世界初:電子制御キャブ+マグホイールetc.

時代を切り拓いた革新のエポックマシン:ホンダNSR250R/SP【不動”最強”の座】


●文:沼尾宏明、中村友彦 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

’88 NSR250R/SP〈世界初・電子制御キャブレター+マグホイール〉飛躍的に性能アップ、「最強」の座が不動に

大ヒットした本格レプリカ・ヤマハTZR250の対抗馬として’86年10月、ホンダがNSR250R(MC16)を送り込んだ。その走りは衝撃的で、まさにレーサーRS250Rにそのまま保安部品を装着したような仕上がり。性能でライバルを圧倒し、爆発的なセールスを記録した。

しかしホンダは追撃を緩めない。’88年1月に早くもフルチェンジしたMC18を投入。強烈だった初期型を上回る「レプリカ決定版」として、NSRの座は不動のものとなった。

90度Vツインは各部を改良しつつ、世界初のコンピュータ制御によるPGMキャブレターを投入。空燃費の最適化によって全域パワーを実現し、歴代最強と呼ばれる性能を獲得した。さらに同年3月、市販車初のマグネシウムホイールを与えたSPを発売。WGP王者が駆ったロスマンズカラーもまとい、大評判を呼んだ。

【’88 HONDA NSR250R/SP】排気デバイスのRCバルブがIIに進化し、最大トルクは0.2kg-mアップ。5角断面フレームや大径φ41mmフォークも導入した。初代からより先鋭化し、歴代最強の呼び声も高い。■車重126kg(乾) 水冷2ストV型2気筒ケースリードバルブ 249cc 45ps 3.8kg-m ■当時価格:66万円 ※SP

【’88 HONDA NSR250R】

エンジン回転数とアクセル開度を検知し、ソレノイドバルブでエアジェットを電子制御するPGM(Programmed)キャブレター。理想的な空燃費を維持し、低中速域でもスムーズなレスポンスを実現する。さらに点火系もコンピュータ制御となった。

メーターはスポンジマウントの3眼に変更し、よりレーサーらしいコクピットに。レッドゾーンは+500rpmの1万1500rpmに引き上げた。

’88で初のSPを追加し、前後でSTDから約1.5kg軽量化したマグホイール(MAGTEK)を採用。レーサーの砂型鋳造に対し、金型鋳造とした。’89SPから乾式クラッチも標準に。

’86初代も衝撃デビュー】WGP優勝マシン=RS250RWのコピーを目指し、市販レーサーRS250Rと共同開発。RCバルブを備えた新設計Vツインはパワフルの上に、小変更で60ps超を叩き出す。車重は最軽量の125kgを達成するなど衝撃的なスペックだった。

【’86 HONDA NSR250R】

’90 NSR250R:最大の宿敵ガンマに対抗してガルアーム採用

VJ22Aガンマが発売されたのは’90年1月30日。同年2月13日にリリースされた3世代目NSRのMC21もまた湾曲アーム(ホンダの呼称は「ガルアーム」)を新たに備えた。さらにMC21は、動的な剛性バランスに着目したのもトピックだ。先代までは高剛性を徹底追求してきたが、発想を転換。適度に横方向の剛性を抜くことで、自由度の高いハンドリングを手に入れた。90度VツインはMC18を踏襲しつつ、電子制御を高度化。吸排気系も刷新され、柔軟な出力特性を達成している。そのバランスの高さは歴代随一との評価も高い。

【’90 HONDA NSR250R】■車重132kg(乾) 水冷2ストV型2気筒ケースリードバルブ 249cc 45ps 3.7kg-m ■当時価格:60万9000円

MC18(左)とMC21(右)。先代のMC18と比較すると、メインフレームやリヤアームの幅は薄く、旋回時に適度にねじれる剛性バランスとした。一方でフレーム全体の幅は広く取り、ブレーキング時に必要な縦剛性はキープ。さらにピボット周辺を大型化するなど、絶妙な操縦感を実現した。

エンジンは、コンピュータで統合制御するPGM-IIIに進化。ガルアームは、形状がカモメ(Gull)に似ていることから命名された。合わせてリヤタイヤは18インチから17インチへ。

’89シーズンからWGPマシンのNSR500とΓは湾曲スイングアームを採用。早くも翌年の市販車に同様の技術をフィードバックしたのだから、驚くべき開発スピードである。

’94 NSR250R〈世界初・カードキーシステム〉マッピングまでも変更可能

片持ち式プロアームや洗練度を増した電子制御ユニットのPGM-IV、ボディを一新したTBキャブレターなど、4代目NSR250RとなったMC28は数々の新技術を導入。とはいえ、最も注目を集めたのは世界初のカードキーシステムだ。この機構は、単に既存のイグニッションキーをカードに変更しただけではなく、点火時期/RCバルブ/キャブレターのソレノイドバルブを調整するチューニングパーツとして使用することが前提で、ホンダのレース部門であるHRCは状況に応じたマップを入力した3種類のカードを設定。残念ながら実現はしなかったが、当時の同社はPCとカードリーダーを用いて任意でデータが設定できる書き換えシステムも検討していた。

【’94 HONDA NSR250R】■車重134kg(乾) 水冷2ストV型2気筒ケースリードバルブ 249cc 40ps 3.3kg-m ■当時価格:68万円

カードキーシステムはマクセルとの共同開発。左上に収まるキーはタンクキャップとヘルメットホルダー用で、ハンドルロックは電磁式。フルパワー化を実現するHRCカードを装着すると、灯火類は機能を停止する。

レーシングマシンならではのディティールを徹底追及した結果、アナログ式スピードメーターはコクピットから排除。HRCカード装着時のデジタルモニターには、速度に替わって水温が表示される。

【NSRもプロアーム化】ワークスNSRと市販レーサーRSの機構を踏襲する形で、4代目NSRはプロアームを導入。ただし、レーサーのアームが右側だったのに対して、4代目のアームはVFRシリーズと同じ左側に配置。

【最終型でレプソルカラー投入】タバコメーカーのロスマンズやキャビン、飲料水のテラ、アパレルブランドのシードなど、歴代NSR250Rにはさまざまなスポンサーカラーが存在。その最後を飾ったのが、当時の世界GP500でホンダワークスを支援したスペインの巨大企業、石油/ガス会社のレプソルカラーだった。

(左)’95NSR500 (右)’96NSR250R SP

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