[バイクのメカニズム] “夢のエンジン”=ロータリーエンジンはなぜバイクで普及しなかったのか?【国産市販車はスズキRE-5のみ】

スズキRE-5

●文:モーサイ編集部(山本晋也)

マツダ コスモスポーツやRX-7に搭載された“ロータリーエンジン”とは?

4輪メディアでは、定期的といっていいほど頻繫に「ロータリーエンジン復活!」といった論調のスクープ記事が出る。ご存知のように、ロータリーエンジンといえばマツダのシンボルともいえるエンジンだが、今は量産されていない幻のエンジンだ。

過去の搭載車を振り返ると、コスモスポーツ/サバンナRX-3/ファミリア/ルーチェ/サバンナRX-7/アンフィニRX-7/そしてRX-8とスポーツカーが多い。なかでも、唯一3ローターエンジンを載せたユーノスコスモは伝説となっている。

それゆえ、ロータリーエンジン復活の記事はスポーツカーとセットになっていることが多かったりもする。だから注目度が高く、多くの4輪メディアが騒ぎ立ててしまうのだろう。

マツダ コスモスポーツ

1967年に発売されたマツダ コスモスポーツ(L10A型)。国産では初めてのロータリーエンジン搭載車だった。エンジンは水冷2ローターで982cc、最高出力は110ps/7000rpm、最大トルク13.3kg-m/3500rpm。

マツダ初代サバンナRX-7

1978年に発売されたマツダ初代サバンナRX-7(SA22C型)。エンジンは水冷2ローターで1146cc、最高出力は130ps/7000rpm、最大トルクは16.5kg-m/4000rpm。

ロータリーエンジンの利点はコンパクトさと滑らかさ

ロータリーエンジンには、コンパクトという最大の特徴がある。通常の4サイクルレシプロエンジンの場合、吸気/圧縮/燃焼(膨張)/排気という4つの行程が同じシリンダー内で行なわれる。そのために必要な部品がバルブで、吸気時には吸気バルブを開き、圧縮/燃焼時にはバルブを完全に閉じておき、排気のときには排気バルブを開くというメカニズムが必要になる。

一方、ロータリーエンジン(海外ではヴァンケルエンジンとも呼ばれる)の場合、まゆ型をしたハウジングの中を三角系のローターが回転することで、4つのサイクルを文字通りに回していくという仕組みになっている。

ローターのある面(辺)に注目すると、吸気ポートの開いている部分で混合気を吸い込み、それをハウジングの形状によって圧縮していき、スパークプラグで点火することで燃焼させる。そして排気ポートのある部分で押し出すという具合だ。

ロータリーエンジンの仕組み

ロータリーエンジンの仕組み。黄色=吸気行程/オレンジ=圧縮行程/赤=燃焼工程/茶色=排気行程(1959年、NSUが制作したロータリーエンジンの概要説明冊子より)。

こうしたサイクルを偏心運動で行なっているという構造は、ピストンの往復運動によるレシプロエンジンより滑らかなフィーリングとなることは明らかだ。4輪で多く使われている2ローターエンジンは6気筒並みのスムーズさと言われるが、実際に乗ると想像以上に滑らかな回転フィールに驚くことだろう。

さらに、ロータリーエンジンは先ほど記した4つのサイクルを、3つの辺で同時に行なっているのも特徴。これはすなわち1つのローターが2~3気筒に相当するということであり、またカムシャフトやバルブが不要なことから小型化できる。小型で高出力が期待できる夢のエンジン、それがロータリーエンジンだったのだ。

1960年代から各社がロータリー搭載バイクに着手した背景

“小型で高出力”への期待から、1960年代にはメーカー各社がロータリーエンジンの開発に着手した。日本でいえば、トヨタ/日産/ヤマハ/カワサキ/ホンダなどが試作段階までは至ったが、実際に市販・量産にこぎ着けたのは、4輪ではマツダ、2輪ではスズキだけだった……

※本記事は2022年3月15日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。