今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は「ヤマハFZ750」について、メンテナンス上のポイントを明らかにする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:クロスロード
- 1 基本的に丈夫なバイクだが真夏の渋滞は避けるべき
- 2 ヤマハFZ750 メンテナンスポイント
- 3 クロスロード オリジナルパーツ:消耗部品はそれなりに揃うが、状況は厳しい
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基本的に丈夫なバイクだが真夏の渋滞は避けるべき
ネットでFZ750の問題点を検索すると、かなりの数がヒットするのはスタータークラッチの滑りで、それに続くのは、クラッチレリーズシリンダーからのフルード漏れ/ガソリンタンク内の錆/キャブレター/燃料ポンプ/センサー/点火系の不良など。
「まあでも、生産年を考えれば、整備履歴が不明の車両でそういったトラブルが起こるのは、止むを得ないことでしょう。ただしスタータークラッチに関しては、一般的なエンジンとは異なり、FZ系の場合はクランクケースを分解しないとたどり着けない構造なので、修理にはかなりの手間がかかります。だから費用対効果を考慮して、エンジンをFZR1000に載せ換える人が少なくないのですが、750には750ならではの魅力があるので、ウチでは積極的な推奨はしていません」
クロスロードの山田さんによれば、革新的な技術だった5バルブヘッドやダウンドラフト吸気に関するトラブルは、まったくと言っていいほどないそうだ。
「日本市場では評価が定まる前に販売が終了しましたが、FZ750は丈夫なバイクと言っていいと思いますよ。ウチできちんと手を入れた車両なら、以後のメンテナンスは基本的にオイル交換だけでOKですから。もっとも、’80年代中盤とは状況が大きく異なる現代の道路事情を考えると、ラジエター容量は十分とは言えないし、エンジンの熱を受けたキャブレターがパーコレーションを起こすことがあるので、夏場の渋滞は避けたほうがいいでしょう」
ヤマハFZ750 メンテナンスポイント
シリンダーヘッド:独創的な5バルブにトラブルはなし
キャブレーター&フューエルポンプ:完全分解で本来の資質を取り戻す
スタータークラッチ:ケース内だから修理は大変
クラッチリリース:ピストンの錆びがシールを攻撃する
エキゾーストシステム:出力特性の改善と軽量化を実現
エンジンオイル:入念なテストを経てシェルの鉱物油を推奨
ラジエーター:放置期間が長いと腐食や錆びが発生する
リヤショック:ハンドリングと乗り心地の要
リヤサスペンションリンク:内部のベアリングとシャフトの状況に注意
ブレーキキャリパーサポート:ブレンボ用サポートをワンオフ
タイヤ:純正と同じサイズのラジアルは存在しない
メインハーネス:純正は終売だがリプロ品を計画中
スパークユニット:コンデンサーのパンクが不調の原因
イグニッションコイル:経年変化によってボディに亀裂が入る
スパークプラグキャップ:耐久性や防水性なら純正部品がベスト
クロスロード オリジナルパーツ:消耗部品はそれなりに揃うが、状況は厳しい
海外仕様が’94年、兄弟車のFZXが’00年まで販売されていたのだから、維持は難しくないはず…と思いきや、山田さんによると、FZ750の純正部品の供給状況はかなり厳しいと言う。
「ガスケットやOリングといった消耗部品はある程度出ますが、それ以外は終売だらけで、アフターマーケットのリプロ品も決して多くはありません。ウチの場合はストックで対応できますが、今の時点で白紙の状態からこのバイクと付き合うのは、なかなか大変だと思いますよ」
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