
1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第144回は、モータースポーツ三昧だったある週末について徒然と。
Text: Go TAKAHASHI Photo: Aprilia, EWC, Red Bull, YM Archives
ヨーロッパラウンドで欧州勢が本調子に
MotoGP第8戦イギリスGPが行われた週末は、「モータースポーツ・ウィークエンド」で、なんだか忙しい日々でした(笑)。まずはMotoGPですが、娘がモータースポーツ好きの友人を家に連れてきて、みんなで一緒に観戦です。「たぶんアプリリアのマルコ・ベゼッキが勝つよ」と言ったら、みんな「ウッソ〜?」と疑いの眼差しでしたが、結果はご存じの通り、ベゼッキが優勝。父親としての威厳を保つことができました(笑)。
もちろん、まぐれで当たったわけではありません。レースウィークの流れを見ていて、ベゼッキは決勝を想定した組み立てがかなりしっかりできていましたし、タイヤのタレも少ないようだったんです。土曜日のスプリントレースでは表彰台に立てませんでしたが、「これは日曜日は来るぞ」と予感させるものでした。
前戦のホンダ+ザルコに続き、アプリリア+ベゼッキがドゥカティ勢の優勝を阻止。
小椋藍くんは、イギリスGPで転倒し、ケガしてしまいました。開幕からのオーバーシーズではかなり調子がよかったのですが、ヨーロッパラウンドに入ってからはなかなか思うような走りができていないように見えます。以前、このコラムで「ヨーロッパラウンドが始まれば、苦戦もするはず」と書きましたが、当たってほしくない予想が当たってしまいました……。
これはもう昔からのことですが、日本人ライダーはなぜかヨーロッパラウンドで本調子が出せない、というジンクスのようなものがあります。なぜかって? それは僕も聞きたい(笑)。よく言われるのは日欧サーキットの路面の違いですが、藍くんなどは日本のサーキットよりヨーロッパのサーキットの方が走り込んでいるぐらいでしょうし、何しろMoto2チャンピオンですからね……。ヨーロピアンライダーとの間でも、路面に対する経験値の差はないと言っていいと思います。
僕の経験から考えるに、日本人ライダーがヨーロッパで本領発揮できないのではなく、「ヨーロピアンライダーの中には、ヨーロッパで急に速さを発揮するヤツがいる」という感じです。僕の現役時代だと、マックス・ビアッジ、ロリス・カピロッシ、ラルフ・ワルドマン、オリビエ・ジャック、フォンシ・ニエト、そしてジェレミー・マクウイリアムズおじさん……。彼らはヨーロッパラウンドに入ると「あれ? こんなに速かったっけ?」と、急にイキイキする連中でした……が、思えばチャンピオンも多いですね。
1995年、マックス・ビアッジと原田哲也による激闘──。(特集記事は下記リンクへ)
ぜひとも理由を知りたいところですが、ひとつ考えられるのは、ライディング面ではなく、メンタル面ですね。彼らヨーロピアンライダーにとってのヨーロッパラウンドは、僕たち日本人ライダーが岡山に行ったり熊本に行ったり仙台に行ったりするようなもの。レースが終わればすぐ家に帰れるのは、やはり大きいと思います。
特にイタリア人、スペイン人は家族大好きなお国柄。レースウィークが終わってすぐに家に帰り、「マッマの料理」が食べられるのは、それだけでも大きな支えになっているはずです。
そんなことで……と思うかもしれませんが、レースは緊張感の高いスポーツですからね。逆に長いヨーロッパラウンドの間、ほとんど母国に帰れない日本人ライダーは、なんだかんだつらいものだと思いますし、そういったことが影響しているのも確かです。
モナコで感じる強烈なF1人気
そして、F1モナコGPです。家のバルコニーからは最終コーナーあたりが見えるのですが、モナコGPの時って、夜はコース自体がクラブになるんですよね。土曜の晩に散歩がてら行ってみましたが、ものすごい人出! どんちゃん騒ぎのパーティーが明け方まで続いていました。朝の5時にコースがクローズされ、清掃が入り、7、8時には前座レースが始まるんですから、ある意味すごいオーガナイズです……。
それにしてもF1人気は本当に強烈です。NETFLIX「Formula 1:栄光のグランプリ」の影響もかなり大きいようで、若年層が増えているようにも感じました。MotoGPも、F1と同じリバティ・メディアに買収されましたが、今後、同社によるさまざまな施策が打ち出されれば、さらに人気が高まるのではないかと期待してしまいます。
今年のF1モナコGP。
アメリカではインディ500が開催されていました。友人でもある佐藤琢磨くんを応援します。今の彼はインディ500にだけスポット参戦していますが、今年はなんと予選2位! インディ500・3勝目に期待です。決勝でも一時はトップを走る健闘を見せましたが、ピットストップでのオーバーシュートなどがあり、11位でフィニッシュ。上位の失格により、結果は9位となりました。
残念ではありますが、インディ500しか出ていないにも関わらず、予選2位、決勝も優勝を狙えた位置を走っているのが本当にすごい! 琢磨くんも今年で48歳ですからね……。
今年の鈴鹿8耐も盛り上がりそう!
そして日本では、スポーツランドSUGOで全日本ロードレースが行われていました。こちらはYouTubeでの観戦でしたが、SP忠男レーシングチーム&ヤマハの後輩にあたる中須賀克行くんが2レースとも優勝。久しぶりの彼の心からの笑顔を見られたような気がします。
YZF-R1にウイングレットが装着されたこともあって、開幕戦では少し攻めあぐねているような印象でしたが、さすがに第2戦ではしっかりと合わせ込んできたようです。彼も今年で44歳になりますが、まだまだ強い! こういう強いライダーがいてくれるのは、全日本のレベルを高めるという意味で、すごくいいこと。今年も「打倒・絶対王者」を誰が成し遂げるのか、そして倒されないように中須賀くんがどう頑張るのか、注目したいと思います。
そういえば、鈴鹿8耐で話題になっているのは、ヤマハからジャック・ミラーが参戦すること。ルカ・マリーニがテストで転倒し大きなケガを負ってしまったのは残念ですが、ザルコの参戦も囁かれていて、今年もかなり盛り上がりそうです。
僕が監督を務める「NCXX Racing with RIDERS CLUB」もSSTクラスに参戦しますので、ぜひ注目してくださいね!
昨年の鈴鹿8耐で勝利、そして──
今年のフランスGPにおけるフランス人による71年ぶりの地元GP勝利ですっかりホンダファンの心をつかんだヨハン・ザルコ。今年の8耐も参戦がほぼ確実といわれる。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([連載] 元世界GP王者・原田哲也のバイクトーク)
現行レギュレーションは最後になる2026年 2月27日に開幕を迎えたMotoGP2026シーズン。注目のトピックスはたくさんありますが、僕が注目しているのは1000ccエンジンとミシュランのワンメイク[…]
開幕戦タイGPを前に WRCで大活躍している勝田貴元選手と食事をしました。彼は’24年からモナコに住んでいるんですが、なかなか会う機会がなかったんです。実はMotoGPもかなり好きでチェックしていると[…]
マルケスですらマシン差をひっくり返せない時代 ヤマハが2026年型YZR-M1を発表しました。直線的なフロントウイングの形状など、ドゥカティ・デスモセディチにやや寄せてきた感がありますね(笑)。一方、[…]
第5位 フランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team) こんなところにバニャイア……。ちょっと信じられない結果ですね。とにかく激しい浮き沈みの波に翻弄された、’25年のバニャイア。[…]
2025年もあとわずか。月日が経つのは本当に早いですね! 僕も今年はいろいろとドタバタして、ここまであっという間でした。2025年最後の今回は、MotoGPのポイントランキングを遡りながら、今シーズン[…]
最新の関連記事(モトGP)
速いヤツの方を向くしかない タイGPで気になったのはドゥカティだ。いよいよマルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)の影響が及んできたのか、内部的に若干意見が分かれ始めているような感じが[…]
アコスタの初勝利、ベゼッキの独走 行ってきました、2026MotoGP開幕戦タイGP! タイは昨年半ばからカンボジアとの間で国境紛争があり、ブリラムサーキットは市民の主要避難所として使用されていた。だ[…]
現行レギュレーションは最後になる2026年 2月27日に開幕を迎えたMotoGP2026シーズン。注目のトピックスはたくさんありますが、僕が注目しているのは1000ccエンジンとミシュランのワンメイク[…]
SHOEIが1名増、「X-Fifteen マルケス9」はまさにリアルレプリカ WSBK(スーパーバイク世界選手権)で3度頂点を極めたトプラック・ラズガットリオグル(プリマプラマックヤマハ)のMotoG[…]
開幕戦タイGPを前に WRCで大活躍している勝田貴元選手と食事をしました。彼は’24年からモナコに住んでいるんですが、なかなか会う機会がなかったんです。実はMotoGPもかなり好きでチェックしていると[…]
人気記事ランキング(全体)
1.「裏ペタ」という不思議なカスタム SS系やストリートファイター系のカスタムバイクで、時折見かけることがある「裏ペタ」。要はナンバープレートを、リヤフェンダーの内側に貼り付けるカスタム(!?)のこと[…]
シトロエンが欲しがったミウラの対抗馬 1966年のジュネーブ・モーターショーで発表されたランボルギーニ・ミウラは世界中に衝撃を与えたこと間違いありません。当時、マセラティを所有していたシトロエンも同様[…]
実は9000台程度しか生産されなかったレアモデル 実のところヨーロッパは、1966年から1975年の間に9000台程度が製造されたにすぎません(諸説あります)。ロータスの会社規模を顧みれば、それでも多[…]
365GTB/4 デイトナ:275GTB/4を引き継ぎつつ大幅にアップデート 1968年のパリ・モーターショーでデビューした365GTB/4は、それまでのフラッグシップモデル、275GTB/4を引き継[…]
どんな車種にも似合う、シックなモノトーン仕様 通常のエアーコンテンドジャケットといえば、レーシングスーツ譲りのカッティングとスポーティな配色が持ち味だ。しかし、今回のリミテッドエディションではあえて色[…]
最新の投稿記事(全体)
心臓部は信頼のCSR社製。安定感は「本物」だ! まず注目したいのが、インカムの命とも言える通信チップだ。「T20 Plus」には、国内トップブランドの高級機にも採用されるCSR社製チップを贅沢に投入。[…]
新時代のハイブリッド通信「B+FLEX」がヤバい! 今回の目玉は、なんと言っても新開発の通信方式「B+FLEX」だ。 従来のメッシュ通信と、スマホの電波を使ったオンライン通信を融合させたハイブリッド方[…]
最後に出てきたスゴイやつ 1988年、GPZ400Rでストリート路線を進んでいたカワサキが、スポーツ性能を追求したZX-4を投入する。E-BOXフレームの採用など、実力こそ確かだったものの、ツアラー然[…]
コンパクトでちょうどいい収納力の防水仕様バッグ ツーリング中の突然の雨や、小物の収納場所に困った経験はないだろうか。大きなシートバッグを積むほどではないが、ジャケットのポケットだけでは容量が足りない。[…]
固着したネジと会ったら黄金ルールを思い出せ バイクをメンテナンスしたりレストアしたりしているとしょっちゅう出会うのがコレ「固着したネジ」です。 はい、今回も遭遇しました。古いモンキーのクラッチのカバー[…]
- 1
- 2







































