
新聞社系のネットニュースをきっかけに騒ぎとなっているホンダの50cc生産終了と、それに伴う“スーパーカブが消滅する”という誤解。あくまでも50ccのカブが終了するだけで、スーパーカブが消えるなんて根も葉もない話。ホンダさんもお困りのようで、二輪部門のトップがそれを打ち消すべく、50cc版の代わりとなる「新基準原付カブ」の導入に言及する事態に至った。
●文:ヤングマシン編集部(マツ)
新聞社さん、ホンダさんが困ってますよ
「すべてのスーパーカブが生産終了するように誤解されてしまい、とても困っているんです」。ここ1週間ほど、ホンダの関係者に会うたびにそんな話を聞いてきた。何のことかというと、6月22日以降に複数の新聞社系ネットニュースが報じた「ホンダが50ccの生産を終了する」という報道と、それに伴う“スーパーカブも生産を終える”という誤解だ。
最初に否定しておくと、生産を終了するのは50cc版のスーパーカブ。110ccや125cc版は生産が続くので、ホンダからスーパーカブが消える心配など微塵もない。ではなぜそんな騒ぎになっているのかというと、6月19日に開催されたホンダの株主総会での「50cc車の生産は終了する」というやりとりを“世界一売れたバイク・スーパーカブが終了する”かのように報じた媒体が多数あったからだ。
これらの記事、よ〜く読めば消えるのは50ccのカブと分かるものの、ミスリード感は否めないし、旭日旗な某新聞社などは「天◯人語」に“昭和のおもひでとともに消えゆくスーパーカブ”的な一文を掲載してしまったほど。そもそもホンダがカブの生産をやめるなんてあり得ないでしょうに…と考えるのは我々が二輪媒体だからのようで、多くの人が「ホンダ、カブやめるってよ」と誤解してしまったようなのだ。
冷静に考えれば、ホンダがカブの生産をやめるわけがないのだが(写真:長谷川 徹)。
原付免許で運転できるカブは“新基準原付”で存続
ホンダ2輪事業の舵取り役と言える、二輪・パワープロダクツ事業本部長の加藤稔氏。1988年にホンダに入社し、1994年以降は数年を除き2輪ひとすじ。タイやインドネシアなどの海外駐在を経て2014年からはベトナムで現地法人の社長も歴任。2023年4月に二輪事業統括部長に就任し、今年4月から現職に(写真:徳永 茂)。
というわけで、ホンダ2輪部門のいちばん偉い人が“スーパーカブ消滅”の噂を打ち消しにかかった…というのが今回のニュース。7月2日にホンダが開催したメディア向けの懇談会で、二輪・パワープロダクツ事業本部長を務める加藤稔氏が「50ccのスーパーカブやスクーターは、125cc以下・出力を4kWに抑えた“新基準原付”として法規に適合させたモデルの準備を進めている」と明らかにしたのだ。
この新基準原付とは、2025年11月から導入される排ガス規制のクリアが難しく、消滅を免れない50cc車に代わり、125cc以下の車両を50cc相当の出力(4kW≒5.4ps)に制限することで原付免許でも運転OKとする新しい枠組みのこと。
現行スーパーカブ50は110cc版と車体が共通だから、新基準原付版のスーパーカブも110ccをベースに登場するのは間違いない。先述のとおり、50ccの新しい排ガス規制は来年の11月に導入されるから、その数ヶ月前、つまり今から1年程度で新基準原付版のスーパーカブがお目見えするはずだ。
ともあれ、ホンダ2輪のトップを務める加藤本部長の発言により、ホンダも公式見解として“原付免許で運転できるスーパーカブは、新基準原付として存続します!”とアナウンスできるようになったわけだ。今回のスーパーカブ消滅騒ぎにも終止符を打てるだろう。
7月2日にホンダ青山本社からほど近い明治記念館で行われた懇談会には多くの2輪メディアが参加、加藤氏との意見交換などを行った。右はその際に掲示された資料(下部は今回の内容と無関係のため画像処理)で、原付一種のスーパーカブが新基準原付に移行することが示された。「スーパーカブはなくなりません!」の一言に加藤氏の意志が覗く。
“カブ消滅”騒ぎの発端となったやり取りとは?
加藤本部長からは、今回の騒ぎの発端となった株主総会でのやりとりも明らかにされた。以下に加藤氏のコメントを要約する。
『先日の総会で株主様から「50ccのカブに乗っているが、原付はなくなってしまうのか? この先のメンテナンスは大丈夫なのか?」という質問があり、私から「(50ccはなくなるけれども)新しい基準に合わせた車両を開発しているのでご安心ください。もちろん、今の50cc車のメンテナンスもしっかり対応していきます」という話をさせていただいた』
『そのやり取りを取材で株主総会に来ていた新聞記者が聞いて“50ccがなくなる”という記事にしたことで、これに伴う話が新聞で取り沙汰されることになった。たしかに50ccはなくなるが、原付一種はなくならないし、スーパーカブもなくならないのでご安心ください』
スーパーカブと言えば誰もが知るホンダの看板機種。記事にしたくなる気持ちは分からなくもないが、今回の報道はやはり勇み足だったというところか。とはいえ、我々もスクープだ何だののお騒がせ媒体。偉そうなことはまったく言えないので、メディアの端くれとして注意していこうと思います。ハイ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
ドリームはホンダ初の本格バイク 1947年のA型からプロトタイプのB型(1948年)、エンジンに加え自転車フレームも初めて自社製としたC型(1949年)を経て1949年8月に登場したのがドリームD型と[…]
以前、Honda E-Clutchを開発した方々にインタービューしたとき「最初はHonda E-Clutchなんていらないと思っていたけれど、一度乗ったら考えが変わった」という話をお聞きしました。 じ[…]
2024年モデル概要:排ガス規制に適合し、実質的な値下げを敢行 2020年モデルでは平成28年排出ガス規制(≒ユーロ4)対応だったため、2022年11月以降は車両の生産自体が不可となっていたが、その後[…]
ホンダ「モンキー125」(2021)比較試乗レビュー この記事ではかわいらしいフォルムと実用性が同居したファンバイク、モンキー125の2021年モデルについて紹介するぞ。ミッションが5速化されたうえに[…]
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉 1972年東京モーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪とともに後輪にもディスクブレーキを採用[…]
最新の関連記事(スーパーカブ50/プロ)
110ccベースの4kW制限モデル=新基準原付、第3の存在か 2025年11月の新排出ガス規制導入によって現行モデルの継続生産が困難になり、新たに110~125ccのモデルをベースとした車両に4kW([…]
50ccクラスは16歳から取得可能な“原付免許”で運転できるほか、普通自動車免許でもOK バイクを運転するための免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大[…]
スーパーカブのオーナーズミーティング『カフェカブパーティー』の2025年の開催計画が発表された。カブファンの交流の場を提供し、健全なカスタム文化の醸成を目指す当イベント、まずは九州/北海道/関西の3大[…]
“ホンダを穿く”プロジェクト 第2弾 そして見逃せないのは、ホンダ×児島ジーンズ×オーヴァーレーシングという豪華な顔ぶれによる、今回限りのトリプルコラボTシャツだ。モチーフはCT125ハンターカブで、[…]
50ccクラスは16歳から取得可能な“原付免許”で運転できるほか、普通自動車免許でもOK バイクを運転するための免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大[…]
人気記事ランキング(全体)
日本を代表するツーリングロードのティア表だっ! 「次のツーリングは、どこへ行こう?」 そんな嬉しい悩みを抱える全てのライダーに捧げる、究極のツーリングスポット・ティア表が完成した。 ……いや、そもそも[…]
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”の最新進化系 カワサキは、948cc並列4気筒エンジンを搭載したスーパーネイキッド「Z900」および上級モデル「Z900 SE」[…]
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉 1972年東京モーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪とともに後輪にもディスクブレーキを採用[…]
涼しさの心臓部。それは「素材」と「構造」の魔法的組み合わせ うだるような暑さと、じっとりと肌にまとわりつく湿気。毎年繰り返されるこの季節に、多くの人が少しでも快適に過ごせる服を探し求めている。そんな中[…]
機能性を損なうことなく利便性を高めた、期待の新製品 おたふく手袋は、長年、多くのプロフェッショナルから信頼され続けている老舗軍手メーカー。同社が展開する「BODY TOUGHNESS(ボディタフネス)[…]
最新の投稿記事(全体)
ドリームはホンダ初の本格バイク 1947年のA型からプロトタイプのB型(1948年)、エンジンに加え自転車フレームも初めて自社製としたC型(1949年)を経て1949年8月に登場したのがドリームD型と[…]
K-2439 フルメッシュロングジャケット:スタイルと機能を両立するツーリングジャケット 腰までしっかりと覆う安心感のあるロング丈でありながら、後襟から袖口へ流れるように入ったラインデザインと、ウエス[…]
機能豊富なマルチパーパスフルフェイスのシールドを外した、さらに身軽なフォルム 『TOUR-CROSS V』は、アライヘルメットが’23年6月に発売したマルチパーパスヘルメットだ。高速走行時の空気抵抗を[…]
Z1とともに、CB750Fourを挟み撃ちするねらいで生まれた、Z1ジュニア=Z650 公害やマスキー法、オイルショックなどが社会問題として声高に叫ばれ始めた1970年代、カワサキは2サイクルのマッハ[…]
大和ハウスグループが手がけたD-Wash 愛車を長持ちさせるためにも、大切にしたい「洗車」という作業。 汚れの放置はサビや各部品の劣化が進むことにもつながるし、洗車をしながら、緩んでいるボルトやパーツ[…]
- 1
- 2