ホンダが50ccの原付を2025年5月で生産終了するというニュースが日経新聞をはじめとするメディアで報道され、なかにはスーパーカブの終焉と受け取れるようなものも。スーパーカブについては110cc版が継続されるのは間違いないが、それ以外についても原付が本当に終了するなら代替となるはずの“新基準原付”はどうなるのだろうか。今わかっていることを調査してみた。
●文:Nom(埜邑博道) ●外部リンク:ホンダ
2025年11月までの生産終了は間違いないが、終了時期についてホンダが公表したものはない
6月22日の早朝、日経新聞の電子版が「ホンダ、50cc原付 25年5月に生産終了」と報道し、各社も後追いで報じたことでエラク大きなニュースになりました。
ご存じのように、現在の50ccの原付一種(以下・原付)は、本来は2022年から施行予定だった新排ガス規制への対応が困難ということから、AJをはじめとした業界団体が2025年11月まで規制の施行を先延ばしすることを要望。メーカー側は50ccで新排ガス規制に適応させるのは非常に困難だという理由で、110~125ccクラスの車両をベースに最高出力を4㎾=5.4馬力に抑制したモデルをこれまでの原付に代わるものとするという方向性を提示。それを受けて、昨年12月に排気量110~125ccで4kW=5.4馬力に制御したモデルを「新基準原付」として、従来通り原付免許で乗れるバイクとすることを警察庁が管轄する「二輪車車両区分に関する有識者検討会」から報告されました。
この方向性が出たことで、従来の原付は2025年11月の新排ガス規制の前に当然、生産を終了することは既定の路線でしたが、その時期が規制の始まる11月より6か月も早い5月ということでちょっとした話題になったようです。
ただ、ホンダに問い合わせたところ、「2025年11月から適応される排ガス規制により、原付一種の生産終了を予定しておりますが、終了時期についてホンダが公表したものはございません」という回答でした。
公式には生産終了の時期はアナウンスしていないようですが、ホンダ系の販売店からの情報によると、「原付は来年の7月までは生産するが、3月までに必要な数のオーダーを入れて欲しい」とホンダの営業担当者から伝えられたとのこと。しかも、1年分のオーダーを早目に入れたにもかかわらず、納車の予定台数は大幅に下回るもののようだそうです。
終了時期は未定なものの、2023年の原付出荷台数・9万2824台のうちの半分以上となる4万8000台(出荷実績)を生産するホンダだけに、原付用のパーツをホンダに供給するサプライヤーも多岐にわたり、ホンダが生産を終了するとサプライヤーは原付用のパーツの売上が消えてしまうことになってしまいます。それだけに、唐突に生産を終了するわけにはいかず、ある程度の時間をとって生産調整をしながら最終的に生産を終了するという形になるはずです。
さらに言えば、まだどんな「新基準原付」がデビューするかはまったく分かりませんが、原付→新基準原付への切り替えが市場に混乱をきたすことなくスムーズに進むためには、来年の3月に開催される大阪/東京モーターサイクルショーでは新基準原付のお披露目をしてユーザー認知を促進する必要があるでしょう。そうなると、生産に関しても将来のない現行の原付から新基準原付に早目に移行する必要が生じます。
予想されるのは、2025年シーズンの前半は現行原付で需要に対応し、後半からニューモデルとなる新基準原付を随時投入する。そして、その移行をできるだけスムーズに行うことで、ユーザーにも、販売店にも混乱が生じないようにする、という感じでしょう。
という事情を考えると、5月に生産終了というのはあながち根拠のない話ではないのかもしれません。
車体の小さい「原付」を求める声も依然多い
もうひとつ、5月生産終了につながる事案があります。他の交通からの被視認性の向上のため、二輪車には昼間走行灯(DRL)および車幅灯、側方反射機を装着しなればいけないという決まりがあり、排気量50cc以下の原付も来年6月から対応することが求められています。
11月から販売できなくなるモデルに対し、この決まりに則った変更を加えるなんてありえない話。この新規制施行も、5月生産終了に信ぴょう性を与えています。
ただし、この規制については施行時期について国交省とまだ交渉中だとか、延長が可能になったなどという話もあるようです。
一方、新基準原付に関しても12月の発表以降、表立った動きはまったくありません。本サイトでお伝えしてきたように、①原付の定義を排気量から最高出力に変更する必要がある、②最高出力の測定方法を構築する必要がある、③出力を簡単にアップすることができないような構造にする、あるいは処置をする、④自動車税はどうするか(現行の原付は2000円/年、125cc以下は2400円/年)等々、決めなければいけないことはいろいろあって、関係する省庁も国土交通省、警察庁、総務省、そして経済産業省と多岐にわたるため、もろもろの調整に時間がかかっているようです。複数の関係者に聞いてみましたが、昨年12月に発表された以上のことは決まっていないし言えないとのことでした。
それよりも、新基準原付で原付免許/普通自動車免許で乗れるバイクが存続するのはいいことですが、110~125ccベースとなるとどうしても大きく重くなり、広い駐輪スペースも必要で、シート髙も高くなってしまいます。特に、小柄な女性やコンパクトなモデルが欲しい層から、何とか現状のサイズ感のままの原付を存続して欲しいと望む声が多いようです。
排ガス規制とは無関係な電動バイクでは代わりにならないかと思って(価格は置いておいて)、ホンダのタクトとEM1:eを比較してみると、全長1675/1795(前がタクトで後ろが、EM1:e。単位はmm、以下同)全幅670/680、全高1035/1080、軸距1180/1300、シート高705~720/740、車重78~79kg/92kgと、やはりタクトの方がコンパクトで軽い。現在ある電動バイクでは、原付の代替モデルにはなりそうもありません。
となると、やはり車両メーカーが現行のサイズで、新排ガス規制に対応する原付を作ってくれることを願わざるを得ません。新基準原付に至るまでの話をすべてひっくり返してしまうことになりますが、思いもよらない発想で作られ、新排ガス規制もクリアするコンパクトな原付。できないものでしょうか。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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