最大トルク4.1kg-mのパワーユニットを搭載する。eブーストを使えば15秒間限定で400ccクラス並みの加速が可能だ。航続距離はROADモードで55km(60km/h定地走行値)。バッテリー1個あたり、約3.7時間でフル充電が完了する。
【KAWASAKI Ninja e-1】主要諸元◼︎交流同期電動機 0.98kW 12ps 4.1kg-m ◼︎140kg シート高785mm ◼︎タイヤF=100/80-17 R=130/70-17 ●色:銀×緑 ●価格:106万7000円 ●発売日:2025年3月1日
カワサキ Z e-1:101万2000円
電動ネイキッドスポーツ「Z e-1」は、「ニンジャe-1」と同様にZ400ベースの車体と高出力モーターを持つ。最大トルクは400cc並みの4.1kg-mで、eブーストにより瞬間的な加速力も得られる。航続距離はROADモードで53km(60km/h定地走行値)。バッテリー1個の充電時間は約3.7時間でフル充電が可能だ。
【KAWASAKI Z e-1】主要諸元◼︎交流同期電動機 0.98kW 12ps 4.1kg-m ◼︎135kg シート高785mm ◼︎タイヤF=100/80-17 R=130/70-17 ●色:銀×緑 ●価格:101万2000円 ●発売日:2025年3月1日
まとめ:使用目的や航続距離から自分にあったモデルを選ぼう
環境に優しく、静かでスムーズ、そしてランニングコストが安い電動バイク。とくに原付二種クラスともなれば、高速道路走行こそできないが、一般道での利便性が高く、二人乗りや二段階右折不要といったメリットは大きい。購入を検討する際は、自身の使用目的や走行距離、そして自治体の補助金制度などを考慮して選ぼう。数はすくないが、それぞれ特長的なモデルが揃っているぞ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(新型バイク(日本車/国産車) | 新型原付二種 [51〜125cc])
新色パールレッドだけでなくホワイトとブラックも色味新たに スズキは、原付二種スクーターの「アヴェニス125」をカラーチェンジ。2022年の発売以来、初めての変更を受けるアヴェニス125だが、ニューカラ[…]
スーパーカブ110はオレンジを廃止、クロスカブ110には新色×2を追加 ホンダは、「スーパーカブ110」「スーパーカブ110 プロ」「クロスカブ110」「クロスカブ110・くまモン バージョン」を価格[…]
国内導入予定はないけれど……のZ125プロ カワサキは北米で2026年モデルを続けざまに発表している。ここで紹介するZ125プロは、前年から全カラーに採用したゴールドの倒立フロントフォークに加えて20[…]
地面を感じる直進安定性で日常の移動を安心快適に 決勝レース1で自己最高となる2位を獲得した第3戦を終え、全日本ロードレース選手権は8月下旬まで約2ヵ月間の夏休み。その間もいろいろと忙しいのですが、やっ[…]
通勤エクスプレスには低価格も重要項目! 日常ユースに最適で、通勤/通学やちょっとした買い物、なんならツーリングも使えるのが原付二種(51~125cc)スクーター。AT小型限定普通二輪免許で運転できる気[…]
最新の関連記事(新型バイク(日本車/国産車) | 新型EV/電動バイク)
インホイールモーターなど車体のベースはホンダ製 ヤマハが原付一種の電動スクーター「JOG E」を市販する。2002年に量産初の電動二輪車「パッソル(Passol)」を日本国内で発売して以降、原付一種E[…]
風のように静かで、1000㏄並みにトルクフル! ホンダは昨年のEICMA2024で「EV Fun Concept」を出展したが、今回のEICMA2025では「WN7」を発表。基本スタイルは踏襲するもの[…]
2026モデルのモトクロッサーYZ450Fをベースに電動化 電動トライアルマシンの「TY-E」でFIMトライアル世界選手権EVクラスに参戦するなど、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みにも積極的な[…]
Honda CUV e:(2025) Hondaが「2050年カーボンニュートラル社会の実現」に向けた取り組みの一環として進めている、2輪車の電動化。その歴史は1994年の「CUV-ES」から始まり、[…]
車重217kgに600ccクラスの動力性能 2週間前の9月2日に、欧州で「EV FUN Concept」の走行テスト映像を公開したばかりのホンダが、その量産バージョンのブランニューモデルを発表した。ホ[…]
人気記事ランキング(全体)
400で初のV4でもホンダ・ファンは躊躇なく殺到! 1982年12月にリリースされたVF400Fは、このクラスでは12,500rpmの未経験な超高回転域と0-400mを13.1secという俊足ぶりもさ[…]
快適性とスタイルを両立するスクリーン&バイザー 長距離ツーリングの快適性を求めるライダーにとって、風防効果の高いスクリーンは必須アイテムだ。「ブラストバリアー 車種別キット(スモーク)」と「エアロバイ[…]
バイクはお兄さんの影響 メグミさんは昔からバイクに興味があったのだと言います。 「兄が二人いて、どちらもバイクに乗っていたんです。小さいときからその様子を見ていたので、自然に自分も乗りたいと考えるよう[…]
世界のバイクメーカーをビビらせた初のアドベンチャーモデル オールドファンならご存じのBSAはかつてイギリスで旋風を巻き起こしたバイクメーカー。ですが、1973年には一旦その幕を下ろし、2016年にイン[…]
APトライク250って高速道路で通用するの? チョイ乗り系トライクとして知られるAPトライク125は、125ccという排気量ながら「側車付き軽二輪」という区分のおかげで高速道路を走れます。しかしながら[…]
最新の投稿記事(全体)
主流のワンウェイタイプ作業失敗時の課題 結束バンドには、繰り返し使える「リピートタイ」も存在するが、市場では一度締め込むと外すことができない「ワンウェイ(使い捨て)」タイプが主流だ。ワンウェイタイプは[…]
伝統の「火の玉/玉虫」系統 Z900RSのアイコンとも言える、Z1/Z2(900 SUPER 4 / 750RS)をオマージュしたキャンディ系カラーリングの系統だ。 キャンディトーンブラウン×キャン[…]
67年前に独自の車体構成で誕生したスーパーカブ 今から67年前の1958年に誕生したスーパーカブC100は、ホンダ創業者の本田宗一郎氏と専務の藤澤武夫氏が先頭に立って、欧州への視察などを通じて新機軸の[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
電子制御CVTがもたらすワンランク上の加速性能 ヤマハ軽二輪スクーターのNMAX155は、ʼ25年型で大幅進化。パワーユニットの熟成、リヤのストローク5mm延長を含む前後サスペンションのセッティング最[…]
- 1
- 2









































