愛車と楽しく走るだけでなく、ちょっとしたメンテナンスを自分の手でできるようになれば、愛車への愛着度がさらに増して過ごす時間も密に愛あるものへと昇華するハズ! というテーマを掲げ、オフロードマシン総合誌『ゴー・ライド』より、超・初心者でもできる簡単メンテナンスを、ヤマハ セロー250をモデルにじっくりと紹介する。第2回目は、操作系メンテナンスの中から比較的需要の高いクラッチ交換と調整について伝授するゾ! (これからメンテナンスを始める人や超初心者に向けた内容なので、経験者の皆様は暖かく見守ってあげてください♪)
実際にメンテナンスに挑戦する前に "自分で愛車をメンテナンス"と聞くと、難しそうだったり下手したら壊してしまいそうというイメージや、手は汚れる&なんだか面倒くさそう、そもそもメンテナンスできそうな広い[…]
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【取材協力&レクチャー:YSP川口】「YSP川口」はヤマハバイク専門ディーラーであり、人気モデルから最新モデルをズラリと店内に展示するほか、試乗車も多数用意。修理/車検/点検はもちろん、カスタムも含むさまざまなサービスに定評のある頼れるショップだ。また、オフロードコーナーが常設され、オフロードファン必見の林道走行にスポットを当てたカスタム車「セロー250 YSP川口オリジナル林道コンプリート」も取り扱うなど、オフロードモデルにも強い。●住所:埼玉県川口市朝日1-1-30 ●営業時間:10時〜19時半 ●定休日:月曜 第2/4火曜 特別定休日
クラッチレバーは重要な生命線のひとつ
シフトチェンジはもちろん、ライディングにおける繊細なレバータッチやその軽さ、レバー角度などなど、乗り味や疲労度にも大きく影響し重要な役割を果たすクラッチレバー。が、転倒時には簡単に曲がったり折れたりしやすい弱点を持つ。
一度折れたり曲がったりしたら修正は困難なので、交換するのが安全面においても一番。曲がったレバーを無理にもとに戻そうするのもやめたほうがいい。とくにアルミレバーだと、曲がった部分を支点にパキッとキレイに折れてしまうので、出先などでは下手に曲がりを直すよりも曲がったままで走行したほうがいいこともある。
また、モデルによってはクラッチレバーが折れてしまうと、スゴい握力の持ち主であっても折れ残った部分だけではクラッチを切ることが困難な場合があり、その時点で走行不可になることも……。とくに林道走行中など、転倒しやすい状況かつ、すぐに舗装路など人のいる場所に出れない場所では、進退極まってしまう可能性が高くなる。
そんな時、レバーの予備を1本持っておいて自分でレバー交換ができれば、万が一の場合に対する安心感がグッと上がる。レバー1本など、車載工具とともにそっと忍ばせておけるので、携帯も苦ではないハズだ。
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クラッチレバーの交換&調整に使用する工具は、#10ソケットレンチ(写真右)と#10コンビネーションレンチ(写真左)。
クラッチレバーを交換する
今回、ヤマハ セロー250をモデルに紹介するが、メーカーやモデル別に仕組みや素材、その形状などに多少の差異はある。でも、どういう構造で機能しているかがなんとなくでも理解できれば、自分の愛車へも得た知識を落とし込めるハズだ。
セロー250のクラッチレバーのブーツ(黒いカバー)をめくる。遊び調整のネジと、それをロックしているロックナットが出てくる。(パッと見、だいたいのモデルにおいてゴム製のカバーなどがついて隠れているので、めくって探してみよう。)
ロックナットを緩める(モンキーレンチでもOK)。
ロックナットを手で動かせるくらいに緩めたら、クラッチレバー側のブーツを外しレバーを露出させよう。ロックナットを緩めたことで動くようになった”遊び調整のネジ”を回し、ロックナットとともにすべての切り欠きを一直線に揃える。
レバーホルダーからクラッチレバーを外そう。クラッチレバーとレバーホルダーを留めているボルトを外すだけ。
レバーホルダーからクラッチレバーが外れたら、さきほど合わせた切り欠きに沿ってクラッチワイヤーを外し、クラッチレバーの裏側にはまっているタイコ(ワイヤーをレバーに引っかけるためのパーツ)も外すと、レバーが取れる。ちなみに、このタイコとワイヤーの付け根が壊れるとクラッチワイヤー交換になる。
クラッチレバーとクラッチワイヤーを外した時、レバーホルダーもチェックしよう。転倒などの衝撃でクラッチレバーとこじれることにより、ホルダーの幅が広がってる可能性がある。もし広がっていたらプライヤーで軽く上下につまんで整えてあげよう。
交換するレバーやボルト、タイコにもしっかりとグリスを塗り、外した手順をさかのぼって戻したら完了! (塗るグリスはなんでも使える万能タイプがオススメ。つけないとクラッチレバーなどの動きが渋くなるからだ。)
クラッチの遊び量を調整する
クラッチを握って実際に切れはじめるまでの幅=クラッチレバーの”遊び量”はモデルによって千差万別で、ショップの事前メンテナンスなどでもその差異が出る。繊細なクラッチ操作を求めたりと走り方の好みはもちろん、手の大きさの差などでも、クラッチの遊び量は人によってちょうどいい位置が変わってくるのだ。
これを自分で調整できれば、状況に応じて最適な遊び量でマシンを楽しめる。上で紹介したクラッチ交換までできるようになっていれば、この調整も作業の一貫としてバッチリできるハズ!
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クラッチレバーを握ってもクラッチワイヤーにテンションがかからない状態(スカスカした感じ)の動き幅が、いわゆる”クラッチレバーの遊び”だ。遊びの基準は、スカスカした状態の時のレバーとレバーホルダーのスキマを測ると5mm程度。ここを基準に好みに合わせて遊びを増減させると大きな間違いはないハズ。
クラッチを握り、自分の好みと思えるところまでネジを回して合わせよう
手の小さい人は遊びを大きくして、しっかりと握力を伝えられる近い位置に合わせるのがオススメ。締めると緩めるでどっちがどっちか分からない場合は、とにかく”遊び調整のネジ”を回してみて、クラッチを握りながら自分の好みに合わせればOK。
クラッチ交換と同じ流れでクラッチレバーのブーツ(黒いカバー)をめくり、ロックナットを緩める。ロックを緩めて動くようになった”遊び調整のネジ”をくりくり回して、好みの遊びに調整する。締めれば遊びが増え、緩めると遊びが減る。
クラッチレバーの高さを調整する
クラッチレバーの高さを自分のスタイルに合わせて調整することで、操作性が格段にアップする。オンロード走行ではそこまで大きく違いは出ないだろうが、スタンディングを多用するオフロード走行ではその違いは歴然。
例えば、林道走行時のみスタンディングメインで走るという場合なら、自分で高さ調整ができれば、林道ではスタンディングに適した高さに変えることで、より林道走行を楽しめるというわけだ。
緩める際は、ボルト[A]を緩めてからボルト[B]を緩める順番で。高さ調整をするだけなら、ボルトを全部緩める必要はない。緩めすぎるとレバーホルダーがハンドルからガタガタになってしまうので注意。ある程度2カ所のボルトを緩めて動かせるようになったら、グリグリっとレバーホルダーを動かして高さを調整しよう。調整が終わったあと、ボルトを締める時は、緩めた時とは逆の手順で、ボルト[B]から行うようにする。
クラッチレバーの高さ基準については、こっそりポンチ(基準を教えてくれる穴)がハンドルバーに刻まれている。高さを元の位置に戻したい時は、レバーホルダーの結合部の線にポンチを合わせればOK。また2カ所のボルトを緩めすぎてレバーホルダーをガタガタにしてしまった時もココに合わせれば元通りだ。
クラッチレバーの高さを調整する際は”クラッチスイッチ”に注意を
クラッチレバーの高さ調整をするためにレバーホルダーを動かす時、”クラッチスイッチ”のワイヤーが固定されているかいないかをチェックしたい。クラッチスイッチとは、クラッチを切ることで1速でも安全にエンジンをかけられる機構。逆にこれがないと1速に入った状態でもセルが回り、車両がドンと飛び出す危険がある。
セロー250にはないが、車両によってはクラッチスイッチのワイヤーが固定されていることがあるので、レバーの高さをグリグリと変える前に必ず固定をほどいてワイヤーにテンションがかからなくしよう。なぜならば、メーカーによってはクラッチスイッチが抜けたり壊れたりするとエンジンがかからなくなることもあるからだ。
実際にわかりやすく合わせてみると……
スタンディング時に最適の状態に合わせると、シッティング時に手首の角度がやや不自然になる。逆もまた然り。自分の好みのライディングスタイルに合わせてよりよいレバー角度を探ってみよう。
自分のスタイルに合わせたポジション調整で、走りをさらに楽しめる!!
ライダーそれぞれ、体格も違えば乗り方も違う。したがって身体に合わせてのポジション調整はとても重要だ。今回は超・初心者向けに操作系の中からクラッチ交換と調整を紹介したが、ほかにも各部の調整をすることで操作性が良くなり、より楽しく愛車に乗ることができるのだ。もう少し突っ込んで知りたければ、ぜひオフロードマシン総合誌『ゴー・ライド』第6号をチェキ!!
次回はドライブチェーンの清掃や、エンジンオイル交換とエアクリーナーのメンテナンスを紹介する。
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