
全日本JSB1000を走る中須賀克行選手のレプリカ外装として、今年の3月に限定発売されたYZF-R7用の「YAMAHA FACTORY RACING TEAMフェアリングキット(33万円)」。これを購入したユーザー限定のイベントが10月9日(祝)、ヤマハ発動機本社にあるコミュニケーションプラザ(静岡県磐田市)で開催された。“メーカーでしか提供出来ないプライスレスな体験”を、高額なキットを購入してくれたユーザーに届けるという試みだ。
●文と写真:ヤングマシン編集部(マツ) ●外部リンク:ヤマハモーターラボforR7
そそそ、そんなトコまでモロ見せかッ?!
今年3月に発売された「YAMAHA FACTORY RACING TEAMフェアリングキット」は全17点からなるYZF−R7用の交換用外装キット。カラーリングは国内最強ライダー・中須賀克行選手のフルレプリカで、非常に彩度の高いブルーを専用開発し、ヤマハ初の技法で平滑なグラフィックも実現するなど細部まで凝りまくった製品だ。
そんな拘りまくりの内容もあり、価格は33万円と決して安くはないのだが、購入者に「プライスレスな体験」がヤマハから提供されると公表されたのもこの製品の興味深い点。その約束どおり、10月9日にヤマハ本社のコミュニケーションプラザに27名のキット購入者が招かれ「R7 スペシャルフェアリングキットイベント」が開催されたというわけだ。
当日はあいにくの雨天で、外装キットに同梱された「シリアル番号付き限定エンブレム」を愛車に貼り付ける、いわばメインイベントはキャンセルされてしまったが、それでも催しは盛りだくさん。R7の設計者や生産技術者によるエンジン部品の解説や、デザイン開発でヤマハが用いるVR空間の体験会、さらにR7の開発で使われた本物のクレイモデルを公開するなど、メーカーでないと提供できないコンテンツが目白押しだった。
中でもスゴかったのはR7も生産されている本社工場の見学ツアー。通常は社員しか立ち入れない工場の奥の奥まで入らせてくれた上に、ラインを流れてきた◎□が◯☓△!!(←ヤバすぎて書けない)など、「これ、マジで大丈夫なんですかヤマハさん?!」とこちらが心配になるほどの大サービス。もちろん撮影はNGだったものの、みな興奮はもちろん、感激のあまり涙ぐむ参加者も。キット購入者にはこれ以上ないプライスレスな体験となったはずだ。
左がR7用のフェアリングキット。鮮やかな彩色が非常に目を引き高級感も満点。右は今回のイベントに併せて作成されたオブジェで、工場で使う搬送用台車(←工場見学イベントからのインスピレーションとのこと)の構造部材で枠を作り、そこにR7のフレームをディスプレイ。えらいお金が掛かったとか?! 手前のツナギとヘルメットもR7ラボで共創されたものだ。
R7シリンダーヘッドの鋳造工程を生産技術者が説明するコーナーや、エンジンパーツへの拘りを開発者自身が語る展示も。メーカー関係者と直接意見を交わせる、ユーザーには貴重な機会だろう。個人的にも、MT-07系エンジンはEXカムシャフト内に機械式デコンプが仕込まれていて(=セルモーターを小型化する策とのこと)、その潤滑&静音用オイル経路がカムにあるなんて知りませんでした・・・。
こちらは外装キットを企画した際のカラーリング案。未来的な方向性のA案、ヤマハレースイメージのB案、ヤマハのヘリテイジをイメージしたC案が作られ、最終的にB2案が選択された。ただし会場のオジサマ方からは、1985年のFZ750をオマージュしたC2案(写真)が掲示された瞬間に最大のどよめきが(笑)。
残念ながら撮影はNG(当然だけど)だった本社工場の見学ツアー。今回はR1やMT-09/07系を組み立てる7号館を見学。完成した車両の検査風景や、バイクやパーツを載せた無人の搬送用台車が走り回る様子も圧巻だったが、前述のとおり、とても言えないあんな光景やこんな光景も繰り広げられていたのだった…。
イベント後半ではモータージャーナリストのREIさんの仕切りでトークショーも開催。R7の開発者が登場し、ハンドル切れ角とタンク形状(=デザイナー/モデラーとテストライダー)のせめぎあいが熾烈だったなどのエピソードを披露。実際にクレイモデルを削れる機会も!
R7ラボの立ち上げ当初から関わるインフルエンサーのお2人には、中須賀克行選手のサイン入りシングルシートカバーをサプライズプレゼント。また外装キットに同梱される「シリアル番号入り限定エンブレム」は、こんなにカッチョいい専用ケースに収められる。貼り付ける際のガイドまで備わるという拘りが恐ろしい(笑)
各方面から熱視線「ヤマハモーターラボfor R7」とは?
このイベントを仕切ったのは「ヤマハモーターラボfor R7」(以下R7ラボ)というコミュニティサイトの運営メンバー。で、このR7ラボとはいったい何ぞやというと、R7を購入したユーザーとメーカーであるヤマハがWEB上で直接繋がり、お互いに意見を交換しながら、実際の商品やイベントを共創していきましょう…という、ヤマハが独自にスタートさせた取り組みなのだ。
オープンは今年の3月だが、約半年で既に1000人近い登録者を数えるまでに成長しており、開発者がユーザーに向けて発信したり(もちろんその逆もアリ)、オーナー同士の交流が活発化するなど、メーカーが自社製品のファンを拡大する試みの成功例としても注目を集めている。この10月にはR7ラボの取り組み自体がグッドデザイン賞にも輝いているのだ。
中心人物はYZF-R7のデザインプロデューサーを務めた木下保宏さんで、彼に共感した(巻き込まれた?)ヤマハ社員有志によってR7ラボは運営されている。木下さんはこのサイトの目的を「お客様と直接繋がり、バイクや用品を売った後のバイクライフまでデザインしたい」と設立当初に語ってくれたが、今回のプライスレス体験は現時点におけるR7ラボの集大成だろう。
筆者は今回、取材者として参加したわけだが、印象的だったのはイベントが進むにつれて会場内のヤマハ関係者が増えていったこと(最後は執行役員まで登場!)。ヤマハでは祝日は出勤日ということもあるのだろうが、成果を出しつつあるR7ラボと、それを楽しげに仕切る運営メンバーの様子は、ヤマハ社員も気になって仕方ないのだろう。
左写真の4名がR7ラボの“中の人”(マイクを持つのが木下保宏さん)。また、イベント終盤にはヤマハ発動機・上席執行役員クリエイティブ本部長の木下拓也さん(右)も登場し、R7ラボに代表されるコミュニティ活動の目的について説明。ここでも「個人的な意見」と前置きした上でオフレコ話が飛び出した!!
当イベント、記事のトップに使った全員集合以外にも、集まって写真を撮る機会が非常に多かったのでこちらに掲載。これもユーザー&メーカーの垣根を超えてラボメンバーの絆が強いことの現れだろう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(YZF-R7)
“スキニープロポーション”が際立つスリムなデザイン YZF-R7を前にして改めて驚かされるのは、そのスリムなプロポーションだ。同じエンジンとメインフレーム(フレームの違いについては後述)を共用するMT[…]
グラフィック変更のブルー、完全新色のダークグレーの2本立て ヤマハがYZF-R7の国内2025年モデルを発表した。すでに北米などで発表されていたニューカラーで、前年の3色ラインナップから2色に統合され[…]
グラフィック変更のブルー、完全新色のダークグレーの2本立て ヤマハがYZF-R7の国内2025年モデルを発表した。すでに北米などで発表されていたニューカラーで、前年の3色ラインナップから2色に統合され[…]
1位:ヤマハが新フラッグシップ「YZF-R9」を正式発表 ヤマハは欧州と北米でYZF-R9を発表した。専用にセットアップされたサスペンションやブレンボ製キャリパーを標準装備。R6を上回る空力性能を有し[…]
最小クラスのRシリーズも元気いっぱい! 欧州では新型モデルの「R9」「R3」と同時に2025年型の「R125(日本名:YZF-R125)」、そして北米では「YZF-R7」が発表された。これらはニューカ[…]
最新の関連記事(イベント)
真夏の激闘を前に意気込みを聞く! ヨシムラの『ツーリングブレイクタイム』はその名のとおり、ツーリング中の立ち寄りスポットとしてヨシムラジャパンが主催しているイベント。2009年の初開催以来、すでに60[…]
「いくっしょ、モビショー! 」を合言葉に、未来へのワクワクを体験 ジャパンモビリティショー2025で掲げられているのは、「ワクワクする未来を、探しに行こう! 」というコンセプト。「みんなが[…]
バイクを愛するすべての人へ 去る6月7日(土)、東京のお台場に位置するBMW GROUP Tokyo Bayにて、BMWモトラッドが主催する『NIGHT RIDER MEETING TOKYO 202[…]
ジェントルマンズライド(Distinguished Gentleman’s Ride)とは? 「ジェントルマンズライド(Distinguished Gentleman’s Ride、以下DGR)」は、[…]
コラボイベントの事前告知はSNS 「ウィズハーレー誌とのコラボ企画! イベントの模様は誌面にて掲載されます!!」 イベント開催が決定後、すぐにハーレーダビッドソン川口、そして関連店舗のSNSやホームペ[…]
人気記事ランキング(全体)
エイトボール! 王道ネイキッド路線への参入予告か スズキがグローバルサイトでティーザーらしき予告画像を公開した。ビリヤードの8番玉の横には『SAVE THE DATE 4TH JULY』とあり、7月4[…]
新進気鋭のクルーザー専業ブランドから日本市場に刺客! 成長著しい中国ブランドから、またしても新顔が日本市場にお目見えしそうだ。輸入を手掛けることになるウイングフット(東京都足立区)が「導入ほぼ確定」と[…]
静かに全身冷却&最長10時間のひんやり感を実現 ライディングジャケットのインナーとしても使えそうな『PowerArQ Cooling Vest』。その特長は、ファンやブロワー、ペルチェ式ヒートシンクを[…]
なぜ「モンキーレンチ」って呼ぶのでしょうか? そういえば、筆者が幼いころに一番最初の覚えた工具の名前でもあります。最初は「なんでモンキーっていうの?」って親に聞いたけども「昔から決まっていることなんだ[…]
供給不足解消に向け、スズキもかなり「がんばってます」 ジムニーノマドは、2025年1月30日の発表からわずか4日間で約5万台もの受注を獲得し、注文受付が一時停止に追い込まれるなど、国産車としては異例と[…]
最新の投稿記事(全体)
カバーじゃない! 鉄製12Lタンクを搭載 おぉっ! モンキー125をベースにした「ゴリラ125」って多くのユーザーが欲しがってたヤツじゃん! タイの特派員より送られてきた画像には、まごうことなきゴリラ[…]
排気量“500cc”バイクの魅力って? Hondaがラインアップする人気シリーズ「レブル」&「CL」シリーズ。 中でも、レブル250とCL250は幅広い層に人気を集めていて、街中やツーリング先でもとて[…]
スマートフォン連携でバッテリー管理が劇的に進化! 名古屋市に本社を置く株式会社SECONDが、LEADMAX-JAPANとの販売代理店契約を締結。2025年7月1日より、日本初上陸となるモーターサイク[…]
シリーズ第12回は最終回特別応用偏! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材など、公道安全運転のお手本として白バイ流の[…]
スズキGSX-R:斬新かつ孤高のネーム、走りもケタ違い 1983年は、世界耐久や鈴鹿8耐でスズキの耐久レーサーGS1000Rが旋風を巻き起こした。 その年の暮れ、晴海で開催された東京モーターショーに、[…]
- 1
- 2