
1978年に誕生し、2021年に43年に及んだモデルライフを終了したSR400。惜しむ声もいまだ根強い1台だが、そうしたファンの存在がメーカーを動かすことになるかもしれない。SRが走り続けるために必要な純正部品をできる限り供給し続けられないか……。そんなアイデアがヤマハ社内で浮上しているようなのだ。
●文:ヤングマシン編集部(マツ)
新車が復活できる可能性は低い。であれば……
1978年に誕生した当時の基本設計を変えず、2021年まで生産され続けたヤマハSR400。生産が終了した今でも根強いファンを抱えるレジェンド的な存在だ。そのオーナーを、ヤマハとして可能な限りサポートし続けていけないか……と、そんなアイデアが検討されている模様だ。
これはヤングマシンが取材した、ふたりのヤマハ役員の口からほぼ同時期に飛び出したもの。一人目はヤマハ発動機執行役員・PF車両ユニット長の西田豊士さん。ヤマハ製モーターサイクルや4輪オフロード車の車両開発の総責任者という立場の方で、ヤングマシンでインタビューさせて頂いた際にお聞きした内容だ。
「(SR復活を望む声が根強いが?という質問に対し)登場時の構成のまま、長年生産され続けてきたSRだからこそ醸し出せていた風情を、現在のヤマハが持つ他の資産で再現するとどうしたって嘘くさくなってしまいます。とはいえ従来の形のままでSRを作り直せるかというと、これもメーカーとしてはかなり困難。多くの方に愛された商品が消えて惜しむ声が多かったとしても、それが必ず復活できるとは限りません。残念ながらSRもそうした商品のひとつです」
ヤマハ発動機・執行役員の西田豊士さん。1998年の初代からYZF-R1の開発に携わり、クロスプレーン型クランクシャフトを初採用した2009年型では開発責任者を務めた。二輪メディアへの登場も数多い。
「でも、生産終了がこれほど騒ぎになるのは本当に有り難いことで、それだけ愛された存在なのだと感じます。となれば現在、SRにお乗りの方々をヤマハが最後までサポートする…というビジネスはあり得るかもしれません。例えば純正部品はずっと供給し続けて、打ち切らない。そんな可能性はあります」
「SRにサスティナビリティを求めるなら、新型より、今お乗りのお客様を大事にし続ける方が現実的です。43年作り続け、今後も10年程度は部品を供給する。つまり現状でもヤマハはSRの部品を半世紀以上、供給することが決まっているわけですが、これを永久に供給し続けたら?って。少々勢い余って喋っていますが(笑)」
禁じ手「社外秘情報」の外部公開もアリ?!
二人目はヤマハの上席執行役員で、クリエイティブ本部長を務める木下拓也さん。こちらはヤマハ主催のYZF-R7オーナーコミュニティのイベントでの発言で、西田さんへのインタビューからは3日後の出来事。参加していたR7ユーザーも聞いているため、半分オフィシャルと考えてもいい?!
「これは私が勝手に考えているのですが“3rdヤマハ”を作りたいんです。1stヤマハが楽器で、2ndヤマハはバイク。それに続く3番目のヤマハは“ユーザーの皆さんが勝手に作るヤマハ”。我々がこのR7のようなコミュニティ活動に力を入れるのは、そうした姿を見たいからなんです」
ヤマハの上席執行役員・木下拓也さん。MT-01やFJR1300のプロジェクトチーフを務めたご経験もお持ちという、開発畑のご出身だ。
「例えば、ディスコンとなったセローやSRのような車両は、今後は皆さんの中で生かしてもらうしかありません。しかし、我々はそのサポートをしたいと考えています。そのためにはオーナーさんのコミュニティが必要。3rdヤマハがあれば、我々もどうやって未来にバイクを残していくかを一緒に考えられると思います」
このコメントの後に木下さんを直撃したところ「部品の供給はもちろんですが、お客様の中で困っている部品によっては、そのIP情報(=企業の持つ知的財産情報。もちろん本来は社外秘)を、作ってくださるサードパーティーなどと共有しながら、もっと広く供給できる可能性を探ることも検討の余地はあると思います」という話も伺うことができた。
正規プロジェクトではないにせよ、動きはある?!
西田さんや木下さんはあくまでも“個人的な意見”として述べてくれたもので、これがヤマハの公式見解となるわけでは(現状では)ない。しかし、このような話が立て続けに、しかも間を開けずにヤマハ上層部から飛び出すからには“SRを何とかできないか?”という会話が、ヤマハ社内で取り沙汰されていることの証拠だろう。
新車を作り続けることが叶わないならば、現存する車両が走り続けられる環境を整え、1台でも多くのSRを後世へ残そう……という考え方にはヤングマシンも大賛成。ヤマハさん、2024年のMCショーあたりで“SRパーツ・永久保証プロジェクト”なんて発表はいかがでしょうか?!
2021年に「ファイナルエディション(上写真)」「ファイナルエディション・リミテッド」という2仕様を発売し、43年のモデルライフに終止符を打ったヤマハSR400。1978年の登場から基本設計を変えず、空冷、単気筒、キックスターター…という原始的な装備を貫いた希少な1台だった。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
ピンクレディーの時代から変わらない ヤマハSR400は、1978年3月に発売された。今から43年前のことである。スーパーカーやピンクレディーが大きなブームを巻き起こしていた一方で、沖縄の道路がアメリカ[…]
43年で歴史に幕……と思ったら続きがあった!(タイで) 平成32年排出ガス規制の壁、ABS義務化、そして灯火類の追加レギュレーション……。日本ではさまざまな理由から継続生産ができなくなり、2021年モ[…]
GB350は受注一時停止中だが、ロイヤルエンフィールドは供給順調 中型クラス……というか普通二輪免許で乗れる空冷ネオクラシックバイクが大人気だ。ホンダはインドで「ハイネスCB350」として発表したモデ[…]
誰にでも乗れる、けれど懐深いオフロード性能も併せ持ったセロー いきなり私事で恐縮だが、筆者は自身と家族でこれまでにセロー225/セロー250を計4台所有してきた。初心者にも安心しておすすめできる一方で[…]
最新の関連記事(SR400)
〈2012年1月〉SR400[3HTU]:黒にホワイトステッチ追加 2012年モデルではカラー変更を実施。ヤマハブラックは、FI化した2009年モデルとはグラフィックを変更し、モノトーンのシートにSR[…]
〈2000年2月〉SR400[3HTB]:最終ドラムブレーキモデル ドラムブレーキの最終モデルだ。1999年のブラックゴールドは継続。ダークパープリッシュレッドカクテル3が廃止され、グロリアスマキシブ[…]
〈1991年11月〉SR400[3HT3]/SR500[3GW3]:ツートンシート 多重クリアの”ミラクリエイト塗装”によって深みのある艶を実現。シートはツートーンに。レバー/レバーホルダー/ハンドル[…]
〈1978年3月〉SR400[2H6]/500[2J3]:ロードスポーツの原点 1976年に発売したオフロードモデルのXT500のエンジンとフレームをベースに、トラディショナルなロードスポーツとして登[…]
時代に合わせて生き続けた、愛すべきヤマハの象徴 スポーツバイクにおいて、スペックが重要な指標のひとつなのは間違いない。しかし1000ccで200psオーバーが当たり前の近代において、最高出力が25ps[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA])
2ストレプリカの原点にして、TZRへの橋渡し役だったRZシリーズ 最後の2ストロードスポーツを作るという情熱が込められ、1980年に登場したRZ250。同車が「最後」と言われたのは、環境問題も絡めて今[…]
スポーティ&ファッショナブルなブルー系が登場 ヤマハのスポーツ・ヘリテイジ(伝統・遺産)を標榜するXSRシリーズ。スーパースポーツやネイキッド」といった従来のカテゴリーを越え、レトロな外観やその背景の[…]
廉価&シンプルなハイブリッドシステムで燃費性能を向上! ヤマハモーターインディアは、15年以上にわたってシリーズ累計150万台以上を販売してきた人気モデル「FZ-S」の最新モデルとして「FZ-S Fi[…]
150万円切りはほぼ確実と思われるが…… ヤマハは台湾で、欧州および北米などで発表済みのスーパースポーツモデル「YZF-R9」の導入価格を発表。日本国内にも2025年春以降の導入が案内されており、正式[…]
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
人気記事ランキング(全体)
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
ライディングポジション関連を変更。実用性もアリ!! 基本構成はCB1000ホーネット譲りだが、各部のパーツは専用品が多い。とくに注目すべきはスマートキーだ。ホーネットでは物理キーを鍵穴に挿し込む一般的[…]
半クラッチは熱膨張で繋がる位置が変わる! ほんとんどのバイクは、エンジンのシリンダーよりちょっと後ろに丸い膨らみがある。これがクラッチ。 丸い膨らみの中には、エンジンのパワーを発生するクランクシャフト[…]
日本映画史の記憶に残り続ける『トラック野郎』シリーズ第1作 『トラック野郎 御意見無用』は、1975年に公開された鈴木則文監督による日本映画。東映製作/配給の『トラック野郎』シリーズの記念すべき第1作[…]
250A1、350A7に続く最速チャレンジャー真打ち登場!! 1966年に250ccA1サムライで、先行していたホンダCB72、ヤマハYDS3、スズキT20の性能を上回り、次いでボアアップした338c[…]
最新の投稿記事(全体)
その姿、まるでGB400TT MkIIの正統後継者! 欧州ホンダは、2025年も例年通りカスタムコンテスを開催。これは正規ディーラーがホンダ車をベースにカスタムを手がけ、オンライン投票で最優秀マシンを[…]
原付スクーターは16歳から取得可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があ[…]
各部に配された黒が車体を引き締める 1833cc水平対向6気筒エンジンを搭載するホンダのフラッグシップモデル、ゴールドウイング。2022年モデルは、2022年4月21日に発売した。 ここでゴールドウイ[…]
日本を含むアジア圏で人気のSUVスクーター 水冷4バルブのeSP+エンジンを搭載するアドベンチャー系SUVスクーター「ADV160」シリーズに新色が登場した。新たなカラーラインナップが発表されたのはマ[…]
上質な栃木レザーのハンドメイドキーケース このキーケースは、革職人が上質なレザーを用いてハンドメイドで製作。素材には、国産最高峰とされる栃木レザーが使用されており、使い込むほどに手に馴染み、美しい経年[…]