●文/写真/イラスト:ゴーライド編集部(小泉裕子) ●タイトル写真:長谷川徹 ●講師:倉田圭 ●監修:浅谷健介(日本指圧専門学校/横浜訓盲学院)
コロナ禍により、これまでに比べて自宅にいる時間が圧倒的に増えた人は多いだろう。だいぶ情勢的には落ち着いてきたとはいえ、空いた時間や休みに走りに行く機会も減り、行けたとしても遠出は控えるという話もよく聞く。そんな状況下において、家の中ではもちろん、通勤中や仕事中でも”ながら”でできる「セルフ身体メンテナンス」を紹介しよう。前編では、まず鍛えるべきインナーユニット、そしていわゆる体幹とはなにか、鍛えるメリットから説明する。オフロードライディングはもちろん、知っておくと日常生活や老後にも効いてくる身体改造ができちゃうゾ!
体幹エクササイズでセルフ身体メンテ
いつからかよく聞くようになった「体幹トレーニング」や「インナーマッスル」というお言葉。難しそうなポーズやストイックな雰囲気に、スポーツ選手や意識高い系の人たちが嗜むエクササイズというイメージを持つ人も多いだろう。
今回、おウチにこもることの多い今の状況下でできる「簡単にひとりでできて、オフロードライディングにもつながる身体メンテってなんだろう?」という疑問に対し、あん摩マッサージ指圧師のケイ先生が示してくれたのは、まさかの「体幹エクササイズ」。
これを機に、具体的に体幹エクササイズなるものと向き合いつつ、インナーマッスルとは実際どういうものなのか、鍛えることでどういうメリットがあるのかを知りたいと考えた。そして、できるならば”ながら”で行えるような、”簡単”で”誰でも長続きできそう”なエクササイズを指南いただいた。
体幹筋を構成するグローバル筋とローカル筋を知ろう
首を含む頭部、手足を除いた胴体部分を「体幹」という。浅いところにある筋肉を「グローバル筋(アウターマッスル)」、深いところにある筋肉を「ローカル筋(インナーマッスル)」といい、ともに体幹を安定させるために重要だ。
まず体幹エクササイズを行うにあたり大切なのが、それぞれの鍛えたい筋肉の存在を自分の中ではっきりとイメージし、明らかにすること。
グローバル筋
肋骨と骨盤を大きくつなぐ、たくさん関節を跨いでいるのが「グローバル筋」。グローバル筋は目に見える大きな動きを担当している体幹筋群であり、脊椎には直接作用せずに、脊椎全体の姿勢や平衡をコントロールする、外側から支える筋肉。いわゆる腹筋運動など回数を重ねる筋肉トレーニングで鍛えられる筋肉だ。
ローカル筋
一方で、関節を1カ所しか跨いでいないのが「ローカル筋」。ローカル筋は、目に見えない微妙な調整と身体の芯を作ることを担当している、腰椎に直接付着している筋群。脊椎に直接作用し、背骨一つひとつを分節的に支えて安定性を増加させる筋肉。鍛え方は呼吸法や基本姿勢が大事で、”効いているのか分からないくらい”の筋肉トレーニングでも効果を発揮する。いわゆるインナーマッスルと呼ばれるのはこの筋肉群だ。
身体メンテで鍛えるべきはローカル筋
体幹、そして体幹を安定させる重要な役割を持つグローバル筋とローカル筋に触れたところで、今回の主役となるローカル筋についてさらに詳しく説明する。
メジャーどころのグローバル筋(アウターマッスル)はいわゆる腹筋運動などで鍛えられる”目に見えて動きがわかる”筋肉だが、これから解説するローカル筋(インナーマッスル)は身体の一番奥にあり、”筋肉の動きが目に見えないし感じるのも難しい”筋肉だ。だからこそ、意識することが大切になる。
ローカル筋を知って意識することが重要
体幹は胸腔と腹腔に分かれ、この腹腔を構成し腹圧を高める役割を持つのが、ローカル筋(インナーマッスル)に属する横隔膜筋/多裂筋/腹横筋/骨盤底筋。この4つを「インナーユニット」という。
(1)横隔膜筋
胸腔(胸をとりまく骨格)と腹腔の間にある膜状の筋肉で、腹腔の天井であり胸郭の底でもある。横隔膜が縮んで下がると胸郭が広がって肺がふくらみ息を吸う。緩むと上がって胸郭が狭まり、息を吐く。呼吸の活動の8割を担う、呼吸の要である筋肉だ。
(2)多裂筋
腹腔の背中側を支えており、脊柱を作る椎骨同士をつなぐ。背骨に沿って走る、腰から首まで伸びている筋肉。脊柱を伸ばす伸展(後方へ反る)、側屈(横に傾ける)、回す回旋(ひねる)に関わる、姿勢の安定や上体の動作をサポートする筋肉だ。
(3)腹横筋
腹腔の前面から側面までコルセットのようにカバーする。腹直筋などの腹筋群で一番深い位置にある。体幹(胴体)の屈曲(前方に曲げる)、側屈(横に傾ける)、回旋(ひねる)に関わり、腰まわりと体幹を安定させる働きを持つ筋肉だ。
(4)骨盤底筋
腹腔の底を支える。骨盤の内臓が下垂しないように骨盤の底でハンモック状に広がり、骨盤内の内臓の位置を持ち上げ、支える。尿道や肛門、膣を引き締める働きも持つ筋肉だ。
インナーユニットを鍛えるメリット=本気で身体が芯から変わること
インナーユニットを鍛えることで身体の土台が安定し、ライディング時のフォームがブレにくくなるだけでなく、ダートで滑ったり接触などで身体がブレた場合でも素早くリカバリーできるようになる。
オフロード走行だけでなく、オン走行でもマシンを操る時に感じていた”人間がマシンの挙動を邪魔する”といったブレや不安定感が軽減するほど。
また、”ライダーあるある”のひとつ=腰痛の予防や改善にも貢献し、日常生活の向上やスタイルアップに加え、老後の転倒防止などにもつながる。
横隔膜筋を鍛えるメリット
- 腹圧が上がり、お腹まわりが引き締まる
- 呼吸が深くなり、血行が促進される
- 胃の不調改善や逆流性食道炎予防になる
- 血行がよくなることで、鬱々とした気持ちになりにくくなる
多裂筋を鍛えるメリット
- 腹圧が上がり、お腹まわりが引き締まる
- 腰痛の予防&改善の効果絶大
- 上体の姿勢が安定することで、身体の歪みが軽減する
腹横筋を鍛えるメリット
- 腹圧が上がり、お腹まわりが引き締まる
- 身体の軸がしっかりして転倒防止につながる
- 腰痛の予防&改善の効果絶大
- 腸が刺激されて便秘症状が改善される
骨盤底筋を鍛えるメリット
- 腹圧が上がり、お腹まわりが引き締まる
- 尿漏れなどが改善する
- 肛門/膣のしまりがよくなる
- 男性器が元気になる
鍛えたい筋肉を知ったらあとは実践!!
どの筋肉をどんな期待を持って鍛えたいのか、その筋肉の場所と在り方を知ることで、実際に鍛えるにあたってその効き目は驚くほど変わる。これから鍛えるべきインナーユニットは身体の一番奥にあり、”筋肉の動きが目に見えないし感じるのも難しい”筋肉だからこそ、ここまでの”知って意識する”という道筋は欠かせないものなのだ。
後編では、実際の鍛え方をケイ先生に伝授いただこう。
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