
ヤマハは1970年代中頃まで、他社の模倣を良しとせず4気筒&大排気量化の波に乗らなかった。あえて2気筒や3気筒を旗艦に据えていたが、1978年、XS1100で初の4気筒モデルを発売。ただし他社のスポーツ指向とは一線を画しグランドツアラーを選択。あくまで独自路線を貫いた。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
国産車として当時最大の1101ccをマーク【1978 ヤマハXS1100】
ヤマハもカワサキやスズキと同様に、1960年代までは2ストを主体に開発を続けてきたメーカーだ。しかし、自動車エンジン部門ではトヨタのクラウンや2000GT、セリカなどを手がけた実績があった。
二輪車として初のヤマハ製4スト車は、1970年発売の650cc 2気筒エンジンを積むXS1だった。次いでTX750やTX500を生みだし、1976年には3気筒DOHCのGX750をリリースする。
これらのモデルに見られるように、軽量/スリム/コンパクトがヤマハ車の基本コンセプトではあったが、いよいよ世界最速をめざして4気筒の開発に着手する。
当初はGXに1気筒プラスする構想で1000ccの4気筒が開発されていたが、スズキGSを超えるパフォーマンスを獲得するため、さらに排気量を拡大して1101ccが与えられた。
これは国産車としては当時最大の数値であり、「イレブン」のインパクトは強大だった。
1977年プロトタイプ発表の時点で、すでにGX同様のシャフトドライブが与えられており、これは無論レース向きとは言えない設計だ。
しかし、重厚路線で最大最強最速モデルを作ろうという意気込みが見て取れた。かくして北米、欧州を中心にXSイレブンは好評を博すに至ったのだ。欧米では1978年からの5年間で約10万台が販売された。
一方、ロードスポーツの車体とエンジンを流用した、いわゆるアメリカン仕様=クルーザー(ヤマハ呼称は“スペシャル”)を派生させる車体作りも定着しはじめていた。XS1100にも“スペシャル”が投入され、とくに黒×金カラーの“ミッドナイトスペシャル”は、そのネーミングと相まって大いに人気を集めた。
【1978 YAMAHA XS1100】■空冷4スト並列4気筒 DOHC2バルブ 1101cc 95ps/8000rpm 9.2kg-m/6500rpm ■255kg(乾) ■タイヤF=3.50-19 R=4.50-17 ※輸出モデル
XS1100のエンジンは71.5×68.6mmのボア×ストロークを持ち、圧縮比は9.2。最高出力は95psを誇り、後にCBXやZ1300が登場するまで、最大最強を誇った。
XS1100のエンジンは71.5×68.6mmのボア×ストロークを持ち、圧縮比は9.2。最高出力は95psを誇り、後にCBXやZ1300が登場するまで、最大最強を誇った。
スピードを極めるライバル勢
【1979 HONDA CB900F】1970年代末は各社とも最速モデルが続々誕生した時代。スズキのGS1000が鈴鹿8耐で結果を出し、ホンダは動力性能と運動性能を兼ね備えたCB900Fで対抗。カワサキは熟成を重ねたマークIIで最速に磨きをかけた。
【1979 HONDA CB900F】1970年代末は各社とも最速モデルが続々誕生した時代。スズキのGS1000が鈴鹿8耐で結果を出し、ホンダは動力性能と運動性能を兼ね備えたCB900Fで対抗。カワサキは熟成を重ねたマークIIで最速に磨きをかけた。
ヤマハXS1100の系譜
ビキ二×火炎ホイールのカフェレーサー【1981 ヤマハXS1100S】
【1981 YAMAHA XS1100S】丸目一灯のヘッドライトにビキニカウルと火炎ホイールを備え、黒と金に彩られたスポーティーなカフェレーサー仕様も登場した。
【1981 YAMAHA XS1100S】丸目一灯のヘッドライトにビキニカウルと火炎ホイールを備え、黒と金に彩られたスポーティーなカフェレーサー仕様も登場した。
ヤマハは当時から独自路線のこだわり屋だった
4気筒ブームにパラツイン:1970 XS1-650
対米輸出もにらんで、2スト専門のヤマハが初挑戦した4スト車。デビュー時はホンダがCB750フォアを発売していたが、独自のビッグツイン路線を歩む。
英車のボンネビルが参考にされ、空冷バーチカルツインをダブルクレードルに搭載した。後のSRに通じる美しいスタイルを手がけたのはGKダイナミックスの石山篤氏。
【1970 YAMAHA XS1-650】主要諸元■空冷4スト並列2気筒SOHC2バルブ 653cc 53ps/7000rpm 5.5kg-m/6000rpm ■車重185kg(乾) ■タイヤF=3.50-19 R=4.00-18 ●価格:33万8000円
待望のナナハンもパラツイン:1972 TX750
数種類の派生を生んだXS1だったが、それを超えた750ccの2気筒もリリース。
これもパワー重視ではなく、あえてSOHCとしてトルク感やエンジンの鼓動、スリムな車体がもたらす軽快さなどでヤマハらしさを体現した。
ドライサンプの潤滑方式やアルミリム、丸形を基調とした外装やフラッシャーのデザインも個性的だった。
【1972 YAMAHA TX750】主要諸元■空冷4スト並列2気筒 SOHC2バルブ 743cc 63ps/6500rpm 7.0kg-m/6000rpm ■車重210kg(乾) ■タイヤF=3.50-19 R=4.00-18 ●価格:38万5000円
マルチになっても3気筒:1976 GX750
TX750の後継機となるGX750は、120度クランクのDOHC3気筒を搭載。そこには“他社にはないもの、オリジナリティを出す”というメーカーの心意気が表れている。
高価だが信頼性の高いシャフトドライブの採用は、チェーンほど整備が煩雑ではないため、欧米では一躍人気車となった。スリムで取り回しのよい車体も好評を博した。
【1976 YAMAHA GX750】■空冷4スト並列3気筒 DOHC2バルブ 747cc 60ps/7500rpm 6.6kg-m/6500rpm ■229kg(乾) ■タイヤF=3.25-19 R=4.00-18 ●価格:48万9000円
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