
世界GPを席巻したホンダワークスレーサーRC166のテクノロジーを注ぎ込み、リッタースーパースポーツを目指して1978年に誕生したCBX。短命に終わってしまったものの、その高い志と芸術的な空冷6気筒の美しさは、多くのライダーに衝撃を与えた。そんなレジェンドマシンを振り返ろう。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
1978 ホンダCBX 誕生の背景
多気筒化によるエンジンの高出力化は、1960年代の世界GPでホンダが実証していた。多気筒化によりエンジンストロークをショートストトークにでき、さらに1気筒当たりの動弁系を軽くすることにより、多気筒=高回転高出力が可能になったといえる。
そして250ccクラスにはRC166という6気筒レーサーを投入し、全戦全勝という圧倒的なパフォーマンスを見せつけたのだった。
市販車においても1969年にホンダが世界初の量産市販車4気筒マシンCB750Fourを発表すると、市場では大排気量多気筒という戦国時代に突入する。
すでにリッター4気筒は当然の時代に移り変わり、各メーカーは新しいフラッグシップの模索を開始していくのだった。
そして1978年に満を持してホンダが発表したのが、空冷6気筒マシンのCBX1000だ。6気筒の市販車自体は、イタリアのベネリ・750セイが1973年に存在していたが、これは日本車4気筒マシンの台頭に対して、CB500Fourを模して作った4気筒の500クアトロに、2気筒を加えて作った物。これに対してCBXはホンダのフラッグシップに相応しい完全な新設計だった。
【1978 HONDA CBX】■空冷4スト並列6気筒 DOHC4バルブ 1047cc 105ps/9000rpm 8.6kg-m/8000rpm ■249kg ■タイヤF=3.50H19 R=4.25H18 ※輸出モデル
ホンダCBX 概要:唯一無二のDOHC4バルブ6気筒
コンセプトはRC166。排気量こそ4倍ではあるが、空冷DOHC4バルブ6気筒にダイヤモンドフレームを採用。長くなってしまうカムシャフトを3気筒×2本とし、オルダムジョイントで連結して熱歪みや振動対策を施す手法までも、RC166に準じていた。
さらにチューブレスタイヤを装着可能なコムスターホイール、当時高価だったジュラルミン鍛造パーツを驕り、スタイルも先進的なストリームラインを取り入れたものだった。
第一印象はダイヤモンドフレームを採用するため、エンジン前部が全て見えること。美しい空冷フィンや6本のエキパイはとにかく圧巻だ。そして6気筒が生み出す低振動でモーターのような加速感と、今までに無い衝撃を与えてくれた。
しかしそのハイパワーに反して車体強度が不足気味で、スーパースポーツとしてはCB900Fなどに譲り、次第にツアラーとしての色彩が強くなっていく。
徹底的なナロー設計されたエンジンだが、車体に対してそのエンジン幅の大きさが際立つ。エンジンの前傾やキャブは位置によって、ライディングポジションには影響しないよう仕上げられている。
64.5×53.4mmのボアストロークを採用した空冷4ストロークDOHC4バルブエンジン。エンジン幅を狭く仕上げるため、通常はクランクエンドに配置するジェネレーターを、シリンダー背面に配置。センターカムチェーン方式で、カムは左右2分割構造を採用。
φ28mmのCVキャブは、二ーグリップ幅を狭めるためV字方に配置。このため各気筒のマニホールド長が異なっている。
スピードメーターは150マイル(240km/h)、タコメーターは1万1000回転フルスケール。メーターレンズには防眩処理が施される。
ホンダ CBXの系譜
1981年にフレーム/サス/ブレーキ/エンジンなど徹底改良を施したモデルを投入。ただこのモデルは、北米市場の要望により、カウリングやサイドバッグを装備し、ホイールベースを延ばしたツアラー色の強い物となる。
【1981 HONDA CBX】
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