
ホンダCB750フォアの後継機種として欧米で1978年9月、日本では1979年6月から発売が始まったCB-Fシリーズ。CB750フォアが新ジャンルを切り開いたパイオニアだったのに対して、CB-Fシリーズは日欧の大排気量スポーツに挑むチャレンジャーだった。その変遷を振り返ろう。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
ホンダCB750F 概要:レースの技術を還元して
1970年代を通してカワサキの”Z”が世界的に高い人気を誇ったのは紛れもない事実であり、対するCB750フォアが劣勢を強いられたのもまた事実だ。
しかしホンダも黙って見ていたわけではなく、1975年には日本初のリッターマシンとなるGL1000をリリース。さらに欧州で人気の耐久選手権にワークスレーサーRCBを参戦させ、これは「無敵艦隊」と呼ばれるほどの強さを誇った。
このRCBはCB750フォアを基に開発されたが、そこで得られた成果を市販車に反映させたのがCB750F/900Fである。
エンジンは待望のDOHC4バルブ空冷4気筒。すでに6気筒1000ccのCBXや保守的なフォルムのCB750Kがあったため、欧州市場には900ccが投入された。
軽量かつバランスの良い車体も特徴で、低く構えたジュラルミン鍛造のセパレートハンドル(北米仕様はバータイプのアップハンドル)やアルミのコムスターホイール、リヤのFVQダンパーも当時先進の装備だった。
さらに新しいスタイルも考案された。タンクからサイドカバー、そしてリヤスポイラーを思わせるテールカウルへと流れるようなデザインはフローイングラインと呼ばれ、好評を博したのである。
こうして1979年型として欧州に投入されたCB900Fは爆発的に売れ、日本国内ではCB750Fとして1979年6月から発売開始、何と1979〜1981年の3年間、独走のトップセールスを記録した。
エフはZの存在を乗り越え、1980年代につながる一時代を築いたのである。
【1979 HONDA CB750FZ】■空冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ 748cc 68ps/9000rpm 5.9kg-m/8000rpm ■228kg(乾) ■タイヤF=3.25-19 R=4.00-18 ●価格:53万8000円
リヤショックに採用されたFVQダンパーは、乗り心地を左右する減衰力の特性を可変する技術だ。特に伸び側の初期に効果がある。
アルミリムに高張力鋼板のスポークプレートを組み合わせたコムスターホイール。スポーク的なしなやかさとキャスト的な整備性の高さが特徴だ。
見やすい2眼式のメーターは中央に警告灯を配置。写真は国内向け750Fの180km/hスケールだが、欧州向け900Fは240km/h表示。
当時のカタログはAMAスーパーバイクで活躍していたフレディ・スペンサーのイメージを前面に押し出していた。現地価格は3498ドル。
スペンサーが1982デイトナ100マイルで優勝した機体はCB750Fベース。規定により市販車の面影を残しながらも中身はワンオフだった。
ホンダCB750F 系譜
【1981 HONDA CB750FA】裏コムスターと呼ばれる新ホイールを採用、Fフォークはエア加圧式に。リヤのピボットシャフトは大径化してニードルベアリング支持に変更された。
【1981 HONDA CB750FB】Fフォークがφ35→37mmへ大径化され、Fブレーキに2ポットキャリパーを採用。ブレーキディスクも穴開き型になり、負圧式燃料コックも採用。
【1982 HONDA CB750FC】前後18インチのブーメランコムスターホイールを採用。Fフォークはφ39mmに大径化、リヤショックはリザーバータンク別体式に。フレームは肉厚化されている。
【1981 HONDA [Bold’or-2]】1981年夏期限定版。1979年限定色(900F同色の赤)=ボルドール1に対し、ボルドール2と呼ぶ。未認可の輸出向けカウルとオイルクーラーを装着しての販売も。
【1982 HONDA [Integra]】カウリングが正式に認可され、インテグラの名で追加設定された。電圧計と時計を標準装備するが、オイルクーラーは装備せず。後に青×白も投入。
そして次世代のCBXへ:1983 HONDA CBX750F
CB-F系とは異なる650ccベースのエンジンを搭載。ハーフカウルやモノショックを備えた新型として投入され、派生モデルも多い。
【1983 HONDA CBX750F】■空冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ 747cc 77ps/9500rpm 6.5kg-m/7500rpm ■車重238kg(乾) ■タイヤF=110/90-16 R=130/80-18 ●価格:69万8000円
ホンダCB750F 兄弟モデル
まさにレースの申し子:1979 HONDA CB900FZ
CB750Kの強化型と言えるCB900Fの開発コードは438。欧州耐久選手権におけるRCBの活躍もあり、好セールスを記録。RCB譲りの高性能のみならず、スピード感のあるスタイルも新鮮だった。
【1979 HONDA CB900FZ】■空冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ 901.8cc 95ps/9000rpm 7.9kg-m/8000rpm ■車重232kg(乾) ■タイヤF=3.25 -19 R=4.00-18 ※輸出モデル
カタログ表紙はRCBと。ロードゴーイングRCBというイメージで、レーシングテクノロジーとの関連を強調している。
F系最後発のトップモデル:1983 HONDA CB1100F
CB1100R譲りの排気量を持ち、1983年の1シーズンだけ販売されたF系の最高峰モデル。欧州とカナダ仕様は丸目ライトに金色ブーメランコムスターホイールを装着。米国と南ア仕様は角目ビキニカウル、専用メーターにバーハンドルを採用していた。
【1983 HONDA CB1100F】■空冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ 1062cc 110ps/8500rpm 9.9kg-m/7500rpm ■車重243kg(乾) ■タイヤF=100/90-18 R=130/90-17 ※輸出モデル
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載]青春名車オールスターズ)
スズキGSX-R250:過激さ控えめ“アールニーゴー” 1983年のGS250FWでクラス初の水冷DOHC4気筒を開発したスズキ。 しかし、4バルブエンジンの投入は遅れを取り、1987年のGSX-R2[…]
スズキGSX-R400R:ダブルクレードルにフルモデルチェンジ GSX-Rは、1990年に3度目のフルチェンジを敢行。新設計エンジンに加え、φ33mmダウンドラフトキャブや倒立フォークまで備えた。 フ[…]
スズキGSX-R:斬新かつ孤高のネーム、走りもケタ違い 1983年は、世界耐久や鈴鹿8耐でスズキの耐久レーサーGS1000Rが旋風を巻き起こした。 その年の暮れ、晴海で開催された東京モーターショーに、[…]
ホンダの“R”だ! 可変バルブだ‼ 1980年代に入ると、市販車400ccをベースにしたTT-F3やSS400といった敷居の低いプロダクションレースの人気が高まってきた。 ベース車として空冷直4のCB[…]
シュワンツとともに駆け抜けた夏 レプリカ時代の礎を築いたRG250Γの登場から5年。強力なライバルから覇権を奪還すべく、ついにスズキの次世代機が姿を現す。 RGV250Γの名が示す通り、並列2気筒に代[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
いい加減さがいい塩梅!? ダートで遊べるPG‐1 「個人車両なので頼むから無理はしてくれるな…」という編集担当の目を盗んでダートセクションにPG -1を連れ込んでみたら、これが何だか楽しくて仕方ない([…]
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
後方排気はYZR500の後ろバンク、ただ一般公道で前方吸気は容易くなかった! ヤマハは1980年、レーサーレプリカ時代の幕開けRZ250をリリース。排気ガス規制で2ストロークは終焉を迎える寸前だったの[…]
国内のカウル認可後に生まれた、1980年代半ばのネイキッドたち オンロードモデルの中で、定着して久しいネイキッド(英語のNAKED=裸という意味)というカテゴリー名。今では「カウルの付かないスタンダー[…]
スズキGSX-R250:過激さ控えめ“アールニーゴー” 1983年のGS250FWでクラス初の水冷DOHC4気筒を開発したスズキ。 しかし、4バルブエンジンの投入は遅れを取り、1987年のGSX-R2[…]
人気記事ランキング(全体)
電子制御スロットルにアナログなワイヤーを遣うベテラン勢 最近のMotoGPでちょっと話題になったのが、電子制御スロットルだ。電制スロットルは、もはやスイッチ。スロットルレバーの開け閉めを角度センサーが[…]
勝手に妄想、クーリーレプリカ! スズキの『8』プラットフォームに新顔の「GSX-8T」と「GSX-8TT」が登場した。まずは欧州や北米で発売され、順次日本にも導入の見込みだ。 この新型については以前ヤ[…]
美しい孔雀の羽根の色味が変わる特殊ペイントで仕上げた新グラフィック 『エクシード-2』は、カブトがラインナップするオープンフェイスの上級モデルで、赤外線(IR)と紫外線(UV)を大幅にカットしつつ、空[…]
ホンダのスポーツバイク原点、CB72とマン島T.T.イメージを詰め込んだクラブマンだった! ご存じGB250クラブマンは1983年の12月にリリース。同じ年の4月にデビューしたベースモデルのCBX25[…]
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
最新の投稿記事(全体)
先の道行きが想定しやすい縦型モニター 2023年発売のAIO-5を皮切りに、だんだんと普及しつつあるバイク用スマートモニター。これまでは横型の表示が多かったが、このたびMAXWINから縦型モニタータイ[…]
輝く青と深緑、艶消し黒の3色に刷新 スズキは、400ccクラスのビッグスクーター「バーグマン400」にニューカラーを導入、2025年7月18日に発売する。 深緑の『パールマットシャドウグリーン』にはゴ[…]
7月中旬発売:Arai「ASTRO-GX BEYOND」 アライヘルメットの街乗りからツーリング、サーキット走行まで幅広くカバーするオールラウンドフルフェイスヘルメット「ASTRO-GX(アストロGX[…]
CB1000F SE コンセプトが新たに登場 2025年3月の大阪モーターサイクルショーで世界初公開された「ホンダCB1000Fコンセプト」。 往年の名車CB-Fを想起させるだけでなく、新時代のスタン[…]
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」。 今回は2気筒とは思えないほどスムースなエンジンが魅力のフルカウルス[…]
- 1
- 2