変わっていないようで中身は激変!

選ばない理由が見当たらない?! ホンダ新型「レブル250 Eクラッチ」は細やかな制御で完成度がネクストレベルに【試乗インプレッション】

ホンダ|レブル250|Sエディション|Eクラッチ|インプレッション

ホンダ「レブル250 Eクラッチ(Rebel 250 E-Clutch)」のメディア向け試乗会が開催されたので、編集部(ヨ)が参加してきた。読者諸兄が気になっているであろうEクラッチの出来栄えと、マイナーチェンジしたレブル250がどう変わったのかという二面から試乗インプレッションをお届けしたい。


●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダ

約8割が選ぶというEクラッチ仕様

「ずるいですよ、あんなの売れるに決まってるじゃないですか……」と、他メーカーからの嘆き節も漏れ聞こえてくるというホンダの新型モデル「レブル250 Sエディション Eクラッチ」に試乗した。

2017年に発売されたレブル250は瞬く間に軽二輪(126~250cc)クラスのトップセラーに躍り出て、それからずっと販売台数1位をキープし続けている。そこにEクラッチ(正式名称はHonda E-Clutch)+クイックシフターを追加して、価格はマニュアルクラッチモデル(新型は従来型から2万7500円上昇)からプラス5万5000円に抑えているのだから、「みんなこれ買っちゃうでしょ……」という気持ちになるのも頷ける話だ。

2025年モデルでは、無印スタンダードにマニュアルクラッチ仕様とEクラッチ仕様を、また純正アクセサリーを中心にスタイリングを上質化したSエディションにはEクラッチ仕様のみをラインナップ。さらに、シートやハンドル、サスペンションなどに変更が加えられ、上質な乗り味を手に入れている。

左はRebel 250 S Edition E-Clutch、右はRebel 250 E-Clutch。クラッチレバーがあるので左側から見るとEクラッチの有無はほぼ判別できない。

今回試乗できたのはSエディションのみだが、まずは約8割のユーザーが選んでいるというEクラッチの完成度についてレポートしていこう。

ちなみに、ホンダの説明によれば、約2割のライダーがマニュアル仕様を選ぶ理由としては、Eクラッチ人気によって無印のほうが早い納車になることや、無印だけが採用する車体色、また価格差などが挙げられるそうだ。

早くも熟練の制御を感じさせるEクラッチ第2作

跨ってエンジンを始動し、クラッチレバーを握らずにギヤを1速に落とす。4気筒マシンのCB650R/CBR650R(Eクラッチを初搭載したマシン)で経験があるとはいえ、この操作には慣れず最初の1回目だけは少し緊張する。

なんの挙動も示さずスムーズに1速に入り、「ストトトト」とアイドリングするエンジン。あとはスロットルを開けるだけで発進可能だ。

スクーターやスーパーカブなどと同じようにオートマチック的な発進だが、半クラッチを経てクラッチが繋がっていく中で感じたのは、度を越した“馴染みやすさ”だった。

4気筒エンジンにEクラッチを組み合わせた650では、エンジン特性からか回転上昇と発進加速がシンクロするまでにわずかな待ち時間を感じたものだった。これに対し、レブル250の場合は試乗最初の1メートルから、クラッチの食いつきと加速、エンジン回転の上昇がとても自然にシンクロしていくように感じられたのだ。これは半クラッチ状態が長い/短いというよりも、4気筒と単気筒のエンジン特性ゆえに生じるダイレクト感の違いかもしれない。

クラッチを操作しなくても、スロットル操作に合わせて半クラッチ領域が繋がりはじめから2000~3500rpmまで自動的に変化するので、積極的な加速もスムーズな加速も思いのまま。

少し加速してから2速にシフトアップすると、もはや絶品と言えるほどのスムーズさ。並みのクイックシフターよりも素早くシフトアップが決まるうえに、人間の操作では不可能と思えるほどの短い半クラッチが自動で挟まることにより、ほぼ完全にショックレスだ。点火カットによる瞬間的な減速感も最小限に抑えられている。

シフトダウン側にも嬉しい驚きがあった。シャキシャキしたスポーティさが特徴の4気筒650よりも明らかに半クラッチが長くとられ、とても優しい制御になっている。単気筒ゆえの強めのエンジンブレーキや脈動を上手に逃がしている印象で、シフトダウン操作によりライダーの身体が前後に揺すられる幅は極めて小さい。エキスパートライダーにタンデムしてもらってクラッチ操作の丁寧さに驚いた……そんな経験を思い出した。

これらのシフトアップ/シフトダウンは、かなり雑な操作をしてみてもスムーズさを失うことはなく、なんならスロットルを開けながらのシフトダウン/閉じながらのシフトアップでも余分な挙動を可能な限り小さく抑えてくれる。

このほか、走行中/停止中を問わずクラッチレバーを握ればマニュアルクラッチモードに移行するが、650に比べて少しタイムラグがあり、一瞬握った程度では切り替わらない。誤操作を防止する意味で初心者に優しい設定だが、せっかち気味のベテランだと少し気になる人もいるかもしれない。

ワインディングで使うような中~高回転域では、極めて出来のいいクイックシフターといった印象で、気になるところは何もない。

そこそこの速度域(50~60km/h程度)になると、単に出来のいいクイックシフターという使い勝手になる。いや、“とても出来のいい”クイックシフターだ。

一方で、街乗りでは交差点などの小回りなどで適切なギヤを選ぶというマニュアル車では当然の操作を一瞬忘れそうになる(オートマと思い込みそうになる)こともあったが、少し走れば慣れてしまった。Uターンなど極低速の速度調整はスロットルを軽く開けながらリヤブレーキで行うが、これはスクーターなどのAT車と同様だ。

このほか、低い速度でチャカチャカと6速までシフトアップしていったり、加速してからも低めのギヤをキープしてみたりしたが、特定のイレギュラーなことが起こらない限りは全く気になるところがなかった。

この“イレギュラーなこと”ってどんなこと? とお思いでしょう。代表的なのは前走車についていって停止する寸前、急に再加速が必要になるような場面だ。こうしたシチュエーションでは、1速では出足がよすぎて“ドン”と軽い衝撃があるか、2速では少し加速が物足りなかったりする。マニュアルクラッチであれば、適当な半クラッチで誤魔化すことができる場面だろう。Eクラッチでそんな状況を経験したことにより、普段の運転ではかなりの頻度で半クラッチ操作をして駆動力が曖昧な領域を作り、帳尻を合わせて(誤魔化して)いることにも気づかされた。

さまざまな状況を無意識にこなしていく街乗り&混合交通のほうがEクラッチの存在を実感しやすかった。

なんにせよ、こうした場面ではEクラッチ車ならではの扱い方が必要になる。1速でスロットル操作を丁寧にするか、2速のまま少し大きく開けるか、さもなくばクラッチレバーを自分で操作するか、だ。

そう、Eクラッチの最大の特徴は、普段は自動クラッチにお任せできるうえに、ライダーがいつでもマニュアル操作で介入できるところにある。

ただ、新しい機構を使いこなしたい気持ちから「クラッチレバーを操作したら負け」という心理が働くのも事実で、なるべく自動制御に任せるか自分で操作するか、迷いが生じる瞬間もあった。

といっても、これを煩わしいとは感じない。新しい技術が入れば、ライダーはそれに慣れようとして工夫していくもので、これはこれでゲーム性のように思えたからだ。慣れればマニュアル操作をすべきか、Eクラッチに任せるべきか、瞬時に判断できるようになるだろう。

ちなみに、トランスミッション自体はマニュアル機構なので、ギヤシフト操作はライダーに完全に委ねられている。適切でないギヤを選択していると『シフトダウンしてください』的な表示がメーターに現れるのだ。例えば6速では、35km/h以下になると警告が表示され、自動的に半クラッチになる。それでギクシャクするとかエンストするといったことにはならないが、半クラッチが不必要に長くなってしまい、多用するとクラッチ板の摩耗が早まる恐れがあるので注意が必要とのこと。2~6速発進もできなくはないが、もちろん非推奨だ。このほか、4気筒650ではジムカーナなど特殊なケースを想定してオフにできたEクラッチの作動について、レブル250の場合はオン/オフの機能が省略されている。

質感の向上は、10万円くらい高いバイクになったかのよう

Eクラッチの話が盛りだくさんになったが、その他の領域もしっかりと熟成が感じられた。キーワードは『上質感』だ。

見た目で言えば、樹脂製フロントフェンダーおよびスチール製から樹脂製になったリヤフェンダーが燃料タンクと同色になったことにより、上質なたたずまいになった。厳密に言えばスチールのタンクと樹脂フェンダーは違う塗料を使っているそうで、同じ見え方になる塗料が開発できたから色を揃えられたという面があるそうだ。これだけで5万円ほど高いバイクに見えるようになった(あくまでも感覚的に)。以前からあるブロンズカラーのホイールもよく似合う。

燃料タンクとヘッドライトカウル、前後フェンダーが同色になったことでだいぶ雰囲気が変わった。ホンダ公式の写真素材で見るよりも実物は明るい色味だ。以前のシンプルな雰囲気が好きという方はブラック系のカラーを選ぶといいかも。

Eクラッチユニットは水平基調の車体デザインに調和するようにマウントされ、“弁当箱感”が否めなかった4気筒650よりも違和感なく収まっている。これもデザイン上で高く評価したいポイントだ。

クイックシフターとセットで採用するのが前提で、スロットルバイワイヤ(電子制御スロットル)なしでもスロットル操作なしでシフトダウンできる。そのぶん価格を抑えながら、これほど上質なフィーリングに仕立てているのはお見事!

また、ミニマムなデザインゆえにスペースが少ないこともレブル250の特徴だが、見た目を変えずにEクラッチ採用で増えた補器類をシート下に収めるべく、執念ともいえる工夫がされていたことも特筆しておきたい。

乗り味で言えば、シートのクッションが高反発ウレタンに変更されたことにより、コシのある吸収性を発揮するようになったのが印象的。以前のモデルは筆者の体重(81kg)だとクッションが段差の乗り越えなどで潰れ切ってしまい、衝撃を吸収しきれない場面がまあまあ多かった。

また、新型ではリヤショックのバンプラバーを変更することにより、サスペンション側でも底突き感を減らしたという。サスペンションの減衰特性などは変わっていないというが、シートとの相乗効果で乗り心地はかなり改善されたと思う。これもプラス5万円分くらいの価値があるように感じた。Eクラッチによるスムーズな挙動も、実価格で+5万5000円の価値が十二分にある。

扱いやすくなったのはハンドルだ。グリップ位置を手前に6.5mm、上方に5mm移動し、左右幅は各8.9mm狭くなっている。この数値からイメージする以上にハンドルバーがライダーに近づいたように感じ、ハンドルを切ったときに腕が伸びきってしまうという小柄なライダーには福音になりそうだ。

写真左は身長175cm/体重68kg、写真右は身長183cm/体重81kgの場合。シート高は690mmであり、足着き性のよさはクラス随一だ。ハンドルバーは変更された数値以上にライダーに近づいた印象で、リラックスしたライディングポジションになる。相対的にシートに預ける体重は少し増えるが、高反発ウレタンを採用した新しいシートクッションにより乗り心地は良好だ。ステップ位置は従来から変更なし。大柄なライダーでも窮屈には感じなかった。

このほか、Eクラッチユニット搭載による右側重量増に対応するため、フロントフォーク内部部品を左右非対称にしたり、ハンドルウェイトの左右重量バランスを調整したりして、直進安定性や操縦安定性を向上させているそうだ。違和感なく直進できるという、当たり前のように思えることにも技術が注ぎ込まれている。

まとめ

今回、Eクラッチ仕様をさまざまな扱い方で試してみても、選ばない理由になるようなネガティブさは(個々人の好みは別として)微塵も感じられなかった。

しいていうなら、自動クラッチ機構全般に言えることだが、クラッチを触らないことによってコントロールするための手札が一枚減ったような気がしてしまうこともある。とはいえ、Eクラッチであればクラッチレバーを手動で操作することも可能なので、これも全く大したことじゃない。

大型バイクではDCTに続きAMTなどオートマチック機構が流行の兆しを見せ始めているが、250ccクラスのような普及価格帯で、誰もが味わえる安心感と便利さを提供してくれるのがEクラッチの強み。

自分が初心者だったころを思い出しても、上り傾斜の踏切での一時停止などで緊張したことを思い出す。Eクラッチがあればそんな心配が不要になるわけだ。

世界市場においては販売台数の多い4気筒650シリーズだが、こと日本国内においては大人気モデルとは言い難い。そこで軽二輪クラスのトップセラーであるレブル250にEクラッチを採用してきたことに、ホンダのEクラッチ普及への本気度がうかがえた。この値段で双方向のクイックシフターと自動クラッチが手に入るんだから、こりゃあ売れるよね……というのが偽らざる本音だ。

Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch[2025 model]

ちょっとだけマニアックな【FAQ】

Q.これってオートマ?

A.クラッチ操作を自動的に行うだけで、トランスミッションについてはマニュアルと全く同じ機構を採用しているので、ライダー自身でギヤチェンジを行う必要がある。

Q.こういう自動機構のバイクに乗ると操作が下手になるのでは?

A.クラッチ操作に限って言えば上達の機会が減ると言えるが、そのぶん積極的なギヤ操作を駆使したりリヤブレーキを操作したりと、別の領域が上達できる可能性がある。なので一面的にはYESだが、トータルではそうとも言えない。

Q.シフトダウンではブリッピングいらず?

A.スロットルバイワイヤ(電子制御スロットル)によるオートブリッパーなしでも、適切な半クラッチでシフトダウンのショックを逃がしてくれるのがEクラッチ。とはいえ、わずかなトルク変動は感じられるので、手動でブリッピング(スロットル操作による回転合わせ)をするとさらにスムーズになる。シフトアップに関しては下手に合わせようとするよりスロットルを開けたままのほうがスムーズだ。

Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch[2025 model]

Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch[2025 model]パールカデットグレー

Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch[2025 model]パールカデットグレー

通称名Rebel 250 S Edition E-Clutch
車名・型式ホンダ・8BK-MC49
全長×全幅×全高2205×810×1090mm
軸距1490mm
最低地上高134mm
シート高690mm
装備重量175kg
エンジン型式水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ
総排気量249cc
内径×行程76.0×55.0mm
圧縮比10.7:1
最高出力26ps/9500rpm
最大トルク2.2kg-m/6500rpm
始動方式セルフ式
変速機常時噛合式6段リターン
燃料タンク容量11L
WMTCモード燃費34.9km/L(クラス2-2、1名乗車時)
タイヤサイズ前130/90-16
タイヤサイズ後150/80-16
ブレーキ前油圧式ディスク(ABS)
ブレーキ後油圧式ディスク(ABS)
価格73万1500円
車体色黒、灰
発売日2025年3月13日
 

新型レブル250のディテール

レブル250 Sエディション Eクラッチ

ヘッドライトはLEDの発光ユニットを4つ採用。ロービームで上2つが光り、ハイビームでは全灯が点灯する。

ハンドルはグリップ位置で手前に6.5mm、上方に5mm移動し、左右幅は各8.9mm狭くなった。

メーターは反転表示で視認しやすい。Eクラッチが自動モードになっているときは下部の緑のAマークが点灯し、シフトダウンを促す際には点滅。またギヤポジションインジケーターの横にも下向きの矢印が出る。

水平基調の車体デザインに合わせて駆動モーターを垂直に、カバーを水平にしたEクラッチユニット。クラッチケースカバーがコンパクトなこともあってか、4気筒650よりも自然に溶け込みコンパクトに見える。

コンパクトな燃料タンクは従来同様。体格によっては右側のEクラッチユニットがニーグリップの際に気になるかも。

シートクッションが高反発ウレタンに変更されたシート。今回のモデルチェンジ項目の中でも白眉といえる。

レブル250 Eクラッチ

無印のレブル250(写真はEクラッチ仕様)はヘッドライトカウルとフォークブーツが省略。

シート表皮もプレーンなものを採用する。高反発ウレタンは同じく新採用。


Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch[2025 model]

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