
’19年に本誌がその存在をスクープして以来、近年まれに見るほどのスクープ合戦が各バイク雑誌を賑わせてきた大注目のダックスが、その全貌を明かすときがやってきた! ’22年最大の注目車といえるこの1台を大特集でお届けする。本記事では、シャーシ/エンジン/シフトチェンジ/足まわり/主要装備を旧ダックスと比較しながら解説する。
●文:ヤングマシン編集部(谷田貝洋暁) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダ
ここだけでも欲しくなる! 蘇ったT字型プレスフレーム
ダックスらしさとは何か? それはもはや答えるまでもなくプレス鋼板のT型バックボーンフレームだ。これなくしてダックスのリボーンはあり得なかったハズだが、ご先祖様と見比べてみると、時代の違いというか、苦労点が感じ取れる。
ダックスらしい胴長なスタイリングを作り出すのはもちろんだが、125ccにサイズアップするのに際して、しっかりフレーム剛性を確保しなければならない。また、昔のバイクと違って数々の規制をクリアする必要もある。フューエルインジェクションの燃料ポンプ/ABSユニット/ブローバイシステムなど、ご先祖様の時代には必要なかったパーツも多い。
そんな排気量アップや諸々の事情を飲み込んで、このスタイルを実現しているのだ。よくよく見ると、新生ダックスのプレスTバックボーンフレームにはホンダによる様々な工夫が詰め込まれている。
【プレスフレームは縦剛性が強い】構造上、縦方向の剛性が強くなるプレスフレームではあるが、新生ダックスのフレームを下部から覗くと、なんとフレームに底板が。ご先祖様のフレームは2ピースのモナカ構造だが、新生ダックスには反りのある底面がはめ込まれた3ピース構造なのだ。横剛性のアップが目的と思われるが、ハーネス/ブレーキの配管などもこの窪みを巧みに使って隠されている。この部分だけみるとスチールモノコックボティに近い構造? [写真タップで拡大]
【新生ダックスは首がしっかり】[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]ご先祖様はヘッドパイプ直後でフレームが細くくびれるのに対し、新型はくびれがなく、よりしっかりヘッドパイプを支えられそうな構造。レンジの高い走りを想定した作りだろう。この部位の溶接痕も美しい。 [写真タップで拡大]
エンジン:出力特性もタンデム向きのイージーライド!?
ロングストローク設計が特徴的な、ホンダの新世代125ccユニットを搭載する新生ダックス。その最高出力は9.4psでモンキー125と同じであるため、そちらに目が行きがちだが、ベースはスーパーカブC125が採用している自動遠心クラッチ式の4速リターンエンジンとみるべきだろう。
だが、スーパーカブC125の最高出力は9.8ps。0.4ps下がっている理由は? また、その発生回転数が500rpm落ちているのは何故…? と、実車を見ていて閃いた。エンジンから伸びるエキゾーストパイプが異様に長く見えるのだ。
そう、この新生ダックスのコンセプトはイージーライド。モンキー/グロムでは5速を採用しているにも関わらず、ギヤチェンジの煩雑さを嫌ってわざわざ4速ミッションを採用しているほどであり、2人乗りにも相当こだわっている。ならば発進時の力強さを求めて、スーパーカブC125よりも低速トルク型の特性に変更されているのではないだろうか。
そこでリヤのドリブンスプロケットの歯数を見ると34T。モンキー125は前後スプロケットの歯数が14×37で2次減速比が2.642だから、ダックスは15×34の2.266と推測。エンジンを中低速重視にして力強さを持たせつつ、二次減速比をロングとして、アクセルワーク由来のギクシャク感を抑えるセッティングだろうか。
煩雑なギヤチェンジの必要がなく、加速もスムーズ。まさにイージーライドを地で行くような乗り心地になっていることだろう。
【モンキーと同じ9.4ps】[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]50.0×63.1mmというロングストロークを採用する、ホンダの新世代横型125ccをダックスも搭載。基本はモンキー125/グロムと共通ながら細かなチューニングの変更に加え、ミッションはクラッチレスの4速リターンとされる。ご先祖様はシルバーだが、新型はシリンダー以外をブラックアウト。エンジンまわりのトーンを落としてフレームの存在感を強調させる工夫か。 [写真タップで拡大]
【兄弟エンジンとは細かくチューニング変更】[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]イージーライドを掲げる新生ダックスの最高出力は6.9kW(9.4ps)/7000rpm。これはモンキーと同じ数値だが、同じくクラッチレス4速のスーパーカブC125用エンジン(9.8ps)を低速重視にした結果、9.4psになったとも解釈できる。ご先祖様のキャブレターと比べてしまうと、フューエルインジェクション周辺の補機類はやや煩雑か。 [写真タップで拡大]
【サイドアップマフラーはダックスの必須要素】[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]当初から採用が決まっていたというサイドアップマフラー。ご先祖様と比べると、音量/排出ガス規制などからかなり太くなっているが、ボリュームアップのおかげで車体とのバランスは良好だ。ガードの丸穴は’71年のSPORT I/IIや’95年の復刻版へのオマージュか。 [写真タップで拡大]
シフトチェンジ:クラッチ操作いらずの4速カブシフト
誰もが楽に乗りやすく…というイージーライドを掲げる新生ダックスは、変速時にクラッチレバーの操作を必要としない自動遠心クラッチを採用。取得日数が短縮され取りやすくなった小型自動二輪AT限定免許にも対応している。
[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]モンキー125/グロムは変速時にクラッチレバー操作が必要なスポーツモデルだが、新型ダックスはスーパーカブと同様の自動遠心クラッチを採用し、クラッチレバーの操作が不要に。イージーライドを実現している。 [写真タップで拡大]
[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]カブ系と同様、停車時のみロータリーとなり、4速からニュートラルへ直接シフトできる4速リターン式。シーソーペダルで靴も痛めない。ご先祖様は3速で、仕様や年式でMT/ATが混在する(撮影車両はシーソーペダルのAT仕様)。 [写真タップで拡大]
足まわり:125cc化とともにがっしりとマッシブに
[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]比較車両は正立フォーク&アップフェンダーだが、ダックス初期型は倒立構造&ダウンフェンダーを採用(新型はこれを踏襲?)。倒立フォークはφ31mm径でホイールトラベルは100mmを確保。ご先祖様の合わせホイール&ドラムブレーキに対し、新型は220mm径ディスク+2ポットキャリパーのシングルディスクで、IMUを用いた1チャンネルABSも備える。 [写真タップで拡大]
【新型はホイールトラベル120mmを確保】[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]リヤショックはご先祖様同様のツインショックだが、見た目にはご先祖様の方が長く見える。また新生ダックスのリヤショックはちょっと立ち気味に取り付けられている印象を受けた。タンデムステップはご先祖様がスイングアーム直付けだったのに対し、新生ダックスはブラケットを装備。チェーンはDID製のシールタイプで、サイズは420だった。 [写真タップで拡大]
【前後ディスクブレーキ採用】[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]C125/CT125ハンターカブ系の楕円パイプではなく、がっしりとした角パイプ型のスイングアームが与えられた新型。リヤブレーキもグロム同様φ190mmシングルディスクを採用し、前後ドラムのご先祖様に比べると、かなりのストッピングパワー向上が期待できる。 [写真タップで拡大]
主要装備
【メーターはモンキーと同じ】[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]ご先祖様は扇形の指針式だが、新型はモンキー125も採用する反転液晶メーターを採用し、キーオン時の“ウインク”アニメーションも踏襲する。 [写真タップで拡大]
[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]新型の車体幅は760mmで、ハンターカブの805mmほどではないが、モンキー(755mm)/グロム(720mm)よりもワイドだ。 [写真タップで拡大]
【ダックスっぽくロングシート化】[写真左:DAX125/写真右:DAX HONDA ST50/70]リボーンシリーズで最も2人乗りしやすいハズの新生ダックス。形状と快適性にこだわったというシートは、リヤも含めて居住性が高そうだ。 [写真タップで拡大]
※本記事は”ヤングマシン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。
ホンダNEWダックス125完全解説に関連する記事
ホンダNEWダックス125 実車おさわりファーストインプレ【タンデムしやすい125ccファンモデル|動画でもおさわり】
’19年に本誌がその存在をスクープして以来、近年まれに見るほどのスクープ合戦が各バイク雑誌を賑わせてきた大注目の1台が、その全貌を明かすときがやってきた! ’22年最大の注目車といえるこの1台を大特集でお届け。本記事では、なんと実車へのまたがりを許された編集部が、常にハイテンションなテスター谷田貝&バイク声優のにゃんばちゃんにファーストインプレッションを依頼。その模様をお届 […]
人気のホンダ原付二種、絶賛増産中! 新型ダックスも普通に買えそう?【ホンダNEWダックス125完全解説】
いまや人気の新車は超品薄で、長期の納車待ちがあたりまえのバイク業界。発売前からこれだけ注目されているダックスも、やっぱりスグには買えないのだろうか? 人気の先輩原付二種の動向を見て、速やかに行動せよ! ビッグヒットしたら8000台でも余裕ナシ!? 最新バイク事情 待ちに待ったダックス125が、ついに今夏発売!…だけれど、コレってスグに買えるのだろうか? ホンダに限らず、このところ人気の新車はなかな […]
ホンダ新生ダックス125・新旧徹底比較!【スタイリング編|新型は力強く骨太に】
’19年に本誌がその存在をスクープして以来、近年まれに見るほどのスクープ合戦が各バイク雑誌を賑わせてきた大注目のダックスが、その全貌を明かすときがやってきた! ’22年最大の注目車といえるこの1台を大特集でお届け。本記事では、スタイリングの変化を旧ダックスと比較しながら解説する。 待望の現代版ダックス復活! 三代目となる新型をとくと拝見 出るぞ出るぞとは噂されていたが、ホン […]
関連する記事
2022年4月24日に東京サマーランドで開催された「第13回モンキーミーティング in 多摩」にて、新型ダックス125の展示とともに、本田技術研究所で初代ダックスをデザインした森岡 實さんのトークショ[…]
ヨシムラがダックス125用マフラーを作ったらどうなる? 車両発売前から妄想全開な我々ヤングマシンは、「どんなマフラーを装着したい?」のかを”勝手に総選挙”! 性能やルックスはも[…]
登場したばかりのホンダ・ダックス125に、なんと早くもカスタムマフラー!? しかも一挙に5種類だと…! カスタム業界総立ちの注目車を前に、もう辛抱たまらん状態となった我々ヤングマシン。得意の妄想をフル[…]
ホンダは、大阪モーターサイクルショーで初お目見えした新型レジャーバイク「ダックス125」を正式発表、2022年モデルとして7月21日に発売する。価格は予想通り44万円だった。胴長短足スタイルに最新技術[…]
ホンダがまたやってくれた! リボーン企画第4弾「ダックス125」が、’22年のモーターサイクルショーに市販予定車として登場するのだ! そこで我々ヤングマシン取材班は、「関係者に怒られるまで[…]
最新の記事
- ガスガスの新型車「SM700」「ES700」登場! スーパーモト/エンデューロともに158万円で7月発売
- チーム加賀山オリジナルマシン「鐵隼(テツブサ)」、テイストオブツクバの初陣を2位表彰台で飾る!
- 4気筒400ccスーパースポーツ復活は’22年秋とみた! カワサキ ニンジャ”ZX-4R”続報〈YM未来予想〉
- 劇的サビ落とし! バイク用サビ取り剤の使い勝手が最高だった【メッキ部品を漬けるだけで手間もなし】
- ホンダNEWダックス125 実車おさわりファーストインプレ【タンデムしやすい125ccファンモデル|動画でもおさわり】
- 1
- 2