個性的なモデルがせめぎ合う入門クラス

2019新車走評:250ccアップライトスポーツ編[カテゴリー別“試乗インプレッション”大図鑑 #15]

ここではネイキッドやアドベンチャーなどフルカウルスポーツ以外の250モデルを紹介。普段の足としても扱いやすく、ツーリングの相棒としても快適。そして何よりライダーそれぞれが憧れるスタイルが手の届きやすい価格で揃っている。これらが高バランスでまとまっており、ビギナーの教科書としても格好の1台だ。

年々高まる250クラスの再評価

ここ数年、その存在価値が大きく再評価されている250ccクラス。フルカウルスポーツモデル人気の余波を借り、スタンダードなスタイルのネイキッド、アドベンチャー&デュアルパーパス、そしてクルーザーと、主にエントリー層のライダーに向けて幅広いバイクの世界観を見せている。

筆頭となるネイキッドは、MTやZなどフルカウルモデルとの共通車体がお約束……と思いきや、ホンダはニューモダンレトロのCB-Rシリーズの1台として意欲的な作りで投入したのに注目。アドベンチャーは同じジャンルでも個性がしっかり分かれている。ヤマハが30年以上の歴史を刻みながら排ガス規制で生産終了させていたセローを、復活させたのも話題だ。クルーザータイプはホンダのみと寂しいが、ここは他メーカーの復活に期待。また最近はタイからもニューモデルの報が届いている。今後も充実しそうだ。

HONDA CB250R[「軽さ」が際立つ]Fがモダンに転生

HONDA CB250R
HONDA CB250R■水冷4ストローク単気筒 DOHC4バルブ 249cc 27ps/9000rpm 2.3kg-m/8000rpm 144kg 10L■シート高795mm ●55万4040円

諸元上では前身となるCB250Fから2psパワーダウンしているのだが、それを感じさせないどころか同等以上に力強い。街中では5000rpm以下で事足りるし、レッドゾーンの始まる1万5000rpmまで単気筒とは思えぬスムーズな伸びを見せる。ABS同士で比べてみると車重で17kg、約11%も軽くなっている影響がかなり大きいようだ。また給排気系やFIの見直しでリニアなレスポンスに注力したことも功を奏している。ハンドリングはFとはもうまったく別物。コントロールはあくまでライダーに委ねられ、旋回半径からバンク中のライン変更まで、すべてが自分の制御下にある。IMU付きのABSというクラスを超えた装備も、効果は体感できなかったが安心感の面では非常に大きい。

KAWASAKI Z250[兄貴より表情豊か]排気量だけでは語れない

KAWASAKI Z250
KAWASAKI Z250■水冷4ストローク並列2気筒 DOHC4バルブ 248cc 37ps/12500rpm 2.3kg-m/10500rpm 164kg 14L■シート高795mm ●59万7240円

共通プラットフォームとなるZ400よりもショートストロークなこともあって吹け上がりが快活だ。しかも、5000~7000rpmでフワッとトルクが盛り上がった後、1万rpmを超えてからさらにもう一伸び。パワー特性においてはZ400よりも表情の変化が豊かであり、トルクが薄いぶんだけシフトチェンジをさぼれないという点も含めて乗っている間の楽しさは負けていない。ハンドリングについてはラジアルタイヤを履くZ400に軍配。バイアスの250はコツコツした微振動を伝えてくるほか倒し込む過程での接地感で負けてしまうためオーナーにはラジアル化を勧めたい。ただ、旋回中の車体姿勢はZ400よりも後ろ上がりな印象で、バイク任せのコーナリングでは旋回半径がわずかに小さいように感じられた。

YAMAHA MT-25[教科書的な1台]下から上まで爽快

YAMAHA MT-25
YAMAHA MT-25■水冷4ストローク並列2気筒 249cc 35ps 2.3kg-m 166kg 14L■シート高780mm ●53万4600円

YZF-R25譲りの1万4000rpmまで軽々と回る胸のすくような高回転型エンジンを搭載。滑らかに回るそのエンジンフィールは街中でも楽しめるのがポイントのひとつだ。峠ではアベレージスピードと回転数の領域が上がるほど魅力が増していく。その一方で6速ギヤはオーバードライブぎみに設定し、100km/h巡航では回転を抑えぎみにして快適にクルーズできる。R25譲りのサスもよく動き、街中から高速、ワインディング走行までこなす教科書的な1台だ。

KTM 250 Duke[はじめてのKTM]ビギナーも安心

KTM 250 Duke
KTM 250 Duke■水冷4ストローク単気筒 248.8cc 30ps 2.4kg-m 146kg(半乾) 13.4L■シート高830mm ●57万円

つま先がようやく接地するという腰高な感じはまさしくKTM。しかしポジション的には前傾度ゼロの優しいもの。単気筒エンジンは歯切れのいいサウンドを奏でるが、クラス全体で見るとパワーはそこそこで特性としてもマイルドだ。足まわりもダンパーをあまり強くせず、あくまでもストリート優先といった感じ。KTMのカッコよさに憧れるけど、まだ経験の浅いビギナーに最適のモデルだ。ローダウン仕様もある。

HONDA Rebel 250[実はスタンダード]特異なのはカタチだけ

HONDA Rebel 250
HONDA Rebel 250■水冷4ストローク単気筒 DOHC4バルブ 249cc 26ps/9500rpm 2.2kg-m/7750rpm 168kg 11L■シート高690mm ●53万7840円

エンジンはクルーザーの定石である空冷でもVツインでもなく水冷単気筒。レブル用に吸排気系とFIが最適化されており、スロットルを大きく開けなくても街の流れをリードすることができる。特に感心するのは40~60km/hで流しているときのパルス感。クラッチやシフト操作が軽い点も見逃せない。扱いやすいエンジン以上に光るのがハンドリング。ファットな前後タイヤに低いシート高、大きく寝かされたフォークから、どうしても特異な操縦性を想起させるが、実際は拍子抜けするほどナチュラルでネイキッド並に扱いやすい。車体の傾きに対して素直に舵角が付き、潤沢な接地感を伴いながらスルスルと向きを変える。いわばレブルは、クルーザーという姿を借りたスタンダードバイクだ。

HONDA CRF250 Rally/Type LD[冒険気分は十分だ]あくまで公道用だが

HONDA CRF250 Rally
HONDA CRF250 Rally/Type LD■水冷4ストローク単気筒 DOHC4バルブ 249cc 24ps/8500rpm 2.3kg-m/6750rpm 157kg 10L■シート高895mm ※諸元はSTD ●70万2000円

本格ラリーレイドスタイルを持ったマシン。スタンダードの足着きはかなり厳しいが、ローダウン仕様のタイプLDもある。あくまでストリート向けなので、ジャンプなど激しいアクションでは柔らかめのサスがすぐに底付きしてしまい不向きだ。とはいえ、走破性でオンロードモデルは比にならず林道ツーリングで冒険気分は十分に楽しめる。しかも、高速道路ではブロックパターンタイヤであることをあまり意識させずにしっかりとラインをトレースできるし、ブレーキも乱れず吸収。パワーもあるのでオンロードバイクの仲間と一緒の巡航も大丈夫だ。足着きのよいタイプLDなら、ビギナーが街中で使うにも軽い車体と相まって簡単に扱える。本来の意味でのマルチパーパスなマシンだ。

SUZUKI V-Strom 250[すべてが高バランス]売れてるのが分かる

SUZUKI V-Strom 250
SUZUKI V-Strom 250■水冷4ストローク並列2気筒 SOHC2バルブ 248cc 24ps/8000rpm 2.2kg-m/6500rpm 188kg 17L■シート高800mm ●57万240円

アドベンチャーモデル=オールラウンダーと定義づけるなら、このモデルがまさにそれ。車格、パワー、ハンドリング、コスト、そして「らしい」スタイリングと、すべてが高バランスで成り立っており、新しいライダーを呼び込む力がある。足着き性も両足かかとまでとクラス随一で、渋滞でもストレスを感じさせない。GSX250Rと同系のエンジンはトルク重視で低中回転型。良好な燃費もこのマシンのポイントのひとつだ。前後17インチホイルのハンドリングはオンロードモデルに近く、クルクルと軽快なコーナリング性能を発揮する。ハンドルもアップハンながら幅はやや狭く絞り込まれているため、ビギナーやオンロードからの乗り換え組も違和感ないだろう。ライダーの裾野を広げる秀作だ。

KAWASAKI Versys-X 250 Tourer[お得な「ツアラー」だ]高速巡航が得意

KAWASAKI Versys-X 250 Tourer
KAWASAKI Versys-X 250 Tourer■水冷4ストローク並列2気筒 248cc 33ps 2.1kg-m 183kg 17L■シート高815mm ●68万3640円

ベースの旧ニンジャ250エンジンから+2ps。デュアルスロットルバルブ採用もあり右手の動きに忠実で吹け上がりもスムーズだ。やや高回転型で、少々せわしなさを感じるが、その程度。フロント19インチの穏やかな舵角の付き方に支配されたハンドリングは、80km/hを超えたあたりから安定性が強まり、高速道路での直進性が印象的だ。STDと差額が約5万円強の“ツアラー”は、パニアケースやエンジンガードなど総額約12万円分の装備が付いてお得だ。

YAMAHA Serow250[トレール車の定番]1年ぶりに復活

YAMAHA Serow250
YAMAHA Serow250■空冷4ストローク単気筒 249cc 20ps 2.1kg-m 133kg 9.3L■シート高830mm ●56万4840円

最新の排ガス規制に対応して復活。パワーは従来良より2ps増となりサイレンサーの出口が拡大されたこともあって粒立った排気音となった。100km/h巡航を余裕でこなす一方で、トレールでは轍を崩さないよう丁寧に走ることも可能。ハンドリングもトライアル的な走りが楽しめる一方、ワインディングでは大きなピッチングを生かしてタイトに旋回することも可能だ。ただ絶対制動力は高くないので調子に乗るのは禁物。荷物を多く積む時も同様だ。

KTM 250 EXC TPI[FIで2ストが復活]21世紀にまさかの奇跡

KTM 250 EXC TPI
KTM 250 EXC TPI■水冷2ストローク単気筒 249cc 103.4kg(半乾) 9L■シート高960mm ●108万9000円

現代においてまさかの2ストをFIで復活。しかも、パワーバンドは狭くてピーキーという昔の概念を覆し、クラッチを切らずとも歩くような速度で山を登り、3速3000rpmでもストールせずにどんどん進む。2ストがトルクで背中を押してくれたのは初めての経験だ。一方で、アクセルを捻ると甲高い音とともにモリモリとパワーが湧き出る。暴力的ではないが2ストらしい引っ張られ方は、いい意味でそのままだ。ピークパワーは51psほど。さすがにそのあたりを半乾燥105kgの軽量な車体で出すには勇気がいる。このFIには高度補正機能も搭載されているので、都度都度ジェットを調整する必要がないのもポイント。さらになんといっても始動はセルモーター。足場の険しい山道でエンストに合ってキックすることを考えると、とにかく嬉しい。2ストの革命ここにありだ。

【掲載インプレッションについて】本文は、本誌の膨大なデータベースから、様々なテスターのインプレを統合し、凝縮している。そのため掲載写真のライダーによるインプレとは必ずしも限らないので、ご留意を! また、限られたスペースを有効活用するため、車両の解説は最小限としている。マシンデータは関連記事をサブテキストとして参照されたい。
※表示価格はすべて8%税込です。

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