シャーシ:商売っ気が微塵もない、勝つための調整
ホンダ新型CBR600RRのシャーシは、劇的な変更がないように見えるが、必要にして十分な改良が施されている。メインフレームは、従来型を踏襲した中空アルミダイキャスト製ツインチューブ。溶接部分や構成部品を減らした4ピース構造で、軽量かつ重量バランスに優れる。変更しなくても”戦える”との判断なのだろう。
一方、スイングアームは別物に進化した。外観から見分けはつかないが、剛性バランスや内部構造を最適化し、軽量化も促進。デザインを変更すれば、アピールポイントとなろうものを…。商売っ気より実質的な性能を選んだ改良に、ホンダの本気が感じられる。
【メインフレームは踏襲】(左)肉薄な中空アルミダイキャスト製メインフレームを継承。中央を貫通した大型のステアリングヘッドも健在だ。(右)専用品のHESD=電子制御式ステアリングダンパーは従来から継続。車速を検知し、減衰特性を自動可変する。
【スイングアームは板厚変更と内部構造を最適】スイングアームは、右側がアルミプレス、左側がアルミ押し出し材。剛性バランスを見直し、各部の板厚を変更した。さらに内部構造の最適化を図り、150gの軽量化を達成。
’13年モデルと新型のスペック比較
足まわりはブレーキの進化がトピック。最新のスーパースポーツ専用ABSを採用し、従来比で2.5kgの軽量化を達成した。IMUの情報も活かし、車体姿勢に応じてブレーキを緻密に制御。ハードブレーキングや旋回中の減速もサポートするため、ライダーは安心してトータルコントロールの”操る喜び”を味わえる。サスペンションに関しては、フロントはフォーク長を伸ばし、突き出し量を増やすことで車高アップに対応。地味ながら本気で走りたい人を見据えた良変更だ。
ディメンションについては、キャスター角が若干起き、軸間距離は5mm短縮。リヤアームはエンドピース接合部をずらしたことでロング化と同じ効果を狙う。
【BPFは全長が伸び、突き出しが増加】ショーワ製のφ41mmビッグピストンフロントフォーク(BPF)を踏襲するが、新型では全長を伸ばし、突き出し量を増やすことで車高アップが可能に。リヤアームと同様、セッティング幅が拡大しているのがミソだ。BPFはプリロード&伸/圧減衰力が可変のフル調整式で、ストローク初期の動きが穏やかなのが特徴。ブレーキはトキコ製の対向4ポット+φ310mmディスクを踏襲している。
【セッティング幅拡張のため、接合部を変更】エンドピース接合部を3mm後方とし、軸間距離やスプロケットなど調整の自由度が増した。
【ユニットプロリンクを踏襲し、タイヤを最新銘柄に】ユニットプロリンク式リヤサスペンションを新型も継続。サスを車体から独立させた構造のため、軽量化に有利で外乱も受けにくい。タイヤは最新のダンロップ製ロードスポーツ2だ。
一気に緻密&軽量化を果たしたABSシステム
’09年型から採用した電子制御式コンバインドABSに代わり、最新のスーパースポーツ専用ABSを導入。CBR1000RR(SC77)と同様のシステムで、従来より2500g軽量だ。ニッシン製のABS用ECUが、前後の車輪速センサーとIMUによる車体姿勢の情報を基にブレーキ圧を制御。急制動時におけるリヤリフトを抑えるほか、旋回中のブレーキングでも切れ込みや車体の起き上がりを緩和する。
【急制動シグナルも標準搭載】急制動した際、ハザードランプが高速で点滅し、後続車に注意を促すエマージェンシーストップシグナルを新採用。近頃のホンダ車が続々導入している最新の安全装備だ。
ユーティリティ:実用装備は最低限
ライダーズシートは、荷重しやすい幅広タイプ。前部が絞られ、足着き性に貢献する。リヤシートはスーパースポーツにありがちなミニマムサイズだ。
荷掛けフックはシート下の左右2か所に設置。スーパースポーツでは珍しい装備で、使い勝手がいい。
●文:沼尾宏明 ●写真:山内潤也 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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