二輪車の利用環境には課題が多い。特に、さまざまな課題の根本ともなっている「三ない運動」「駐車できない」という2つの問題について考える。今回は、三ない運動を撤廃した埼玉県の取り組みを追う第4回目だ。
●文:田中淳磨(輪)
教育委員会が主催する、高校生のためのバイク講習
【概 要】埼玉県は、三ない運動をやめて条件付きの届出制とし、今年度から県内の各エリアで「高校生の自動二輪等交通安全講習」を始めている(※経緯については11月号参照)。今回は、10月20 日(日)に秩父自動車学校で開催された秩父エリア講習会の内容および利用者の実態として参加高校生の声をお伝えしたい。
【現 状】秩父は、三ない運動をやめる以前から、埼玉県内で唯一バイク通学が許されていた地域だ。当時から年に1回のペースで「高等学校二輪車マナーアップ講習会」が行われていたが、今年度からはバイク通学の有無に関わらずバイクに乗る生徒が参加することになったため、県内で最も多くの参加者がおり、秩父エリアでは今年度2回目の開催となった。
講習内容は図1の通りで、実技では点検や運転の基礎、座学では交通社会人としてのマナーやモラル、交通事故に遭遇した場合の対応など、さらにAEDの使用や救急救命法も教える充実したものだ。スケジュールは表1の通りで、午前は2つの班(A・B)を実技と座学で交互に、午後は1つの班(C)という具合に分けて行われた。参加生徒の声を聞いた。
●県立小鹿野高校2年K君(17歳)
「家から学校までは国道299号メインで10km、バイクで30分です。途中に上り坂もあるので、バイク通学をするまでは自転車で1時間かかることもありました。バイク通学のおかげで家を出る時間が30分遅くなり、自分の時間が増えました」
○講習後の感想 「一本橋のタイムが速くなっちゃって、自分は止まるのが苦手なんだと気づきました」
●県立熊谷高校1年S君(16歳)
「家から皆野駅までは8km、バイクで20分です。昨夏に自動二輪免許を取ったばかりで、それまでは毎日、駅まで親がクルマで送ってくれてました。今は親も20分くらい遅く家を出れるようになりました。通学用の原付スクーターは姉のお下がりで、グローブは父が昔使っていたものです」
○講習後の感想 「こういう講習は初めてで、千鳥走行が難しかったです」
Aグループ参加者42名中、4月以降に免許を取った高校生は23名に上った。今後も免許を取得しバイクに乗る高校生は増えるだろう。埼玉県の教育と取り組みに注目したい。
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