ホンダGB350満タン→ガス欠ツーリングテスト【ハイペースでも1タンクで約500km走ってくれた】

ホンダGB350満タン→ガス欠ツーリングテスト

新型ホンダGB350について、あまりにも多くの人が誉めるので、何か問題点を見つけてやろうと思っていた。ヤングマシン編集部からの依頼は、ガス欠になるまで走ったうえで、ツーリング好き目線/旧車好き目線でGB350を語ること。そして実際にGBで約500kmを走った現在の僕は、ツーリング&旧車好きとして、語りたいことがテンコ盛り状態になっているのだった。


●文/写真:中村友彦 ●取材協力: ホンダ

【テスター:中村友彦】積算計が15万kmを超えた’06年型XL883をいたわりながら走らせつつ、最近は’74モトグッツィV850GTをメインの愛車としている、ツーリング&旧車好きフリーランス。

ツーリング好き目線:快適で飽きが来ないから、ロングランが楽しめる

まずはツーリング好き目線の話から行ってみよう。パッと見は旧態然とした構成で、前後サスペンションも至ってオーソドックスだけれど、このバイク、ロングランがすこぶる快適なのである。走行中も走行後も身体のどこかに痛みを感じることはなかったし、心理的な疲労もほとんど皆無。その一番の理由は、昔ながらのまっとうなライディングポジションと肉厚のシートだ。ただしGBの車格は、350ccとしてはちょっと大柄なのだが、抜群の快適性を実感した僕には、むしろ小柄化に注力しなかったことがこのバイクではプラスになっているんじゃないかと思えた。

快適性に続いて述べたい魅力は、操り方次第でマシンの反応が変わる、飽きが来ないライディングフィール。アクセルの開け方によってトルクのノリ方が変化することや、旋回時にベストなタイミングで荷重/抜重を行うと、前輪がスッとインに向きクルリと車体の向きが変わる挙動を理解すると、マシンとの対話を楽しみながらどこまでも走り続けたくなってくるのだ。

なおライディングフィールに関して驚きだったのは、未舗装路が予想以上に楽しめたこと。この種のベーシックな単気筒車は環境の変化に比較的強いものだけれど、GBは強いどころではなかった。ガレ場でもフロントまわりがなかなか弾かれず、スロットルを開ければ後輪が路面を蹴る感触がハッキリに伝わって来るから、不安や恐怖を感じることなくかなりいいペースでダートを走れてしまったのである。

もちろん、約33km/Lの実用燃費も、ツーリング好きとはしては嬉しい要素だ。今回の試乗はやや飛ばし気味だったため、残念ながら大台には届かなかったものの、WMTCモードの燃費が41km/Lという事実を考えると、まったりペースで走れば、航続距離は確実に500kmを超えるだろう。

そんなわけで、ツーリング好きとしてはかなりの高得点を付けたくなるGBだが、読者の中にはという最高20ps出力に物足りなさを感じている人がいるかもしれない。かく言う僕も試乗前はその点を心配していたのだけれど、実際のGBに遅いという感触はなく、峠道ではミドル以上のバイクと大差ないペースで走れたし、高速では120km/h程度の巡航も可能だった。

逆に言うなら、GBを体感した僕は、馬力が少ないからこそあらゆる場面で思い切ってアクセルが開けられ、その感触が心理的な疲労の少なさにつながっていることを実感。同時に普段の自分が行なっている一般道主体のツーリングなら、馬力は20psで十分なのかも…という印象を抱いたのだった。

出発時はもちろん、燃料満タンでトリップメーターは0.0km。ちなみに実測ガソリンタンク容量は、公称値と同じ15Lだった。

【十分な航続距離】高速走行中だったので写真は撮れなかったけれど、436.2kmで燃料残量警告灯が点滅開始。そこから60.6km走行後にガス欠。

【燃費表示はシビアかも?】ガス欠時点でのメーターの燃費表示は30.1km/Lだったが、実測した計算上の燃費は496.8÷15=33.12km/Lとなった。

【ハイペースだったけど1タンクで約500km走ってくれた】今回の試乗はややハイペースだったので、一般的なツーリングなら航続距離は500kmを超えると思う。

ロングラン疲労度CHECK

クラッチ操作は超が付くほど軽々。基本的に僕はクラッチの重さに寛容なタイプだが、ダート走行時は軽さに感謝したくなった。

ハンドル切れ角は、オンロードバイクとしてはかなり大きい左右43度。Uターンはもちろん、車庫入れ的な移動も実にイージー。

シートの座り心地はかなり良好で、約500km走行後も尻の痛みはナシ。荷掛けフックとヘルメットホルダーの使い勝手も好感触。

旧車好き目線:往年の旧車を思わせる燃焼感とキレ味

続いては旧車好き目線での話である。決してエラそうに言うつもりはないものの、これまでに数多くの旧車を体験/所有してきた僕にとって、GBの第一印象は薄味だった。排気音はそれなりに歯切れがいいけれど、エンジン特性は抑揚が希薄でパンチが感じられないし、振動はそこまでやらなくてもと言いたくなるほど抑えられているし、車体からはコレといった主張は伝わってこない。名車と呼ばれる旧車の多くは、走り出した瞬間から何らかの個性/主張を感じさせてくれるものだけれど、少なくとも僕の視点では、GBにそういった雰囲気はなかった。

ところが、試乗開始から数時間が経過する頃には、印象がガラリと変化。抑揚が希薄でパンチが感じられなくても、右手を捻ればエンジンの燃焼感はきっちり心身に伝わってくるし、当初は乗りやすくても面白味に欠けると思った車体は、いろいろな場面で探りを入れてみると、細身で大径のタイヤ+昔ながらのディメンションならではのキレ味を隠して、いや備えていたのだ。そして約500kmの走行を終えた時点で、僕はふと思ったのである。現代の厳しい排気ガス&騒音規制と万人受けを考慮した結果として、チョイ乗りレベルではわかりにくくなっているけれど、このバイクは旧車の魅力を見事に再現しているんじゃないかと。

さて、ここまでの文章を振り返ると、何だかチョーチン的な内容になってしまったが、真面目な話、ツーリング&旧車好きの僕にとって、GBは理想的な特性を備えていたのだ。もちろん単純にロングランでの快適性を求めるなら、あるいは旧車的なフィーリングを満喫したいだけなら、他にも選択肢はあるだろう。とはいえGBの場合は、その2つを高次元で両立しているうえに、ライバルになりそうなネオクラ系モデルと比較すると価格と車格がダントツにフレンドリーなのである。

そんなGBにあえて異論を述べるとすれば、カスタム意欲があまり湧かないことだろうか。もっとも試乗中の僕は、吸排気系やリヤショックなどの刷新を夢想していたのだが、現状の絶妙なバランスを考えると、カスタムでSTDを上回るトータル性能を獲得するのはかなり難しそうな気がする。

試乗中の注目度は抜群。写真は今回のツーリングで約半分の行程をご一緒したイタリア車好きの皆様で、MHRオーナーも興味津々?


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