日常の移動からロングツーリングまで幅広く対応!

2019新車走評:HY戦が熱い! スクーター編[カテゴリー別“試乗インプレッション”大図鑑 #17]

マニュアル変速の必要がなくシート下などに荷物を放り込めるという気軽さが、最大の魅力。一時期と比べると、日本における250cc以上のラインアップは厳選されてきた傾向にあるが、それでもナナハンクラスから原付二種以下まで、豊富な車種が用意されている。メインとしてだけでなく、セカンドバイクとしても注目するライダーが多いカテゴリーだ!

欧州&アジア主導となり、パッケージングがやや変化

初代マジェスティ発売や若年層を中心としたフュージョンへの注目などに端を発したビッグスクーターブームは、’90年代後半に沸き起こった。しかし、それから10年ほどで鎮静化した。

一方、原付二種を含む200cc以下のクラスでは、近年に推進されてきたグローバルモデル化により、欧州やアジアと同一の機種が日本でも正規ラインナップとして並ぶようになった。

このことから現行スクーターは、250クラス以上のビッグスクーターが少数精鋭化され、かつては中途半端とされた125cc超200cc以下のモデルが増え、原付二種クラスには日本的な超小型軽量モデルばかりでなく、余裕のある車格を備えた機種が増えた。

いずれのクラスも、欧州やアジアのトレンドを色濃く反映することになったが、これは世界中の市場で洗練されてきたスクーターを日本でも乗れるということ。ブームは去ったが、いまこそスクーターの買い時かもしれない。

HONDA X-ADV[唯我独尊のオフスク]マニュアル変速も可能

HONDA X-ADV
HONDA X-ADV■水冷4ストローク並列2気筒 SOHC4バルブ 745cc 54ps/6250rpm 6.9kg-m/4750rpm 238kg 13L■シート高790mm ●124万920円~127万3320円

NC750系のプラットフォームを使った、DCT仕様のアドベンチャースクーター。初代は2017年登場で、その後は2年連続で細かい機能充実化が図られている。

17インチ径の前輪を備えることから、モーターサイクル並みの安定感を備え、高速道路のレーンチェンジもビタッと決まる。エンジンフィーリングもスクーターとは一線を画し、トルクで引っ張りながら6速ギヤをガチッと切り替えて加速し、パルス感もあってなかなか楽しい。トップギヤはロングで、100㎞/h巡航時は3000回転に抑えられる。

見掛け倒しではなく、フラットダートなら実際にオフロードも走れる。ここでも大径フロントタイヤが活き、ギャップなどにハンドルを取られにくいのがありがたい。

YAMAHA TMAX530 SX/DX[走れるフルAT仕様]DXはツアラー装備充実

YAMAHA TMAX530 SX/DX
YAMAHA TMAX530 SX/DX■水冷4ストローク並列2気筒 DOHC4バルブ 530cc 46ps/6750rpm 5.4kg-m/5250rpm 218kg 15L■シート高800mm ※諸元はDX ●[DX]135万円 [SX]124万2000円

電子制御スロットルやトラコン、新作アルミ製フレームを採用した現行型は、2017年4月に登場。SXはスタンダード仕様で、DXはクルーズコントロールシステムや電動調整式スクリーンなど、ツーリング向きの装備が追加された上級版となっている。

エンジンはフルオートマチック変速のCVT仕様で、美味しい部分を使ってシームレスに加速。100km/h巡航時はやや回転が高めだが、防風性能は完璧なレベルにある。

前後15インチホイールを採用していて、ワインディングにおけるハンドリングは抜群のキレがある。バンク角もかなり深めに確保されていて、ともすればスーパースポーツすらカモれるほどだ。この基本コンセプトは初代から踏襲された、TMAXの個性である。

HONDA FORZA[曲がれそうな安心感]正常進化で総合性能追求

HONDA FORZA
HONDA FORZA■水冷4ストローク単気筒 248cc 23ps 2.4kg-m 184kg 11L■シート高780mm ●64万6920円

欧州版の300をダウンサイジングする手法で全面刷新されたシリーズ5代目は、2018年8月に新登場。しっとりとした接地感があり、安定感は高めだが、ハンドルに軽くきっかけを与えると、そこからしっかりと旋回を始める。コーナリング中は、バンク角を保持しようとする傾向が強めで、これが不安なく曲がるための大きな要素として機能している。

エンジンはライバルのXMAXよりもさらに微振動が少なく滑らかな印象。巡航時の防風性にも優れる。

YAMAHA XMAX[欧州の香りが強め]前サスは上下クランプ式

YAMAHA XMAX
YAMAHA XMAX■水冷4ストローク単気筒 249cc 23ps 2.4kg-m 179kg 13L■シート高795mm ●64万2600円

日本では2018年1月新発売。マジェスティの後継で、欧州仕様300のダウンサイジング版となるこのモデルは、操縦安定性を重視した高めのシート高だ。

走りは、既存のビッグスクーターよりも一般的なモーターサイクルに近い方向性。兄貴分のTMAXほどバネ下が俊敏に反応するわけではないが、強めのブレーキングからコーナーへ進入する際に、狙ったラインをトレースしやすい。エンジンは微振動やメカノイズが少なく、それでいて従順かつパワフルだ。

HONDA PCX/150[上質な走りを極める]骨格はダブルクレードル

HONDA PCX 150
HONDA PCX/150■水冷4ストローク単気筒 SOHC2バルブ 149cc 15ps/8500rpm 1.4kg-m/6500rpm 131kg 8.0L■シート高764mm ※諸元は150 ●[150]37万3680円 [STD]34万2360円

2018年型で、フレームから刷新するフルモデルチェンジ。両仕様とも最高出力がアップされ、前後14インチタイヤのワイド化や150へのABS仕様新設定なども施された。

これらの変更により、車体には剛性感が増し、前後サスがきっちり仕事をすることから乗り心地が向上し、高速巡航時の直進安定性もレベルアップしている。150の新旧直接比較では、全域でわずかにパワーアップした印象があり、中間加速がより元気よくなり、ライダーのカラダに伝わる微振動が低減されている上質な乗り味が感じられた。

150と比べてしまうと、125のパワー感は全体的に線が細い印象となるが、原二クラストップレベルのハイクオリティなフィーリングに、さらなる磨きがかけられている。

YAMAHA NMAX/155[ヤマハハンドリング]エンジンはブルーコア版

YAMAHA NMAX 155
YAMAHA NMAX/155■水冷4ストローク単気筒 SOHC4バルブ 155cc 15ps/8000rpm 1.4kg-m/6000rpm 128kg 6.6L■シート高765mm ※諸元は155 ●[155]37万8000円 [STD]35万1000円

日本では2016年3月に125、翌年4月に155が発売開始となったNMAXシリーズは、ほぼ共通の軽量コンパクトな車体に、排気量が異なる可変バルブ機構付きのブルーコアエンジンを搭載するグローバルスタンダードスクーター。前後13インチホイールを履いている。

高速道路の利用もできる155は、小型軽量ながら直進安定性に優れ、そのハンドリングにはライダーが介在できる幅が広い。エンジンはVVCのおかげでスロットルの開け始めから力強く、同じ15馬力を公表するライバル車よりもパワフルな印象も持つ。

対して125も、秀逸なハンドリング特性と剛性に優れるフレーム&足まわりがもたらす、スポーティでヤマハらしい操縦性が際立つ。発進加速の鋭さも満足できるレベルだ。

HONDA PCX Hybrid[ガソリン車を秒殺!]量産二輪車初となる機能

HONDA PCX Hybrid
HONDA PCX Hybrid■水冷4ストローク単気筒+モーター 124cc 12+1.9ps 1.2+0.44kg-m 135kg 8.0L■シート高764mm ●43万2000円

2018年のシリーズ完全刷新時に追加された、加速時にモーターがアシストする仕様がこちら。明確なアシスト感や、減速時の回生を感じさせる雰囲気はないのだが、発進時にスロットルを開けてから車体が動き出すまでが明らかに速く、そこからの加速もガソリン車と比較して圧倒的に力強い。

基本的なハンドリングはガソリン車と大差ないが、右手の動きに対する反応がよくなったことから、車重は5kg増えているが、走りはかなり軽快でキビキビしている。

HONDA PCX Electric[及第点以上の実用性]発進にアドバンテージ

HONDA PCX Electric
HONDA PCX Electric■交流同期電動機 定格出力0.98kW 5.7ps 1.8kg-m 144kg 20.8Ah×2 シート高760mm ●リース販売専用

新型PCXシリーズに企業や官公庁などを対象としたリース専用車として追加された電動仕様。停車状態からスロットルを開けると、かすかなギヤ鳴りとともに無振動で発進し、30km/hあたりまではガソリン仕様と同等の加速力を発揮する。そこから先は伸びが弱まるが、60㎞/hまでストレスない。

車重がガソリン車より14kg重く、重心位置も高めで、ホイールベースが65mm延びているため、旋回力は穏やか。回生機構は採用しないが、制動力への不満は皆無だ。

HONDA Zoomer-X[滑らか加速フィール]剛性感あるコーナリング

HONDA Zoomer-X
HONDA Zoomer-X■空冷4ストローク単気筒 107cc 8.8ps 0.91kg-m 105kg 4.5L■シート高763mm ●27万8640円

国内仕様は2017年に生産終了となったが、こちらはタイで販売中の現行モデル。2018年からは、ディオ110と同じeSPエンジンを搭載する。その加速感はより滑らかになった印象で、スロットルレスポンスが適度に穏やかなのでビギナーでも扱いやすい。この型から採用されたアイドリングストップ機構は、いつでもスムーズに再始動する。

ハンドリングは、前後12インチホイールの安定感と適度に発生するピッチングにより、操縦する楽しさも感じさせる味つけ。

YAMAHA Majesty S[125㏄超のゆとり感]安定志向だがスポーティ

YAMAHA Majesty S
YAMAHA Majesty S■水冷4ストローク単気筒 155cc 15ps 1.4kg-m 145kg 7.4L■シート高795mm ●37万2600円

前後13インチホイールを採用し、ホイールベースはNMAXより55mmも長く、ここだけを切り取れば走行安定性を重視しているように思えるが、コーナリング時は車体が向きを変えようとする意思が明瞭で、スポーティに操りたくなる。前後サスの動きは硬めだが、不思議と接地感に優れている。

1軸1次バランサーを搭載したエンジンは、スロットル微開の状態から機敏に反応して、開度に応じてパワフルに加速。ライバル車と比べて車重はあるが、気にならない。

YAMAHA Tricity 125/155[操縦性は二輪に近い]155はより魅力が多め

YAMAHA Tricity 155
YAMAHA Tricity 125/155■水冷4ストローク単気筒 155cc 15ps 1.4kg-m 165kg 7.2L■シート高765mm ※諸元は155 ●[155]47万5200円 [125]41万5800円~

トリシティ125はLMW初の市販車。2017年型で改良版車体の155が追加され、その1年後には125もモデルチェンジが施された。

この現行シリーズは、可変バルブ機構を採用したブルーコアエンジンを搭載。フロント2輪機構により、一般的スクーターと比べて車重とタイヤ転がり抵抗が大きくなるが、155なら非力感はほとんどない。旋回時に前ブレーキを作動しても車体が起き上がらず、そこでも安定感絶大というのが、他社に対するヤマハLMWのアドバンテージだ。

YAMAHA BW’S 125[実用性抜群なSUV]アップハン&太いタイヤ

YAMAHA BW'S 125
YAMAHA BW’S 125■空冷4ストローク単気筒 124cc 9.8ps 1.0kg-m 119kg 6.5L■シート高780mm ●32万9400円

ベースはシグナス-Xだが、高めのバーハンドル採用と前後12インチタイヤのワイド化、足まわりの仕様変更などで、より穏やかな舵角のコーナリングと、振り回すような走りを楽しめる仕様となっている。

未舗装路でカウンターを当てられるほどの駆動力は発生しないが、日常での加速は十分。前後ディスク式のブレーキは操縦性と制動力に優れ、急制動以外なら市街地走行はリヤだけで事足りるほど。冒険心をあおるルックスも、当然ながら魅力となる。

【掲載インプレッションについて】本文は、本誌の膨大なデータベースから、様々なテスターのインプレを統合し、凝縮している。そのため掲載写真のライダーによるインプレとは必ずしも限らないので、ご留意を! また、限られたスペースを有効活用するため、車両の解説は最小限としている。マシンデータは関連記事をサブテキストとして参照されたい。
※表示価格はすべて8%税込です。

関連する記事/リンク

関連記事

軽量コンパクトな車体に、公道でも使い切れるパワー&トルクのエンジンを搭載。トイ感をたっぷり備え、自分好みに徹底カスタムするベースモデルとしても使いやすい。その扱いやすさから実用にも向いているが、のんび[…]

関連記事

ここではネイキッドやアドベンチャーなどフルカウルスポーツ以外の250モデルを紹介。普段の足としても扱いやすく、ツーリングの相棒としても快適。そして何よりライダーそれぞれが憧れるスタイルが手の届きやすい[…]